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退魔師の光〜覚醒した少女は退魔師を目指す〜  作者: seika
一章

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10/16

ライバルの誕生

 私たちに気づいた男子は鼻で笑いながら近寄ってきた。


「白瀬、お前また倒されに来たのか?」


 悔しい。でも前回負けたのは事実だ。不安になって凪を見ると、彼はにかっと笑った。


「俺がやっつけ方を教えたるわ。勝てたら最高にスカッとすんで」


 そう放った言葉はふざけているように聞こえるが、表情は遊ぶ前の子供みたいにワクワクして仕方がないって顔だ。


 そして私の耳元で囁いた。


「それに……借りも返せるっちゅうもんやろ?」


 驚いて凪を見ると彼は口角をいっぱいまで上げていた。


 戦いを楽しむ彼からなら、教わることができるかもしれない。私の背中を押すのには十分な一言だった。



 戦闘態勢に入った。相手は二人、二対二の勝負だ。ムカつく男の隣は……とりあえずモブ男。


 合図と同時に、二人が私めがけて飛びかかる。


「うわっ――!」


 反射的に跳び、身をひねり転がるようにして、距離を取った。


 ちょっと待って、二人がかりなんて……!


 そんなことを考える余裕はない。ただ必死に避けるしかなかった。


 次の瞬間――。


 がしっと肩を掴まれ、体が動かない。


「しまっ……!」


 もう一人が正面から迫る。



 すると、背後から勢い任せの声が飛んできた。


「おりゃああぁあっ!!!」


 凪が突っ込んできて、二人まとめて吹き飛ばす。


 なんて戦い方……。


「くそっ! お前も生意気なんだよ!!」


 男子が吠え、今度は凪へと飛びかかる。だが彼は余裕そうに笑っていた。


「そんなんじゃ、オレは倒せへんよ!」


 くるりと体を回して蹴りを叩き込み、続けて拳を打ち込む。流れるような動きで二人を同時に相手取っていた。


「……すごい……」


 荒々しいのにどこか楽しそうで戦っている……というより遊んでいるみたいだ。


「おい! 今ならやれるやろ。なんか打ち込んでこいや!」


 凪の声でハッとする。

 二人は凪が惹きつけてくれている。私が攻撃すれば……。


 でも、どうやって?


 私は無意識に相手へのダメージが少ない方法を探していた。



「なんで攻撃せぇへんのや……ちっ、見当違いやったか」


 凪がそう呟いたとき。


「捕まえた」


 男子が凪の足元に結界を張った。彼の俊敏な動きが封じられる。


「……うおっ、まじかいな!?」


 凪が両手をばたばたさせるが、どうにもならない。


「無様だな。大人しくしてろよ」


 男子は嘲るように吐き捨てると、真っ直ぐこちらへ向き直った。そのすぐ後ろで凪がモブ男に殴られている光景が、目に焼きついた。


 ぷちん。私の中で、何かが切れた。



 手のひらに小さな光の球が生まれ、躊躇することなく放たれた。


「はっ、バカだな。そんなもん当たっても痛くねぇよ!」


 男子は鼻で笑い、それを払い退けた。


 ――だが。



「……あ?」

 目の前には、誰もいなかった。


「どこだ!?」

「左だ!!」


 モブ男の声が届くより早く、私は懐へ踏み込み渾身の蹴りを叩き込んだ。


「――っ!」


 顎に綺麗に入り、確かな手応えが伝わる。意識が途切れるその瞬間まできっと何が起きたか分からなかったはずだ。


 男子はそのまま崩れ落ちた。


 周囲が、しん……と静まり返った。誰も言葉を発することはない。


 凪が目を丸くしてこちらを見ている。


 彼の足を封じていた結界がふと消えた。それに気づいた凪は、瞬時に残った一人に拳を叩き込む。


 ドカッ!!


 二人は誰が見ても戦闘不能だった。つまり、私たちの勝利だ。



「はぁっ……疲れた……」


 全身汗だくで荒い息を整える。


 そこへ凪がものすごい勢いで駆け寄ってきた。


「おっまえ!! めっちゃすごいやん!!」


 肩を叩かれて視界が揺れる。


「今の球目くらましやろ!? あんな使い方、ほんま見たことあらへんで!」


「そ、そうかな?」


 正直、自分がどう動いたかあまり覚えていない。


「一緒に戦ってくれてありがとう」


 お礼を言うと凪がピタッと止まった。


「……決めたで!」

 嫌な予感しかしない。


「今からお前は、オレのライバルや!」


「ラ、ライバル……!?」


 思わず一歩、後ずさってしまう。


「そうや! このクラスまともに戦えるやつ少なすぎやし!」


 ……周りの視線が痛い。そんなこと大声で言う人いないって。


「私、ライバルになれるほど強くないし……」


 本心だ。凪の戦いに肩を並べるほどじゃない。遠慮がちに伝えると、彼は少しも迷うことなく即答した。


「謙遜禁止! オレが決めたんや! お前とおったら絶対おもろなる! オレの勘がそう言うとんねん!!」


 こうして凪に押される形でペアを組まされることが増え、訓練でも二人で競い合う日々が始まった。



 その裏では――


 “最初の試練”が静かに、しかし確実に近づいてきていた。

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