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退魔師の光〜覚醒した少女は退魔師を目指す〜  作者: seika
二章

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13/16

馬鹿か、天才か

「こんな時間まで訓練か……」


 不意に背後から低い声がして、私は手に持っていたナイフを危うく床に落としかけた。


 誰?もう消灯時間じゃ……。


 ゆっくり振り返ると、薄暗い室内の壁にもたれかかるようにして蓮が腕を組んでいた。


「……その持ち方、間違えてる。教えただろ」


「あ……えっと……」


 近づいてきた蓮が私の手をそっとつまんで、ナイフの握りを迷いなく修正した。 ほんのわずかな角度を変えただけなのに、さっきまで歯が立たなかった丸太が、今度は抵抗なくスパッと切れてしまった。


「ほんとだ……全然違う!」


 思わず声が弾んだ私を見て、蓮は淡々と話を続けた。


「この前、妖魔の実戦があっただろ。結果はどうだった」


「あ、できたよ!」


「ふーん……まあ、当然だな」


 あっさりした返事に、少しムッとした。当然って……蓮くんはそうかもだけどさ。


「あと、組手の実践で運良く勝てたらしいな。クラスの連中が騒いでた。どうやってあんなことを思いついた? 前から考えてたのか」


 蓮が珍しく前のめりになっていた。その真剣な問いに、一瞬言葉に詰まった。


「えっと……あの時は無我夢中で、なんであんな動きをしたのかもよく覚えてないんだ……」


 自分でもうまく説明できず、語尾がどんどん弱くなっていく。


 蓮は眉に皺を寄せ、じっと私を見つめた。その視線はまるで「本当にわかってないのか?」とでも言いたげだった。だが、一拍置いてから蓮は腕を組み直すと、そこで話を打ち切った。


「……まだ戻らないのか」


「うん、もう少しだけやって戻ろうかなって」


「体調管理はちゃんとしてんの?」


 不意をついた一言に、私の肩がぎくりと跳ねた。


 痛いところを突かれてしまった。見透かされてるみたいで、心臓に悪い。


「あ、えっと……体だけは頑丈だから! 大丈夫!」


 笑顔を作ったものの、内心は冷や汗だらけだ。昨日は三時間くらいしか寝てないけど……うん、気のせい気のせい。


 蓮は私の動揺を一瞥し、深くため息をついた。


「詰めすぎるな。精神も体も、壊れたらそこで終わりだ」


「……はい、気をつけます」


「早く休め。模擬テストも近いんだ、無理はするな」


 それだけを言い残すと、蓮は振り返らずに歩き去っていった。


「……模擬テスト?」


 その言葉が頭の中で引っかかったまま、小さく呟いた私の声だけが訓練室に響いた。




<<蓮 side>>


 月明かりが廊下を淡く照らしていた。


 いくらこの辺は妖魔が入ってこないといっても無防備すぎだろ。校舎内にはほとんど人の気配はなく、静寂の中では嫌になるほど考え事が捗る。


 ついこの前まで雑魚な妖魔ですら怖がっていたあいつが、もう倒せる段階まで来たのか。正直、まだ先の話だと思っていた。


「……上出来、か」


 だが、問題は組手の実践だ。


 組んでた奴は結界で封じられて、ほとんど動けなかったと聞く。それを補い、あいつの一瞬の判断で形勢を覆したらしいが――素人にできる芸当じゃない。


 本人の口ぶりは本当に「無自覚」だった。それが、どうにも引っかかる。



 馬鹿か、天才か――。



 小さく首を振り、自分の考えの一部を振り払う。


 ……いや、やはり馬鹿だろう。


 そう結論づけながらも結局は考えを巡らせすぎて、事実確認をしにきてしまった自分を自覚せざるを得なかった。廊下に伸びる影が月光に縁取られ、静かに揺れていた。

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