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魔道具屋で取引

 私の言葉を聞いてエルフ男性が顔色を変える。

 再度、私を鑑定しているのが分かる。何度鑑定しても隠蔽した鑑定結果しか出ないよ。


「……個人取引をしたいのかい?」


「そう。私はまだ子供だから、後ろ盾がないんだ。だから内緒にしてほしい」


「……売りたい商品を持っておいで。その後に個人取引するか決めようじゃないか」


 エルフ男性も素を出してきたようだ。


「ありがとう!シュンフェさん!また来るね!」


 そのままの勢いでセーレは店を出るが、エルフ男性・シュンフェ・ニードルは驚いていた。

 鑑定しても『創造』としか出てこない。魔力量も多くないから子供の夢に付き合ってあげようと収納ポーチを見せたが、実は他にも収納魔道具は有る。用量の大きい物は顧客からの紹介か信頼できるお客様にしか見せないのだ。


 まさか『創造』で『鑑定』が出来るなんて!

 創造で思いつくのは創造神様だ。確かに少女の加護神は創造神様だった。教会は少女の存在を把握していないのか?


 いや、否だ。


 きっと把握した上で放置している。


 では、何故か?


 昨日、職業授与の儀式をしたと言っていた。

 昨日と言えば、市井で噂になっている『神像全体が光輝いた』ことに関係しているのではないか?きっと大きく予想は外れていない気がする。


 何故、教会が囲い込まないか?

 

 教会は何故、加護神を創造神様に持つ少女の存在を放置しているのか?

 長く生きているから知っているが、職業授与の儀式に任命される神官は『鑑定が出来る者』だ。教会は少女を知っている(・・・・・)はずだ。


 いきなり目の前に現れた、幼児をおんぶする少女。

 面白いじゃないか。

 魔道具ギルドを通さない取引だと、販売者・購入者共に得をする。仲介料がいらないからだ。

 中には悪徳商人もいるが、少女はこの魔道具屋を選んで現れた。誰かからこの店は信用に値すると聞いてきたのかもしれない。良い顧客が増えるのは歓迎だ。


 まあ、気長に少女が収納の魔道具を持ってくることを期待しようじゃないか。長いエルフ生だ。


「ん?機嫌が良いじゃないか?どうした?」


 職人の格好をした父さんが店の裏の工房から現れた。

 この店はスペラス王国の中では有名な魔道具屋だ。ひとえにシュンフェの父親の手腕だ。いや、営業は母親だから母の手腕か。

 相変わらず父は職人の格好が似合わないが、好きでこの格好をしているので何も言えない。

 たまに「ダサいよ」と言うのだが、冗談だと思って聞いてはくれないので放置だ。


「うん。面白いお客さんが来てね?父さんは新しい魔道具が出来たの?」


「おお!ちょっと趣味に走ってしまったが、小魔石・長寿命のランプが完成したぞ!どの世代にも売れる!これは革命だぞ!」


「凄いじゃないか!父さん、後で設計図を見せてくれよ」


「おお!いいぞ!」


 ニードル魔道具店は家族経営だ。

 人種差別の無いスペラス王国で根を張っている。

 抱える従業員は数百人に登り、ほとんどが職人だ。店は店員と経理と警備員がいれば良い。

 特許を取り、それを50年独占出来るだけで莫大な資産を築いている。それを何百年も繰り返している一族だ。

 『特許』と言う仕組みは創造神様がお考えになった神聖な物だ。知っていて特許を犯せば軽犯罪者でも重い方になり職業が自動で変わり発覚するので、今では特許を無断使用しようとすれば見返りに合わない犯罪者になるので、知恵が働く者は似た製品を出す事が多い。丸ごとパクろうとする者は馬鹿だけだ。職業ギルドに商品を持ち込めば捜査が始まり捕まる事が多い。


 だが、ギルド連盟は横の繋がりが厚い。

 新情報はすぐさま通信の魔道具で伝わるし、近いギルドの情報交換は密だ。


 さて、全てを知ったつもり(・・・)になっている創造神様には、どこまで把握出来るやら。



ーーーーーーーーーー



 家に帰って来て、ミーアに水分をとらせていると、ミュンちゃん(お隣の家の末っ子のミュンリル12歳)がお昼ご飯に誘いに来てくれたので、おばちゃんの料理をいただく。


 ミーアはミュンちゃんがお世話してくれている。末っ子だから可愛い妹が出来たみたいなのだそうだ。(ちなみに私も妹枠)


