世界の改変 2
朝、おばちゃん家で朝食を食べて自宅に帰って来た。
今日のお土産は、スイカである。大きさにおばちゃんが驚いていた。模様にも不思議がっていたけどね。
昨日、ミュンちゃんとお姉ちゃんが変な人が歩いていると言っていたので、ミーアとお出かけするのを躊躇ってしまう。
頭の中の地図で変な人を探してみる。
ん?んん?
変な人はほとんどの人が建物の中にいて、外を歩いている人は少数だ。
もっと詳しく見てみると、兵士の詰め所にいる人が多い。何が起こっているのだろうか?
『母神、聞こえる?街で何が起こっているか調べてくれる?』
地上にいると情報取得手段が限られているから、母神に頼むのが1番手っ取り早い。
あれ?いつもならすぐに返事があるのにおかしいな?神は大体が力を蓄える時だけ眠る。天界に神を害するモノはいないけれど私の思いが反映されるから各自に家がある。
『父神?母神はいる?』
父神はいつも母神といることが多い。熱々カップルなんだよ。
『我が子や。母神はほとんどの神力を使い果たして、深い眠りの中にいる。これからは父神に相談しなさい』
え!神が深い眠りについたって、只事じゃない!母神は私の次に力が強いのに!!
『父神!母神に何があったの!?教えて!』
『隠す事では無い。創造神がしていた【世界の改変】を母神単独で行ったのだ。負担が強かったせいで寝込んでいる』
『何!?何を改変したの!?』
母神単独では世界の改変は出来ないはず。母神はかなりの無理をしたはずだ。
『地上で創造神を傷つけた愚か者達に鉄槌を下す為に世界の改変を行ったのだ。今までは殺人など悪辣な罪を負った者だけが【奴隷】になったが、創造神を傷つけた重犯罪者も【奴隷】になるように母神が力を尽くした。我が子よ、もう安心だからな』
私が重犯罪者に傷つけられた?何かを忘れている。記憶を読み込まないと。
私が病床につくまでの記憶をさかのぼる。
あ!ああ!あの中年ハゲオヤジとムカつく顔した役場長!!
そうか、母神は私の心配をして無理をしたんだ。
『父神、母神は良くやってくれた。これで救われる人もいるだろう。私の心は救われた。母神を頼んだよ、父神』
『もとより、我が妻だからな。我が子、創造神も今は人だ。無理をするなよ。天界の皆が心配している』
『ありがとう、父神』
そうか、変な人は重犯罪者だったのか。領都にこれだけ居たという事は、結構な悪人がいたんだな。領都は平和だと思っていたけれど、危ない状況はいつでも隣にあったんだ。
あれ?では重犯罪者は体が黒くて光っているのか。
私が設定した「殺人者・悪辣な犯罪者はスータスを見る」より便利じゃないか。さすがは母神、私の頭脳だ。私の抜けている穴を埋める為に『万能神』として創っただけある。
寝込むまで頑張っちゃうのは『母神』としての悪い所が出たか。子神の為に、倒れる寸前までいつも頑張っていたからな。
『我が子』
心がくすぐったい。
離れてみてよかったぁ。愛情がダイレクトに伝わってくる。
ミーアちゃんのほっぺにちゅう!
んー、可愛い、可愛い。
私がもらった愛情をミーアに与えることは出来るかな?出来たらいいな。
自然と笑顔になってしまう。
よし!今日は薬草を取りに行こう!
ミーアのお散歩も出来て、私の薬草取りも出来て、一石二鳥だ!
あ!そう言えば、ミーアがおんぶしたまま寝るから、新しく日本製のおんぶ紐を新調しようと思ってたんだ。
私の魂は細くだが、地球に繋がっていて、関係が切れていない。
今の地球は資源を採掘しすぎて、資源再利用のエコ時代に到達している。人口の減少は抑えられなくなり、第三次世界大戦が勃発して、戦後は平和への道筋を辿っている。
正直言って、神目線では、ボロボロの地球だ。
だが、情報を抜き取ることは出来るので、細い繋がりから安全のおんぶ紐の情報を抜き取って、創造の力で構築する。
この世界の布をカモフラージュに張って、出来上がりだ。
私の体格ではゴツくなってしまったが、ミーアは安全になった。それに只の紐でおんぶするより楽だ。初めは調整が必要だけどね。緩くて、ミーアがおんぶ中に落ちたら大変だ。
おばちゃんに昼食をいらないと連絡して、歩きながらおんぶ紐を調整する。
うん!これでピッタリ!
