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役場に行こう!

 ミーアをおんぶした後にお母ちゃんが作ってくれた布鞄を首から掛けて、その中にお金を入れる。ちょっと不恰好だがミーアをおんぶしているから仕方がない。


 玄関の外に出て鍵を閉めてから、数度だけ行った事のある役場を目覚して歩き出す。

 やっぱりミーアの重みは感じなかったので、ミーアがちゃんといるかミーアのむちっとした足を触って確認しながら歩いた。


 小さい子供が幼児をおんぶして歩いているから結構注目されたけれど、40分ほど歩いて役場に着いたので中に入り受付の人に「家賃を払いに来ました」と住所と家名を言うと取り次いでくれたので、少し混んでいる中を歩いて専用スペースに行く。


 すると中年の男の人が対応してくれた。

 役場のカウンターは大人用だから少し高い。


「えーと、庶民街西住宅地10番のキャンベルさんだね?……おや?両親がいないね。それと今日、別の者がキャンベルさんの家へ訪問予定になっているから、ちょっと担当者を呼んでくるよ。待っててね」


 カウンターの前に待たされたので役場の中を観察してみる。


 大人だけかと思ったが、少ないが子供連れの親子がいる。


 いいなー、と羨ましく思ったが背中のミーアを思い出して子供の体温の高さを感じ取って孤独ではないと、むんっと気合いを入れた。


 すると、さっき担当してくれたおじさんと中年の女性が来てくれて別室に案内された。

 小さな個室だ。本当に話をするだけの部屋なのだろう。


 椅子に浅く腰掛けてミーアを潰さないようにする。


 中年女性は書類を見ながらセーレに確認してきた。


「セーレ・キャンベルさんね。お母さんを亡くされて大変だったわね。

 それでね、今日あなたの家に伺おうと思っていたのだけど、セーレさんは昨日で準成人になりましたね?それで今日は家賃の支払いに来た。10歳と1歳の子供2人だから孤児院に入れるのだけれど、どうする?孤児院に入って大人のお世話になった方が楽だと思うのだけれど。あ、キャンベルさんの今の財産はお預かりして、孤児院を卒業する時に姉妹に分かれて分配されるから心配しないでね」


 中年女性は私達を孤児院に入れたそうだ。

 孤児院の待遇は悪くないとお母ちゃんに言われて知っている。貧乏な家庭よりも待遇は良いくらいらしい。

 でも、お父ちゃんとお母ちゃんとの思い出がある家を出る気持ちは微塵もない。


「昨日、準成人になったので明日から働いてお金を得て、今までの家で暮らしていこうと考えています。幸いにも自立できる職業を神様からいただきました。妹と2人で頑張っていこうと思います」


 中年女性は気遣わしげにセーレの顔を見てきた。


「絶対に孤児院に入った方が楽よ?もしかしたら妹さんにはまだお世話が必要だから慣れている大人に任せた方が将来的も良いと思うのだけれど、考え直さない?」


「大丈夫です。お父ちゃんとお母ちゃんが残してくれたお金も有るし、隣の家のおばちゃんも気にかけてくれています。それから妹の面倒を見ながら働けますのでご心配には及びません」


