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退魔師の光〜一般人の私が、兄を殺した妖魔達を引き寄せてしまう理由。覚醒して退魔師を目指します〜  作者: seika
二章

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19/29

結菜の彼氏【結菜said】

 尻餅をついている凪と、平手打ちをかましたわたしを見て、周囲は何事かと騒ぎ始めた。この場面だけを見れば、痴話喧嘩だと想像する人もいるかもしれない。


 わたしは頬を押さえて固まっている凪を見下ろした。


「あんた……天音が落ち込んでたの分かってんでしょ。なんであんな突き放すような顔して黙って見てたの? 心配するのが普通でしょ」


「なんやそれ。そないなことで殴られんのかいな」


 凪の呆れたような態度に、わたしの怒りはさらに高まった。


「ふざけないで! あんなに天音のこと、ライバルだって言ってたのに……!」


「ライバルやからや」


 凪の間髪入れない言葉に、わたしの動きが止まる。


「天音ちゃんは初級妖魔を倒せんかった。それどころかあの様子やと、怖くて動けへんかったこと後悔しとるんやろ。なんぼ頑張ったところで倒せんかったら意味ないやろ。正直、期待外れやわ」


 わたしは唖然としたまま凪を見つめた。


 彼は天音を友達ではなく、本気でライバルとして見ていたのだ。その言葉は正論だった。この世界は馴れ合いで成立するものではない。


 わたしが黙っているのを見かねた凪は、バツが悪そうに頭を掻きながら立ち上がった。


「あー……言い過ぎたみたいやわ。ほんまごめんやで。戦いのことになると熱なるっていうか……」


 彼なりの謝罪なんだろう。わたしたちを見ていた生徒たちは「なんだよ、バトルでも始まるかと思ったのにー」と、興味を失ったように散っていった。


「……わたしも悪かったわ。感情的になって」


「それにしても結菜ちゃんのビンタ、強烈やったわ〜」


 頬を摩りながら凪はにっと笑った。


 凪を甘く見ていたのかもしれない。彼への評価が一段階上がったとき、廊下の先でまたしても「きゃー!」という女子の甲高い叫び声が聞こえた。人だかりの中に背の高い人物が見える。


「なんやあれ?」


 人混みをかき分け、一人の男子生徒が迷いなくわたしたちの方へ手を振りながら駆け寄ってくる。


「――あ、やっぱり結菜だ!」


 人懐っこい笑みを浮かべ、すれ違う女子生徒の注目を集めていた。明るい茶髪、耳には薄いピンクの光を放つピアスが鮮やかに揺れていた。


 凪は近づいてきた男子生徒を上から下まで凝視し、わたしに問いかけた。


「誰や、この爽やかイケメンは。結菜ちゃんの知り合いかいな?」


「ははっ、君が凪くんかな? 結菜からいつも話は聞いてるよ」


 彼は自然な仕草で、わたしの肩に手を添えた。


「俺は九条隼斗くじょうはやと。結菜の彼氏だよ。よろしくね」


 隼斗がさらりとそう告げると、凪は思った通りのリアクションを見せ始めた。


「結菜ちゃん彼氏おったんかいな!! っていうかその名前……今回学年3位の人やないかい! なんでオレに言うてくれへんかったんや!?」


「別に……わざわざ言う必要ないでしょ!」


 わたしは腕を組んで、凪とは反対の方向に顔を背けた。顔が赤くなっていることに気付かれないようにしたつもりだったが、隼斗にはお見通しだったようで、少し笑われてしまった。


「聞いてた通り面白い子だね。凪くんがいるってことは、天音ちゃんも近くにいるのかな?」


 興味津々というように隼斗が周囲を見渡した。前からわたしが天音のことをよく話すから、一度会ってみたいと言っていたのだ。


「……天音は、どこかに行っちゃったみたいで」


 その時、隼斗の背後から低く静かな声が響いた。


「……どこかって?」


 廊下の空気がすっと冷えた。

 そこには、今回1位だった霧島蓮が立っていた。


 彼は腕を組み、わたしの言葉を待っているようだった。

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