頭の中の地図で、領都で1番美味しいパン屋さんをピックアップして歩いていく。ギルドが集まっている近くに店がある。これはきっと流行っているね。
近くに来ただけで、美味しいパンの焼ける匂いがして、たまらない!香りの暴力だ。
店の表側に行くと、大行列が出来ていて、入場制限もしている。
並ぶだけで美味しいパンが買えるなら、勿論並びます!
これはきっと期待通りだね!
ミーアがパンの焼ける匂いがたまらないのか、ういうい言っている。
ミーアの涎が垂れたら困るから、ミーアに浄化を掛けておく。
長い列は思ったよりも早く前に進む。
店の人も、お客さんも慣れているのだろう。
ふと、後ろを振り返ると、私の後ろにも行列が出来ていた。
次に来る時はお昼に近い時間は駄目だな。
遅い時間に起きて、朝食の後にお腹を落ち着けて、父神と話をしていたから、今は10時45分くらいだ。早い人は昼食の時間になる。
11時くらいに店内に入れた。
ゆったりと商品を見られるように、広い店内には10人ほどしか客がいない。
この土地は2等地ぐらいに良い土地だろう。
トレーにもいくつか種類があるから、1番大きなトレーを手に持って店内を一周回って、美味しそうなパンは片っ端からトレーに乗せる。
ミーアも中の柔らかい所は食べられるからね。それに収納庫に入れておけば時間が経たない。沢山買っても無駄にならないのだ。
お会計場所に山盛りになったパンを持って行くと、店員さん2人がかりで袋詰めしてくれる。
よく見ると同じ手提げ鞄を持って買い物している人が何人かいるから、エコバッグのように使い回しが推奨されているのかもしれない。
「バッグ代が500エンとパンが22個で1万4520エンです」
おお!結構イイお値段がする。
金貨を2枚カルトンに入れると、すぐにお釣りを渡してくれたので、買ったパンは収納庫に全部入れて店を出た。
あー!幸せな匂いだった!
ミーアもいつもよりうるさかった。興奮していたみたいだ。
草原に到着する時間は12時くらいだろう。
草原地帯に行くなら西門だから、南門に近いここからだと遠い。
領都には探索者ギルドだけ4箇所もある。
魔物を持ってきた時に各門の近くに探索者ギルドがあるから便利だ。
意外にも1番権力を持っているのは、門を出たすぐ近くに森が広がっている北門のギルドだ。
食肉や魔物素材をふんだんに提供できるから、1番儲かっているのが原因とか。
あと、魔物の溢れも北門が多い。偶に西門にも来るけど。
南門と東門の近くは安全だと認識されているので、地価が高いのだ。お父ちゃんとお母ちゃんが西の住宅街に居を構えたのもそこら辺の事情があるみたい。
お父ちゃんは探索者だったからね。通勤に便利と言う理由もありそうだ。
今、思うと、お父ちゃんの病気はAランクキュアポーションかSランクキュアポーションが必要だったのではないかと思う。ハルおばさんの旦那さんはBランクキュアポーションを作れるから、お父ちゃんは試したと思うのだ。家のお金も少なかったからね。
むん!私がハルおばさんの所にAランクとSランクのポーションを沢山卸す!一般人でも買えるようにするのが目的だ。
こんなふうに考えられるのも、収納鞄での収入で懐が潤っているからだ。
薬師ギルドにSランクポーションを2本卸して600万エンが大金で喜んでいたのが、もう昔のようだ。
庶民には職業・薬師の作る薬包が人気のようだから、安くても作る価値はある。
記憶を思い出して、よかったぁ。




