表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

6/34

薬師ギルドに登録

 お姉さんがカウンター向こうでガサゴソと手続きしている間に薬師ギルドの中を見ると、古めかしくて年季の入っている建物なのに不潔な感じはしない。多分魔道具で清潔な状態を維持しているのだろう。構造は地上3階、地下2階だ。随分と広いなぁ。受付さんがお姉さんしかいないのに。


「ちわーっす!魔道具ギルドでーす!薬瓶と薬紙をお持ちしましたーっ!」


 後ろの扉がいきなり開いてびくり!とする。

 お姉さんが気軽に応える。


「ありがとうございまーす!倉庫に人がいるのでいつも通り確認してもらえますかー?」


「うぃーす!失礼しましたー!」


 バタンと閉まった扉。

 胸がドキドキしている。結構、魔道具ギルドと薬師ギルドの関係は深いのかもしれない。気軽に挨拶できるからね。


 そして、思い出した。

 薬瓶と薬紙は買って帰らないと薬が作れない。

 後で配達ってしてくれるかな?収納庫が使えるけどなるべく大きいのは隠したい。


 あ、収納庫って言うのはアイテムボックスとかストレージとかインベントリとかラノベで出てくる感じのね?時間停止や魔物の解体やリストアップもしてくれちゃう便利な物です。

 持っている人によって時間停止にならなかったり、解体が出来なかったりリストアップも整理整頓も出来なかったりするけど、全人類に私が魔法を使えるようにしたから頑張れば全部の魔法を覚えたり新魔法を作れちゃったりする。危険な魔法は作れないようにはしたんだけど、人類の勝利ってやつ?私が設定した穴を突いて新たな魔法が生まれてしまっているのだ。

 私や母神や父神が監視している中で作っちゃうから、余程危険な魔法以外は禁忌魔法に指定していない。


 収納庫?何故、収納庫って名前だって?

 私が名付けたんじゃないよ。昔から今まで大量の荷物や食料品は倉庫を作って保管しておく習慣があるから、あら不思議!空間に荷物が入れられちゃったわ!しかも、時間遅延や時間停止も出来る優れもの!たくさん収納出来るから『収納庫』にしましょう!ってな訳だ。便利な魔法は浸透するのが早かった。私が止められないくらいに。

 そして現在まで至る。


 そう、努力と才能さえあれば誰でも魔法は使えるので、収納庫をもっていても不思議じゃないけど、魔力量や使った回数などに応じて用量が広がって行くから、10歳やそこらの娘っ子は小さいダンボール1箱分くらい入れられれば優秀だ。

 ちっせ。


 私は無限に入れられるから規格外なのだよ!はっはっはっー!


 バレないようにしないとね?


 お姉さんが金属製のカードをカウンターの上に置く。


「じゃあこれにあなたの魔力を注いで染めちゃってちょうだい。あ、魔法は使える?」


「はい。お母ちゃんに教えてもらいました」


 あれも良い思い出だよな。記憶が無かったから魔法を使えて無邪気に喜んでお祝いしてもらったっけ。


 カードに魔力を流すと銀色にコーティングされた。

 これも魔道具だ。無断で複製や偽名のギルドカードを持っていると罰則がある。


「はい。カードが出来たわね。金貨3枚くださいな」


「はい、ありがとうございます。あ、あと、薬瓶の配達はしてくれますか?結構大量に買いたいのですが」


「あら沢山買ってくれるの?薬瓶はね、100個から無料配達を承っております。何個買いますか?」


 何だかお姉さんが言い慣れた言葉を言うようにするりと聞いてくる。


「薬瓶は300個お願いします。薬紙も300枚お願いします。お会計はいくらですか?」


「薬瓶は一般販売は150エンなのだけど、会員価格で100エンね。薬紙は一般販売で100エンだけど、会員価格で50エン。だーかーらー、薬瓶300個で30000エン。薬紙300枚で15000エン。合わせて4万5000エンね」


 金貨4枚に銀貨5枚か。魔道具なのに安いな。


 カルトンにお金を入れるとお姉さんが確かめてくれる。


 それから席を立ってカウンターの奥に行くと薬紙300枚を持ってきてくれた。ついでに木札も渡される。


「これは薬紙100枚包が3つね。紐を解くとバラけるから注意してちょうだい。これは薬瓶の引き換え札ね。無くさないようにね。今日中に配達するから家にいてちょうだいね」


「はい。ありがとうございます。配達は男の人ですか?女の人ですか?」


「基本的に仕事が早く終わった人が配達するけれど、女性の方がいい?」


「はい。家に子供だけなので男の人は怖いです」


 私には何があっても大丈夫だが、ミーアはそうじゃない。普通の可愛い幼児だ。


「じゃあ女性に配達してもらうわね。気をつけてね」


 子供だけと言ったので心配してくれたようだ。


 あっ!忘れてた!薬紙の包み方を教えてもらわないと!


「すみません!薬紙の包み方を教えてくれますか?」


「いいですよー。これが見本です」


 カウンターの内側からポンと取り出したのは小さな木箱に『見本』と書いてある包み終えた後の薬紙だ。

 恐る恐る手に取ってみると薬紙の中には何も入ってない。ホッとしつつ折り紙のようになっているので解体する。

 ふむ、こっちがこうなってこうなっていて、最後にこの端で留めるんだな。うんうん、なんとなくわかった。忘れないように記憶保存、だけど、消去をしない限り忘れないんだなこれが。記憶は忘れないけど、しなければいけない事はうっかりと忘れやすいので『万能神兼母神』の出番なのだ!


