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ミーアの服を買いに行こう 2

 セーレはミーアをおんぶして南門の大通りにある『ミモザ服専門店』に着いた。

 大通りに店を構えているだけあって、結構な大店である。


 この世界でガラスは貴重品だし、防犯の上で使えないので、店内を見せる為だけにガラス窓は使われない。


 『薬師ギルド』で販売されている『ポーション瓶』はどうだって?

 一応、ガラスだが、特殊な作りのガラスに魔道具として作られているので、破損しにくいし、再利用されるし、たとえ地面に叩きつけられても傷つかずにかなり丈夫なので、安価で供給されるのである。

 材料に特殊スライムが使われているのは内緒だよ。


 スライムは各家の『ペット』で、森の『掃除屋さん』。

 人に無害な魔物の為に、スライムを殺すのは忌避されている。


 もちろん歩いていて「あっ!踏んじゃった!」事件は日常的に起きているので、不幸な事故だったと見逃される。

 埋葬は踏んだ者の責任を持ってなされる。


 スライムには「粘性」と「酸性」があるので、取り扱いには注意が必要だ。


 実は各国の首脳陣はスライムに対する『ペット』の認識を無くしたい。

 研究が進んで、スライムは有用で非常に便利な素材だと近年発表されたからだ。

 この研究結果は画期的なのは当然だが、一般の人々から忌避されている。


 まあ、待ってくれ。

 いきなり愛犬が「あなたの飼っている犬は良い素材になるので、国が買い上げる」と言われたら、国に従い、愛犬を素材として差し出すか考えてもらいたい。


 ひっっっじょーに、嫌悪感が湧き、恐怖と共に国に抗議したくなるだろう。

 生まれてから、ずっと家にいるお掃除スライムが素材にされるのだ。当たり前だが悲しい。愛着がある。


 創造神が引き起こした問題ではない。

 創造神はスライムに攻撃性を持たせずに、便利な魔物として創造した。

 そのなかには『素材』として使える要素も取り入れて、スライムが殺されるのは普通として創ったのだ。

 だって、ファンタジーでスライムが素材になるのは『普通』でしょ?


 ただ、あまりにも無害すぎたし、ちょっと可愛いかったので、この世界の人々に『ペット』だと認識されちゃっただけ。


 国家、王族や貴族や研究者が頭を悩ませている問題である。


 まあ、それは、置いといて。


 セーレは扉を開けて中に入った。


 するとすぐに店員が近づいてきた。


「お嬢様、いらっしゃいませ。今日はどのような服をお求めでしょうか?」


 さすが大店である。

 女性店員から癒し成分が垂れ流されている。

 『出来る女』感も有る。包容力は満点だ。


「妹の着ている服が小さくなってしまったので、少し大きくて長く着られる可愛い服が欲しいです」


「上下何着、ご入用でしょうか?」


「着替えがあるので、上下3着は欲しいです。あっ!上下が繋がった服も可愛いかも……」


 セーレは可愛いミーアが可愛い服を着ている所を想像した。


「ご予算はいかほどでしょうか?」


 この世界の店員が予算を聞くのは失礼にならない。予算が分からなければ、提案する商品がしぼれないからだ。


「可愛いければ予算の心配はありません」


「それでは、子供服エリアに行きましょう。妹様はお一人で歩けますか?試着はなさいますか?お召し物が汚れている場合にはお断りをさせていただきますが……」


 店内の床は綺麗そうだったので、セーレは座ってミーアをおんぶ紐から解放してすぐにミーアのお尻を触った。


 (湿っている!)


 素早く浄化を掛けた。


 おんぶ紐は邪魔になるので収納庫にしまった。


「大丈夫です。妹は綺麗です」


「そうですか。それでは参りましょうか」


 オムツでお尻が膨らんでいるミーアと手を繋いでセーレは店員について行った。


 子供服エリアには、淡い色が多くて、布地も柔らかそうに見える。さすが大店だ。


「この辺りの服はいかがでしょうか?女の子用の可愛い服を取り揃えております」


 ミーアの体に服を当てがう。

 うん、可愛い。うちの妹は何を着ても可愛い。


 セーレの頭がぽあぽあしてきた。


「もし、お時間がありましたら、採寸いたしまして、よりフィット感のある服をご提案出来ますが、いかがなさいますか?」


「よろしくお願いします」


 セーレの言葉と判断は素早かった。

 ミーアに堅苦しい服は似合わないし、着せられない。


「それでは、採寸するお部屋にご案内いたします」


 店の奥に案内された。


 スーッとカーテンが閉められると、サッとメジャーを持った採寸してくれる人が来て、素早くミーアはオムツ一丁にされた。

 あ、メジャーはダンジョンでドロップされます。安価で流通しております。サイズもいろいろと取り揃えております。


 サッ、サッ、ササっと採寸されて、年齢を当てられた。


「妹様は一歳過ぎぐらいの体格ですので、一歳半のくらいよ歳の子供が着る夏服はどうでしょうか?今、着用されている服も、もう少し着られそうですし、これから熱くなりますので、その方が長く着られて良いと思いますが」