 キッパリと告げるとセーレの意思が固いと思ったのか、子供だけで暮らす注意点を話してくれた。それと、ちゃんと生活できているか毎月役場の職員が家に訪れてくれるそうだ。

 それから、家賃は半年分支払ってあったみたいで、あと5ヶ月は払わなくて良いらしい。

 お父ちゃんとお母ちゃんが働いて得たお金は余り使いたくなかったから次回に家賃を払う約束をして、準成人になったので身分証の更新だけして役場を出た。


 さて、次は薬師ギルドに向かおうか。

 場所は創造神の権能で分かるので歩いて行く。


 日が高く登り、賑やかになってきた街の中を歩く。都だけど街でいいのだ。ちょっとした誤差だ。


 なんか私の後をつけてくる人がいるけれど、聖騎士と神官だと分かっているので気が楽だ。

 多分、昨日の神託や神像が光った原因を知りたいのだろう。接触さえしてこなければ良いボディガードなので撒くことはせずに普通に歩く。


 役場と各ギルドは商売の関係上近い位置に建物がある。これは便利だ。


 少し古いけど大きな建物の薬師ギルドの中に入る。

 カウンターに座っている女性に私が準成人になった事、薬師の才能が有ることを伝えて手続きしてもらう。


「初回登録料に金貨3枚いるけれど持っている?」


「はい。お金ならあります」


「そうお?じゃあ大丈夫ね。徒弟制度があるけれど受けるかしら?ほんとんどの人は希望するけれど」


「しなくて大丈夫です。そういう職業をもらいました」


「あら!上級職かしら?羨ましいわね。それなら大丈夫ね」


 人に職業を聞くのは常識がないとされる。過去に職業を公開して準成人の人達が頻繁に攫われる事件が起きてからは公開されずに親しい人だけに教えるようになった。

 本当は昨日スムーズに職業授与の儀式を終えたら、司祭様が参考に何の職業が選択肢に出たか確認するはずだったのだが、申告制の為に言わなくてもいいのでそうするつもりだった。


 女性が薬とポーションの違いを説明してくれる。


「薬師ギルドに登録している錬金術師の方は大体ポーションを納品してくれます。錬金術師は魔法が使えるから錬金釜と錬金棒さえあれば製薬の奇跡をおこせますからね。

 薬師の職業の人は薬草を煎じたり調合したりして手作業と長年の勘で丸薬や顆粒や液剤などの形状で納品してくれます。こちらの方がポーションより消費者は安く購入出来るけれどポーションと違って使用期限が液体に近いほど短い事が多いので安く買取になります。

 ポーションが作れるのなら失敗しても納品してくれれば植物の栄養剤になるので安いですが買取します。

 当然だけれどお薬は1つ1つ鑑定書がつくので一般的には高価なお品です。丁寧に作ってください。

 お薬を包む薬紙や薬瓶はギルドで販売しているから気軽に購入してください。ギルド製の薬紙や薬瓶に入ってないと買取金額が安くなるから気をつけてね。一応、薬師ギルドで使っている薬紙と薬瓶は魔道具だから薬の保管に良い環境にしてくれるのね?だから品質の保証が出来るので適正価格で買取します。

 ここまでで質問はあるかしら?」


「えーと、品薄で儲けが出る薬はどれですか?」


 女性は微笑ましげに笑った。


「実は薬は消耗品だからいつも品薄なの。ポーションなんて1年は持つから探索者の人に凄い人気なのよ?だからあなたが作りたい薬をつくってくれて大丈夫です。需要はあるから心配しないでちょうだい。準成人の人が薬を作っても鑑定で大人の人が作ったのと同じ鑑定結果が出れば適正価格で買い取ります」


 おおー、準成人に優しい。鍛治師ギルドはちゃんとした物を作らないと店に置かせてもらえないから見習い期間が長いって聞いたことある。


「道具は?どうする?会員なら他の店よりギルドで買った方が安くつくわよ?」


「あ、お下がりの道具があるので、劣化したらお世話になります」


 嘘だ。

 創造の権能でいい物を作れるから言っただけだ。権能で作ればタダだしね。


「それじゃあ会員登録するけどいいかしら?」


「はい、お願いします」


「この紙に書ける所だけでいいから書いてちょうだい。名前と住所は絶対に書いてね?緊急連絡する時に必要だから。工房でもいいわよ」


「緊急連絡ってどんな時にあるんですか?」


 お姉さんは面倒くさがらずに丁寧に教えてくれる。


「緊急連絡はね、王国や隣国で疫病が流行った時に最優先で指定の薬を作ってもらう時や、数年に一度起こる魔物の溢れの時に優先的に薬を作ってもらう時ね。薬はいつも足りないから。その時は強制的に従ってもらいます。人命優先ですからね」


「分かりました」


 用紙に名前、住所、もろもろを記入していく。職業の欄は書かない。おいそれと人に言えないからね。


 用紙を記入し終わったらお姉さんに渡して手続きしてもらう。


 各ギルドの本部は教国にあるらしい。

 念の為に全国区にギルド展開しているギルド名が書かれている印刷物を受け取った。ここに書かれているギルド以外は勝手にギルドを名乗っている個人のギルドだから気をつけてと言われた。詐欺などをする人が後を経たないらしい。ギルドで連盟を作って監視しているが、徹底的には潰せないようだ。そういうのはまとめて『闇ギルド』と言うそうだ。詐欺目的や特殊な品を扱ったり、裏社会の御用達ギルドだったりするらしい。


 怖いね。変な店には入らないでおこう。

 私が探して摘発してもいいけど、目をつけられたら自由に動けないからいやなんだよな。せっかく受肉して地上にいるのだから自由に生きたい。

 だって!ファンタジー!ふぉー!

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