 ここにはいないけれど。


「ありがとうございました」


「いえいえ、お薬作り頑張ってくださいね」


 もうそろそろ家に帰ってミーアに水分摂らせないといけない。幼児の身体は繊細なのだ。


 ギィっと扉を開けて外に出るとポカポカ陽気だ。

 でも、こう言う日こそ危険!日焼けをして痛い目にあうのだ。サッサと家に帰ろう。


 んー、でも魔道具屋さんも気になるんだよね。

 薬と魔道具ってのは高く買い取ってもらいやすい。

 収納鞄を作れば多分一気に大儲けだ。


 小さい子供が高価な魔道具を見に行って大丈夫かな?


 ここまで足を伸ばしたし行っちゃうか!


 頭に浮かんだ地図で1番人の出入りが多い魔道具屋さんを探してピックアップする。

 お、ここから結構近い。


 おんぶしているミーアのお尻をぽんぽんと叩くと、じめっと湿っていた。浄化をミーアと私にかける。

 そうだよね。朝食後に出てきたからオムツも湿っちゃうよね。健康の証だ。


 気にせずに歩き出す。


 やっぱり子供が幼児をおんぶしていると注目される。

 服は普通の服だから目立たないはずなんだけどな。


 日差しが強い。

 私とミーアに太陽光を避ける結界を張る。身体に沿わせるようにしているから人には引っかからない。


 魔道具屋に着いた。大きな店だ。


 扉は引き戸のようでスーッと開いたので中に入ると、少しひんやりとしていた。太陽光が無いからかな?


 端から順繰りに魔道具を鑑定していく。

 んー、値段も出ろ!

 うん、値段も出た。私が知りたい情報が出るってことね。


 製氷器。魔法で氷を作れるな。

 着火の魔道具。生活魔法で十分だ。

 お!扇風機みたいなのがある。扇風機、好きなんだよな。でもミーアには危ないだろうな。部屋を適温にするなら出来るしいらないか。


 もう、ちゃっちゃと目的の収納鞄を探して帰ろうかな。


 あ、店員さんがいる近くにガラスケースがある。行ってみよう。


「こんにちは、レディ。何かお探しかな?」


 30歳くらいの男の人。

 鑑定してみるとこの魔道具屋の息子さんだった。しかもエルフ!爽やかイケメンは345歳か。本人も魔道具を作れるみたいだ。


「収納の魔道具を探しているの。ありますか?」


 微笑ましげに見つめてくれるけど、私の財力を探っているのが一目でわかる。何万年も人を見てきたんだよ。

 ここは正直に言うか。悪い人じゃ無さそうだし。むしろ子供好きそう。


「昨日、職業授与の儀式をしてきたの。収納の魔道具が作れそうだから下見したいです」


「そう、じゃあ、今はお客さんも居ないし特別だよ?」


 と言ってカウンターの奥から箱を取り出してきた。

 おお!高価だから店の奥に閉まっていたのか。


 パカっと蓋を開けて見せてくれる。

 即座に鑑定発動。


「これは収納ポーチ。ダンジョン産だよ。出入り口が小さいけど収納したい物を触って『収納』と言えば、ほら、このとおり、収納ポーチの中に箱が入ったよ。中が見えるかな?特別に中に手を入れみるかい?」


 エルフ男性の好意を踏み躙れない。私が作ってダンジョンドロップにした物だけど、こんなにレアな物だったかな?販売価格が6畳くらいのワンルームでアダマンタイト貨1枚とミスリル貨3枚だ。1億3千万エンだよ。


「ありがとう!入れてみる!」


 ゆっくりとエルフ男性の開いているポーチの中に手先をチョンと入れると、中に入っている物がわかった。


 箱1、になってる。


「出す時はどうするの!?」


 分かっているけど聞いてみる。


 エルフ男性がニコリと笑って教えてくれる。


「ポーチに手を入れると中に入っていた物がわかっただろう?取り出しと念じると取り出せる。本当はね、入れる時も入れたいと思って触ってだけで入れれるんだ。凄いだろう?」


「うん!凄い!収納の魔道具はこれだけ?」


「今、店にあるのはこれだけだね。ダンジョン近くの支店に行くとあるかもしれないけどね。収納の魔道具は作るのがとても難しいんだ。魔道具師、憧れの品だね。いつかは自分で作ってやるって」


 エルフ男性の目がキラキラと輝いている。

 イケメン好きです。眼福です。既婚者でも顔見るだけならタダです。無料です。ああ、良い言葉。

 昔は日本でもティッシュが無料で配られてたけど、死ぬ間際には配ってなかったなー。


「お兄ちゃんは作れるでしょ?」


 あ、一瞬表情が抜け落ちたが、また爽やかな笑顔に戻った。


「何でそう思ったのかな?」


「魔道具屋さんに勤めてるから!」


 無邪気の子供を装う。


「ふふっ、内緒だよ。私の子供が成人になる時に作ってプレゼントしたんだ。とても大変だったから、もう作らないんだよ」


「大変なんだ!私作れるように頑張る!ここに持ってきたら買い取ってくれる?」


 ふふふっ。エルフ男性が鑑定を出来るのをしってるんだぜ!鑑定したからな!そして、私を鑑定して驚いたのを知っている。だから大切な収納魔道具をみせてくれたってこともな!


「そうだね。まずは魔道具ギルドに登録して欲しいかな?魔道具ギルドで鑑定してもらって、公式鑑定書を手に入れないと販売出来ないからね?」


「お兄ちゃんは公式鑑定書?を作れるでしょ?私が作ったら、私が作った事を内緒にしてほしいんだ」


 無邪気な子供から真面目な顔をしてお願いする。

 このエルフ男性は信用できる人だ。

評価にブックマークにリアクションをありがとうございます。励みになります。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