表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

33/34

ミーアの服を買いに行こう 1

 昨日、疲れた頭を寝ることによって回復させたセーレは、早起きのミーアのお世話をしていた。


 ミーア、少し大きくなったかも。


 まだ、お母ちゃんが作ってくれた服を着れるが、身体を伸ばすと布が引きつる箇所がある。


 いつまでもお母ちゃんの遺してくれた服を着させたいが、そうもいかないのが成長期だ。


「ミーアちゃーん。今日はお姉ちゃんと新しい服を買いに行きますかー?」


「あーい!」


 おお!奇跡的に言葉が通じた!


 いや、なんとなくミーアが出した声がそれらしき返事になっただけだった。

 いや、一歳児だったら簡単な言葉はもう覚えてくるかな?


 おばちゃんに今日のお土産ならぬ、差し入れは何にしようかなー?っと。


 ふむ。ふむむー?っと、悩んで熟したキウイを布鞄に入るだけ創造した。これでよし!


 ミーアをおんぶして、おばちゃん家に行ってキウイを渡して、朝食をいただく。

 今日は珍しくパン食だった。


 基本的には、おばちゃんはおじちゃんの為に腹持ちのいい米食を食べている。パン食はおじちゃんの休日ぐらいだ。と、思ったところで、今日がおじちゃんの休日じゃないか?と思った。おじちゃんもいつもリビングダイニングで生活しているわけじゃないだろう。


