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大変だ!

 その後、1分間ほど光った後に弾けるようにして光が散って私に向かって降り注いで来た!

 こんな演出要らないからー!!!


 司祭様が呆然としてこっちを見ているじゃないかー!!!


 仕方がない。神妙な顔をしておこう。私は何も知りません。


「神々に祝福されし御子……いや、神子!」


 なんか司祭様が不穏な言葉を呟いているじゃないか!!


 違います〜。今は只の人なんですー。


 説得力ねぇ。


 ゔゔ、気付きたく無かったけど、司祭様側の扉の外がザワザワしている。

 もしかして、高位神官の人も来ちゃった!?


 パッと立ち上がって司祭様にお辞儀してから扉を開けて外に出て、呆然としているお姉ちゃんと機嫌が良さげなミーアを促して教会から出ようとするけど「お姉ちゃん!帰ろう!」と声を掛けてもお姉ちゃんが立ち上がってくれない!もう!焦ってるのに〜!!


 付き添いに来てくれたお姉ちゃんには悪いけど、ミーアを抱っこして急いで教会の入り口に向かって歩き出そうとしたら、神官バリアをされた!いや、通せんぼされた!くっ!逃げられないじゃないか!


 儀式をしてくれた司祭様が近づいて来た。


「別室にお越しいただけますか?」


 さっきと同じ優しい笑顔なのになんか怖い!後ろからも金銀の刺繍を施された高貴そうな服を着ている人達がいっぱいいる〜!!


「は、はひ」


 逃げ場は、ナイ。


 お姉ちゃんも保護者として道連れにするからねー!!



ーーーーーーーーーー



 お姉ちゃんが立ち上がれるようになってから、神官達に逃げ道を塞がれて、ロの字の真ん中に私達が来るように連行された。

 いや、乱暴な事はされなかったよ?私だって日本じゃいい大人だったよ?その後に創造神をぼっちで何百年も何千年もしてたよ?ぼっちだよ?ぼっち!独り言呟いてたの!

 で、地上が落ち着いて来てからよ?母神達を創造したのって!ぼっち舐めんなよ!?コミュニュケーション能力が落ちたわ!「ママ〜」って母神に甘やかされてたわ!そんでから、引きこもりになって『祝転生!』だったのよ。とほほ、10歳児です私。大人の偉い人に囲まれると怖いんです。


 お父ちゃん!お母ちゃん!転生してなかったら助けて〜!


 母神達には助けを求めない!こんなにした犯人だからね!天界に戻ったら覚えてろよー!!!忘れねーぞ!わたしゃー!


 その時、ふわりと私とミーアを抱きしめる腕を見た。


 驚いて歩くのを止めて、ゆっくりと振り返ると、お母ちゃんが申し訳無さそうな顔をして心配そうに眺めてから頬にキスしてくれた。


 私はお母ちゃんの死んだ、ぐちゃぐちゃな姿を思い出して、私の助けを求める声に応えてくれたのが嬉しくて、もう一度会えた感動で、一瞬で涙が溢れて来た。


「お母ちゃん〜〜〜!!!うあ〜〜〜!!!たずげで〜〜〜!!!」


 私の声に驚いたのかミーアまで泣き出して、お母ちゃんの霊体に抱きしめられて、もう混乱していた。


 お母ちゃんの腕の温かさが強くなった時にそれ(・・)は起きた!


【泣いている娘を解放しなさい!今すぐに!!】


 頭に響く怒声に意識が持っていかれた!母神の声だ!怒ってる!!


 神官達は頭に響いた怒声に驚いたのか、衝撃を受けたのか、皆、床に倒れた!


【泣いている娘を解放しなさい!自由にしなさい!!】


 神官達は頭を殴られたように頭を手で押さえて蹲っている!


【早く!早く早く早く!解放するのです!】


 私は冷静になってしまい、母神の怒りは自業自得で、スンとしてしまった。

 母神達が神像を光らせる演出をしなければこんな事にならなかったのに!


 それよりも今はお母ちゃんとの邂逅の方が大事だ。

 お母ちゃんの心配そうな顔を見る。


「お母ちゃん、私、ミーアを立派に育てるからね。お父ちゃんとお母ちゃんに誓うよ。来てくれてありがとう。もう一度逢えて嬉しかったぁ。っ輪廻に帰って、つっ、次の生は幸せに、なってねっ!」


