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退魔師の光〜一般人の私が、兄を殺した妖魔達を引き寄せてしまう理由。覚醒して退魔師を目指します〜  作者: seika
二章

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ファン心と憧れ【結菜said】

 隼斗が振り返って揶揄うように蓮に話しかけた。


「お、蓮も気になるんだね!」


 そう投げかけられた言葉に、蓮の眉がぴくりと動いたのが見えた。


『蓮に結菜から聞いた天音ちゃんの話をした時は、少し興味を示すんだよ。珍しくね』と、以前隼斗が笑いながら言っていたのを思い出した。


 あれは本当だったんだと、不機嫌になった蓮を見て納得した。


「天音はたぶん訓練室にいると思うよ。ね、凪?」


 わたしはそう答え、凪に話を振った。


 だが、いくら待っても反応は返ってこない。無視されてるのかと思い、少し苛立ちながら隣を見ると、彼は固まったままピクリとも動かない。


「ちょっと、凪?」


 わたしが何度も呼びかけると、凪は我に返ったように慌てだした。


 凪の顔が赤くなり、衝動に駆られたように勢いよく蓮の前へ飛び出した。半年間同じクラスだが、彼のこんな顔は今まで見たことがない。


「れ、蓮さんっ! ファンです! 握手してください!!」


 片手を蓮の前に突き出して、頭を下げる凪。けれど、返ってきた蓮の返事は冷ややかなものだった。


「……嫌だ」


「ごめんね、凪くん。蓮は見知りでさ」


 隼斗がすかさずフォローに回る。こんなやりとりは日常茶飯事なのだろう。自分が暴走していたことに気付き、凪は恥ずかしそうに顔を伏せてしまった。


「そう……ですよね……急にすみません」


 いつもの関西弁はどこにいった。というか、敬語使えるんかい。


 と、突っ込みそうになったがそんな雰囲気ではなかった。わたしは凪の腕を軽く引き、ふたりに聞こえないよう声を落とした。


「あんた、蓮くんのファンだったわけ?」


「そ、そうやで! 憧れの蓮さんが目の前に……! ってか、結菜ちゃんも彼氏さんも、なんでそんな普通に話せるんや!?」


「あー、隼斗が蓮くんを気に入っててね。だから私も時々話すようになったのよ」


「なんやそれ!! 羨ましすぎやろっ!!」


 凪にとっては羨ましいことなのかもしれない。でも、わたしにとって蓮は話が続かない相手だ。何を考えているのか分からない。そんなわたしとは対照的に、隼斗はなぜか蓮を気に入っていた。



 ふと視界が暗くなり顔を上げた。いつの間にか隼斗が笑みを浮かべて立っていた。けれど、目は笑っていない。そして、隣にいる凪が摘み出された。


「ねぇ君、結菜に近すぎだよね?」


 隼斗は凪を半ば強引に蓮の前に差し出した。


 すると、蓮はうんざりした様子で眉をひそめた。


「……おい、隼斗」


「あ、その……オレ!! 蓮さんに憧れてこの学校に来ました!! 応援してます!!」


「……あっそ。勝手にしろ」


 素っ気ない返事にも関わらず、凪は満面の笑みで叫んだ。


「はいっ!! ありがとうございます!!」


 嬉しそうにキラキラした眼差しを蓮に向けている凪。


 わたしはそんな凪を横目に、蓮に声をかけた。


「天音……訓練しすぎて体を壊しちゃうと思わない? 蓮くんも心配でしょ?」


 今も天音が落ち込んでいるのは、容易に想像できた。


 だから蓮に託した。

 わたしの言葉では今の天音の心に触れられないと分かっていたから。


「……別に」


「ふーん、それは心配だね。天音ちゃんは一人で頑張ってるんだ」


 隼斗はちらりと蓮を見て、不安そうなわたしの腰をそっと引き寄せた。


「じゃあ結菜、今日は俺とデートでもしよっか? ほら、テスト終わったことだし」


 わたしは驚いた顔で隼斗を見た。こんな時に冗談を言うタイプじゃないからだ。何を考えているのかと疑いの目を向けると、隼人は悪戯っぽいウインクを返してきた。


 この顔は……何か企んでる。


 隼斗から視線を外して蓮を見ると、窓の縁にもたれかかって訓練室がある校舎に気を取られているようだった。わたしは納得したように隼斗に目配せした。


「……そうね。試験終わりでみんな遊びに行ってて、訓練する人なんていないだろうし」


「ってことで、蓮また明日なー」


「凪も、早く帰りなさいよ」


 わたしの忠告は聞こえてないようで、蓮に話しかけようと凪は口を開く。


 だが、蓮はそんな凪を一瞥したあと、背を向けて歩き去ってしまった。向かう場所は決まってる。


 隼斗を見上げると、彼は得意げに親指を立てた。


「相変わらず、策士ね」


「でも、結菜とデートしたかったのは本当だよ。最近忙しそうで全然会えてなかったし」


「……っそ、そう」


 隼斗はよく人を見ている。その対応がスマートなのも昔から変わっていない。


「……あぁ〜! 握手ダメならサインもらうつもりやったのにぃ〜!」


 背後からは凪の後悔の叫び声が聞こえる。一人残された凪は肩を落としたまま立ち尽くしていた。

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