「おばちゃん、今日、おじちゃんの休日じゃない?私達、邪魔でしょ?ごはん別に食べようか?」


 言った後に、聞き方を間違えた!と思った。


「邪魔なわけあるかい!普通に食事しにおいでよ」


 そうなるよねぇ。私の聞き方がズルかった。

 これじゃあ「私達を邪魔だと言わないで」と言ったと同じだ。


「ありがとう、おばちゃん」


 まあ、おばちゃんの言葉は素直に受け取っておく。


 このパンは西地区のパン屋さんだな。

 特別美味しくはないけれど、普通のパンを売っている店だ。まあ、普通に美味しい。コッペパンみたいなパンが1つ100エンで買えて、良心的だ。お財布にも優しい。


 そして何故かパンの焼ける匂いは涎が垂れそうなほど美味しい香りだ。お母ちゃんにねだって何度か買ってもらった。

 焼いているパンの匂いは、何であんなにいい匂いがするのだろうか?不思議だ。


 そして、この店には、小さな丸パンが売っている。子供用か、小腹が空いた大人用みたいなパンだ。

 1つ50エンで売っているから、子供のお小遣いで買えるし、ついつい買ってしまう小さなパンだ。フランスパンみたいな食感で普通に美味しい。

 この店の目玉商品だね。


 実際に、お腹を空かせた小さい子供が買いにくるので、顧客を逃がしにくいパン屋さん。

 西地区の人々は全員一度でもお世話になるパン屋さんだ。


 ミーアと素足エリアで遊んだ後におんぶ紐でおんぶして、おばちゃんの家を出て、向かうは南門の大通りの服屋のお店。

 西地区の服屋さんでもいいけど、品揃えが段違いに違うしデザインも南地区の服屋さんは最先端を走っている。

 王都に本店があるらしく、子供から大人に人気のお店だけれど、値段は可愛く無い。

 庶民が奮発して買うか、富裕層のオーダーメイドを請け負っている。

 その分、お針子さんは腕がいい人が揃っている。


 はい、行った事はありません。

 全部、頭の中の地図さん情報です。


 私はお母ちゃんのように手が器用じゃ無いから、既製品の服を買うのです。

 いや、お母ちゃんには裁縫を教えてもらったから少しは出来るんですよ?ただ、苦手ってだけです。はい。


 お母ちゃんは孤児院で生活に必要なことは大抵教育させてもらったって言っていました。

 孤児院は英才教育でもしているのでしょうか?服を作れるって凄いと思うのです。


 と思いながら、トコトコと歩いて行く。


 今の時間は、通勤する人ではなく、買い物に出かける人が多いので人はまばらだけど、みんな南地区に向かって歩いている。


 朝市があるもんね、と考えながら、主婦のお目当ては市場に並ぶ新鮮野菜だと思うのだ。


 昨日か早朝に村で収穫された新鮮な野菜が朝9時ごろに南門近くの市場で売りに出される。


 村人達は日の出と共に起きて、生活を始める。

 それから朝の準備が終われば畑の野菜を収穫して、荷馬車に積み、領都まで移動して来て朝市で野菜を売り、お金を稼ぐ。

 午後には村への必要物資を購入して空になった荷馬車に積み、村へ帰り、収入を分配して生活を成り立たせる。

 領都に近い村だけだが。


 こういう村は街町に必要不可欠な存在である為、ここのインジード領では街町で売る野菜には税金をかけていない。

 村人が街町へ野菜を売りにこないと、たちまち食べる物が無くなり、暴動か略奪か餓死が起こってしまうからだ。


 まあ、儲けたい商人がいなくならない限りは、そんな状態は商機なので、遠方から食糧を仕入れて売ってくれるだろう。

 値段は高いだろうが。


 領都でも野菜を少しだけ領主主導で育てているが、領主邸と孤児院の食事として消費されている。

 領都に畑がある本当の目的は、領都の外に出られなくなった非常事態が起きた時に、領都内だけで生きられるように非常食として育てられている。

 それと、領主邸に勤めている者や教会の神官で時間停止の収納庫や収納魔道具を持っている者は、ソレに食糧をめいいっぱい入れて、たとえ『魔物の溢れ』で門が閉ざされたとしても災害支援で領民が1週間程食べられ、生存できるようにしている。

 後者は領主の考えで行われているが、前者の『領都内の畑』は創造神の神託により『壁で囲まれた街町は壁内で食糧生産をすること』と伝えられているので、守っている結果である。

 その地の領主と教会が力を合わせて畑を維持している場合もあるが、領主と教会の仲が悪い場合には教会主導で行われている。

 そして、畑の規模は土地の持ち主の領主が決めるので、街町での畑が小さい場合には教会が土地を買い上げて畑を大きく作る場合もある。

 もちろんだが、非常時でも食糧を無料で提供する馬鹿はいない。お金を貰い販売するだけ良心的だと考えなくてはならない。

 この世界では、これが普通だ。

 地球のように大量の物資を素早く長距離輸送が出来ないので仕方のない措置である。


 地域が違えば人の考え方の違いがあるので、神が神託しても人の解釈により神託が捻じ曲げられることもある。


 そして、その行動に悪意や害意が存在して、組織的に神に従わない場合には神からの何らかの動きがある。

 創造神による【世界の改変】や【神罰】である。


 この世界に、神を信仰していない者は、少数派だが存在する。


 その場合には、創造神が何とかしようと働きかけるが上手くいかないこともある。

 『人食い集落』が悪い例だ。


 神の庇護を感じられずに育つと信心深くならなくなり、無神論者か異教徒になる。

 当然ながら『職業』などは与えられずに育ち、その習慣が広がっている。

 こうなれば神もお手上げだ。

 『職業』が無ければ神官は生まれない。神官の素質を持ち、神託を受ける者もいるが、大多数の意見に批判されてしまい、結果迫害される。


 創造神と眷属神以外の架空の神を信仰している場合、その規模が大きくなり、宗教戦争が起こるような事態になれば、創造神が主導者達を奴隷にする。

 が、それでも創造神の意に沿わぬ事をすればたちまち神罰が落ち、主導者共を強制的に排除する。


 今の創造神セーレは天界から地上を監視出来ないので、もっぱら母神が監視していたが、【世界の改変】を母神が行い深い眠りについた為、父神と友神が監視(と言う名の見守り)を行っている。


 セーレが南門の大通りに出た時には、大通りは人と馬車で賑わっており、うるさいほどに賑やかだ。美味しい香りもしてきて楽しい気分になる。


 セーレは目的の『富裕層に近い庶民街』にある服屋を目指して歩き始める。


 大通りに隅は存在しない。

 人を避け、馬車を避けて歩くのみだ。

 事故も多いが、皆が気をつけている為に酷い結果になる事は少ない。小さな小競り合いくらいだが、たまに、セーレのお母ちゃんのような事故が起きる場合もある。


 日本のように平和ボケしていないので、一人一人に危機意識や危険察知能力が高いので、この世界の人は生き残っていけるのだ。


 馬車を制御する御者も人生を棒に振る訳にはいかないので、人混みが多い場合には馬を歩かせるし、人々は馬車を避けて歩く習慣が身についている。

 誰しもが馬車に轢かれて死にたくはないのだ。


 セーレは目的地の服屋に着いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