 専門家の意見に大いに納得である。セーレもそう思っていた。


「今でしたらオーダーメイドも受けてから初夏の受け渡しになりますが、既製品をご購入されますか?」


 う〜ん、そう聞かれると悩む。心が揺れてしまう。

 オーダーメイドの方がフィット感が増すだろうし、デザインも自由に選べる。


「既製品で上下1着ですと、2万〜3万エン。オーダーメイドですと、3万〜4万エンとなります。オーダーメイドなら生地からデザインまで選べますので、おすすめですよ」


 う〜ん、オーダーメイド推しが凄い。販売戦略だと分かっているのに、とても魅力的な言葉に聞こえる。

 セーレの懐も温かいし。


「お、オーダーメイドで、お願いします」


 セーレが迷った末に声を絞り出したら、店員さんが笑顔で了承してくれた。


 ソファ席に案内されて、生地サンプルを渡される。


「お子様は汗を流されますので、柔らかい吸水性の良い生地をご提案させていただいております。こちら、小さな子供用のサンプル生地ですので、どのお色や生地を選んでいただいても良い服が作れますよ。

 また、このぐらいのお歳のお子様は、とても転けやすいです。破れにくい素材なので、お子様が外で歩かれても安心できます」


 ふおおおーーー!初めての感触。合成素材の生地なんかがこんな手触りだった気がする。天然なんか?この生地は天然か!?


「とても、手触りが、良いですね」


「そうでございましょう?もっと、手触りの肌触りの良い生地がこちらになります」


 店員さんがサッと新しい生地を出して渡してきたので遠慮なく触ると、幸せな触感がした。

 セーレの頭がまた、ぽあぽあした。


「幸せ……」


 店員さんは同意して生地の名前を言った。


「そうでございましょう?一般には流通していない生地でございます!それも『アンジュの布』です!いかがでしょうか?ちょっと、ご予算をオーバーするかもしれませんが」


 店員さんが商売上手だ。もう、この生地で服を作るしか考えられない。


「この生地で作ってください」


 店員さんは一度頷いた後に、次はデザイン画を取り出した。


「妹様には、この服が大変お似合いかと思いますが、いかがでしょうか?もちろん、自由に見ていただいて構いません」


 デザイン画集を受け取って見る。

 店員さんおすすめの幼児服は薄ピンク色のロンパースだ。

 採寸の人が、ぱぱっと似た服を用意してミーアに当てがう。可愛い。お尻部分が大きく膨らんでいると、可愛い。


「……これにします」


 口が無意識に動いてしまった。


「ありがとうございます。お作りは少し大きいサイズをご所望なので、サイズ調整が出来るようにお作りしますね」


 うん、サービスが良い。


 あとは、上下別の服も選ぼう。


 うわあ!ふわっとした幼児用ワンピースも可愛い!

 ……転けたら怪我しそうだから、長い靴下を履けば大丈夫かな?


「2つ目は、これにします」


「はい!ありがとうございます!」


 店員さんが喜んだ声を上げた。


 ぺら、ぺらっと、デザイン画を見てページをまくるけど、最後の1着が、可愛すぎて、選べない。


 ワンピースが、幼児のワンピースが、可愛いすぎて、目が奪われる。

 ゔ、ゔゔ、上下、別、は、諦めようかなー?

 あっ!パジャマもいる!


「あの!寝巻きのサンプルはありますか?」


「もちろん!ございます!」


 いつの間に手に取ったのか、私に差し出してくれるので、遠慮なくデザイン画をもらう。


 やっぱり3着目もワンピースのデザインを選んで、次にパジャマを選ぶ。


 店員さんは部屋着なので、薄手のサラリとした生地を勧めてくれた。

 うん、手触りが良い。

 やっぱり、ロンパースがかわいいな。


「あの、寝巻きは、これにします」


「はい!追加の服はございませんか?」


 迷っていた服はあるけど、ミーアはきっとすぐに大きくなるから服は少なくてもいい。


「大丈夫です。全部選びました」


「それでは、生地のお色を決めましょうか?それともデザイン画と同じお色にしましょうか?」


 お、目から鱗だ。

 そうか、色、変えれたんだ。でも、色味も合わせてデザインが良いと思ったから選んだんだ。

 この服を考えた人は天才じゃなかろうか?


「デザイン画通りの色で作ってください」


 後悔は無い!私はベストを選んだと信じてる!

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