 今日は別居している長男・ダングルお兄ちゃんの奥さんのミユさんが子供のソータ君3歳を連れて来ていて、おばちゃんが孫にデレデレだ。

 よく孫は可愛いって言うもんね。私は孫には縁がなかったが。


 昼食を食べ終わったので、食器を洗っていると「洗い物はしなくていいからね」とおばちゃんに言われて、少し洗い物をしただけで終わってしまった。


 ミュンちゃんがミーアの相手をしながら話しかけて来た。


「セーレは料理が出来ないんだから、うちの家族がセーレんちに迎えに行かなくても朝昼夕とうちに食事に来る事!迎えに行くのも面倒くさいんだよ!料理はうちのお母ちゃんに教えてもらえば15歳までに一人前になるよ!ちょっと早くおいでよ。ミーアちゃんは誰かが面倒みるからさ!」


 おばちゃんも言う。


「うちが料理をセーレちゃんとミーアちゃんに作っているのが申し訳ないなんて思わないでいいんだよ?早く来て、おばちゃんと一緒に料理しようじゃないか」


 遠慮なくありがたい事を言ってくれるけど、眉毛が下がってしまう。

 親戚のように付き合ってくれているけど、どこか申し訳なくて迷惑をかけている気になってしまう。


「椅子なら空いてるし、遠慮しないで一緒に食べよう?それとも私がいるとお母ちゃんを思い出して辛いかい?」


 なおも言葉を続けてくれるおばちゃんに「ありがとうございます」と頭を下げてお礼を言う。そして、食費の話をすると「今朝、貰ったじゃないか」と言われて断られてしまう。

 でも、食べ盛り育ち盛りの私とミーアの食費がひと月1万エンなんてことは無いと思うのだ。きっともっと食費がかかっていると思う。


 そこで私はハッと目の前が広がった気がした。

 そうだよ。何で気がつかなかったんだろう?お邪魔する時は必殺『お土産』があるじゃないか!

 いつもの食事に彩りを。

 美味しいデザートなんてあったら素敵じゃない?珍しいダンジョン産の食材だって創造で作れちゃう。


 しっかりとおばちゃんの目を見て「お世話になります」と真剣に伝えると、おばちゃんの顔が嬉しそうになった。きっと子供が好きなんだなぁ。


 ミーアがミュンちゃんと遊んでいるから、ぼうっと見ているとミユさんが私を抱きしめて頭をナデナデしてくれた。

 ミユさん、いい匂いだ。どこの石鹸を使っているのだろうか?


 私は世界を創る時に、衛生には力を入れて取り組んだ。

 殺菌作用のある生命力の強い草を人の近くに生やしたり、強い鑑定能力を持つ人に最初に石鹸を作らせたりした。それが今じゃ発展して、地球よりも環境に優しくて種類も豊富な石鹸類が誕生した。

 私とこの世界の人の思いが身を結んだのだ。

 それに魔法の浄化もあるし、この世界は結構綺麗好きさんが多い。美容意識も高いので日焼け止めなどは値段が高いけれど錬金術で作れるので普通に売っている。


 今までは気にもしていなかったけど、獣人さん達もいる。獣人専用石鹸なども売りに出されていて、思わず触りたくなる毛並みを持っている。あ、あたしのオタク魂が目覚めそうだ!


 何故ミユさんに抱きしめられているかというと、両親がいなくなった私を甘やかしてくれているのだと思う。

 綺麗なお姉さんは好きですか?ってキャッチコピーがあったけど、綺麗で優しいお姉さん、大好きです!私を思う存分甘やかして!私、人とハグするのが好きなんだよね。記憶が戻って無かった時も、しょっちゅうお父ちゃんとお母ちゃんに抱きしめられていたし、ねだってもいた。甘えん坊なのです。

 だから天界で鬱々しちゃったんだけどね?

 母神と父神が私だけを甘やかしてくれなくなって拗れてしまった自覚はある。

 離れてみて気づいたって事あると思うんだよね。

 

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