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退魔師の光〜覚醒した少女は退魔師を目指す〜  作者: seika
一章

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12/16

おまけエピソード 食堂は今日も平和です

「はぁ……今日の組手、疲れたなぁ……」


 食堂は私のため息とは対照的に、生徒たちの笑い声で賑わっていた。結菜とトレイを手に、空いている席へ腰を下ろした。


「でもさ! 前の組み手で天音があいつらに勝ったとき、ほんっとスカッとしたよ! 凄くかっこよかった!」


「結菜、またその話?」


 照れくさくて、苦笑しながら箸を手に取った。


「ほんまやね〜。せやけど、オレが目立っとった話もしてくれてええんやで?」


 背後から関西弁が割り込んできた。


「……なんだ、凪くんか」


「凪は特に何もしてなかったわよね」


「えぇー!? ひどない!? オレちゃんと活躍しとったやんか〜!」


 そう言いながら、凪は当然のように私たちの向かいの席へ腰を下ろした。椅子が雑にひかれる音に、結菜は眉をひそめた。


「っていうか凪、天音に付き纏いすぎよ。わたしたちのランチタイム邪魔しないでよね」


「そんな寂しいこと言わんといてや〜。オレと天音はライバルやし、一緒におるんは自然な流れや」


 ――勝手にライバル認定されただけなんだけど。


 ご飯を口に運びながら、二人の掛け合いを横目に眺める。火花が散っているはずなのに不思議と落ち着く。この光景も日常になりつつあるのかもしれない。


「ほら、ご飯冷めるから食べよ」


 そう促すと、二人も渋々箸を動かし始めた。


「そうや! 結菜ちゃん! 明日のテストどこ出るか、ちょちょいっと教えてや〜」


「また? 私ばっかり頼らないで自分で勉強しなさいよ!」


「それがなぁ……オレ……」


 急に凪の声が弱まり、さっきまで結菜に向けていた視線がテーブルに落ちた。


 私と結菜はその変化を感じ、顔を見合わせた。少し重苦しい空気が流れたあと、凪がぽつりと口を開いた。


「どうやらオレ……頭悪いみたいやわ。ほんで勉強しとると、頭が痛うなってそのまま寝込んでまうんや」


「…………」


 本気なのか、冗談なのか。


 判断に困る空気の中――。


「あのバカは、ほっときましょう」


 結菜が即答した。私もそれに同意し、頭を抱えている凪を気にすることなく、スープをひと口飲んだ。


 すると、結菜の手が止まり真剣な顔で私を見つめた。


「……そういえば、前から聞きたかったことがあるんだけど」


「なに?」


「天音は退魔師になりたいから、あんなに頑張ってるんだよね? 何か理由でもあるの?」


「……あ〜、それは……えっと」


 心配そうな結菜の顔を見るのはこれで何度目だろう。結菜にはちゃんと伝えておきたい。でも、言葉がうまく出てこない。


 黙っている私を見て、結菜は少しだけ、寂しそうに微笑んだ。


「まだ駄目か……仕方ないね。気になるけど、天音が話したくなったらいつか教えて? 約束!」


「うん……わかった! ありがとね、結菜」


「むぐっ、なんの話や!? オレも約束したい!!」


 落ち込み終わったのか、パンを口いっぱいに頬張った凪が割り込んできた。


「はぁ……食べながら喋らないでよ。それに、これは私と天音だけの約束だから」


 私と結菜は目で合図をした。


「うん、凪くんは仲間はずれね」


「ええ!? 天音ぇ……さらっと酷いこと言いよるなぁ、泣いてまうでー。ほんでオレの話も無視せんといてや〜」


 結菜はにこりと笑い、凪の前に立って腕を組んだ。


「凪の話は、よーーくわかったわ。明日のテスト範囲を、その空っぽの頭に嫌になるまで叩き込んであげる」


「え!? いや、どこ出るか教えてもらうだけでええねんけど……」


 結菜は凪の腕を掴み、そのままずるずると引きずっていった。


「いやーー!! 天音、助けてぇーーやーー!! 連れ去られてまうーー!」


 食堂には笑い声が残り、穏やかな昼下がりがゆっくりと過ぎていった。

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