 話しかけているうちに涙が出て止まらなくなったけど、最後までお母ちゃんを見て話した。

 創造神の私が力いっぱい呼んでしまったのだ。送り出すのも私、創造神の勤めだ。たとえ、お母ちゃんでも変わりない。


 涙が溢れて止まらないが、口が笑みの形になるように、引き攣る口角を震えながら上げる。


 お母ちゃんは、もう一度私にキスしてから頭を撫でて、ミーアにもキスして撫でてから光に包まれて天に昇った。


 私が、お母ちゃんを、天に昇華させたのだ。


「うぐっ」


 喉が引き攣った。


「うぐっ、ひっくっ、うえっ、えっ、えっ、えっ、えっーーーんっ!」


 もう一度逢えて嬉しかったよ。

 呼んだら来てくれてありがとう。

 でも、でも、本当に最期のお別れなんだね。


 もう、逢えないんだね。


「ゔあーーーっ」

「ぎゃーんっ」


 ミーアを抱きしめて泣いた。


 泣いて、泣いて、泣いた。


 神官達は呆然として、泣くセーレとミーアを見ていた。



ーーーーーーーーーー



「うぐっ、ひっくっ、ふぐっ」


 いつのまにか、お姉ちゃんに抱きしめられていた。

 ミーアは泣きつかれたのか、脱力して寝ていた。涙と鼻水でべちゃべちゃだ。


「セーレちゃんっ、お家に、帰ろうねっ」


「ゔんっ」


 歩き出したセーレとお姉ちゃんを止めようと反射的に動いた神官は、押し殺したような神託に震え上がった。


【娘を自由にさせなさい。私達はずっと見ていますよ】


 誰もセーレ達を止める者はいなかった。



ーーーーーーーーーー



「神の怒りは、鎮まったのか?」


 恐る恐る、大司教が小さな声で囁くように体を伏せたまま言った。


 隣に伏せていた司教が震える声で応えた。


「そ、その、ようです、な?」


 恐る恐る、今だに震える体を手でさすりながら神託を思い出し、大司教はブルリと震えた。


「あ、あの娘は、何者、なのだ?」


 大司教が起き上がるのを見て、司教も震える体を持て余しながらも静かに起き上がる。

 まるで、また、神託がくるのを恐れるかのように。


「わ、わかりませぬ。し、しかし、この、教会に、職業授与の儀式、で、来たのならば、領民、で、しょうな」


 司教は言った後に震える息を吐き出した。


「泣いている、娘、と、言っていた。あれは、ただ、泣いている娘のことなのか、神々、っの、娘、と言う意味、か?分かるか?」


 自分で自分の言った意味を確かめるように呟く大司教に司教は応える。


「わ、分かりません、が、娘を解放せよ、と、自由にせよ、と、大層お怒りのご様子でした。さっ、最後にはっ、わ、私達はずっとっ、見ているっ、と」


 司教は最後の神の神託に思わず身体が芯から凍るような思いで思い出してしまった。

 それほど、神の怒りとは衝撃的だったのだ。


「娘、の、身元を調べる、のは、お怒りに、触れる、だろう、か?」


 大司教も思い出したのか震えている。


 他の神官達も、震えながら慎重に起き上がり出した。


「や、役場、の、今日、誕生日の、者を、調べるのが、よろしいか、と?」


 司教も自分で言いながら、神の怒りが降りかからないか試しているようだった。


「お母ちゃんと、言っていた、な?霊体?に、向かって。あれは、神が、呼び寄せた、のか?」


 教会という死者を弔う関係上に霊の姿をうっすらと見える神官も存在する。

 その場合は観察して、光が天に昇って行くのを確認するのだ。


 司教も冷静になってきた頭で考える。


「神、が、呼び寄せたのか?娘、が、呼び寄せた、のか?は、分かりませんな」


 大司教は考える。震える体を押さえつけて。

 娘は職業授与の儀式に訪れたのだったと。担当した司祭を呼ぶ。


「スクゥート司祭。スクゥート司祭はいるか?」


 何とか身を起き上がらせるスクゥート司祭。


「は、はい。おりまする」


「娘の名は、聞いたか?」


「き、聞いておりません。で、ですが、職業は鑑定しましたっ」


「な、なんだったのだ?」


 はやる気持ちを抑え込んで問いかける。

 神に気に入られる職業とは?


「そ、創造、に、ございます。加護神は創造神様でございました」


 その場にいた全員が驚いた。

 歴史的にも創造神様の加護をいただいた者がいるが、少数だ。


 大司教は神官、皆に呼びかける。


「ま、誠か?誠に創造神様か!……皆、娘の身元を知っている者はいるか?!」


 1人の下位神官が声を上げた。


「は、はい!私は何度か、見かけました!は、母親と頻繁に、礼拝しておりました」


「霊体の母とか?」


「そ、そのようです」


 バタバタと新たな神官達が駆けつけてきた。

 その中の1人が声を掛ける。


「ど、どうなさいました!?神託が!恐ろしい神託がありましたが、あの、黄色い服の娘ですか?それとも紺色の服を着た娘ですか?」


 大司教が答える。震えもおさまってきたようだ。


「黄色い服の娘だ」


「今日の朝に葬儀を上げた娘でしょうか?」


 その言葉を言った神官に、全ての神官が注目した。


 大司教は唾を飲み込み口に出した。


「今日、葬儀を上げたのは、母親、か?身元は分かるか?」


「そ、そうです。不幸にも馬車に轢かれて無残な死体となっておりました。健気にも娘は泣きながら母の骨を拾っておりました」


 元からいた神官達は皆、先程現れた霊体を思い出していた。


「娘の身元を教えてくれ。そして娘は自由にさせなさい。神官達に徹底して周知させなさい」


 大司教がセーレを見守りながら自由にさせるのが決定した瞬間だった。


 大司教は憂鬱だった。神を怒らせた神託を教会の総本山の教国にいる教皇様に連絡しなければいけないのが。そして、娘に手出し無用の通達をするのが。

 娘を連行してステータスを開示させようとして神を怒らせた。

 もし、娘を害する者が現れたら?


 大司教は大きく身体を震わせた。

 きっと……きっと、神罰が下るであろうことに気がついてしまった。


 神が『ずっと見ている』と神託したのだ。

 あの娘は神に護られる存在なのだ。


 どうやって事の重大さと慎重に対応すべき事だと説明するべきか悩んだ。

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