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世界の改変 1

「地上は創造神にとって優しくありません!試練ばかりを与えて!生まれた時から見ていましたが、我慢の限界です!」


 母神が怒り狂っていた。

 今までセーレより不幸な子供を何人も見てきたのに、セーレ贔屓がすぎる。


 父神が母神を抱きしめながら同意する。

 2神は創造神の事を我が子のように思っているから過保護なのだ。


「そうだね。でも、創造神が苦心して創った世界を歪められはしないよ。壊そうとするなら見過ごせないな」


 母神はその言葉で少し落ち着いた。

 そうだ、創造神の大切な世界は壊せない。


「世界のシステムを変えることは出来そうですか?いえ、聞かなかったことにしてください。私がシステムを変えてみせます」


 父神は母神を落ち着かせるように背中を撫でた。


「君が万能神だからといって、創造神が考えたシステムを勝手に弄ってはいけないよ」


「いいえ、大丈夫です!創造神が憤っていたような者達を奴隷にするシステムを構築します。終わったら、きっと私は少しの間、動けなくなるので、父神が創造神を見守っていてください。お願いします」


 父神は自分より力の強い妻を止める事は出来無い。


「創造神がまた引きこもる事をしてはいけないよ。それから母神も大事だ。無理をしないでくれよ」


「母は子の為に頑張れるのです。創造神が快適に地上で生きていける為に頑張りますよ!」


 父神は諦めのため息をついた。



 それから母神は地上時間での3日3晩、神力を使い続けた。


 母神を信仰する人は多い。

 人は母から生まれてくるのだ。

 だが、母神は、その信仰の力を使い果たす一歩前まで神力を行使した。

 創造神が行って来た『世界の改変』を眷属神たる母神の独断で行ったのだ。父神が見守っていなければ消滅していただろう。それでは創造神も他の神も悲しむ。


 母神は他の眷属神が成し得なかった世界の改変を終えた。


 そして、世界時間で一年の眠りに母神は落ちた。


 これから創造神を見守る神は父神と友神になった。

 時々、友神の妻の海神も見守った。

 海神になっただけあり、広くて深い心を持っているが、気性は穏やかな時もあれば荒れている時もある。本当に海のような神だ。


 父神は地上に神託をした。


【世界の改変を行った。体が黒いモヤに覆われ、光っている人物は重犯罪者で奴隷だ。直ちに捕まえなさい】


 地上の神官にとって『世界の改変』は聖書にも記載される大事件だ。

 その地の権力者と力を合わせて重犯罪者の奴隷を捕まえていった。


 子神達は一度悪戯をしようとしたので父神が遠ざけている。

 父神が地上に降臨したと知れば真似をしたがるだろう。

 子をポコポコ作ったのに後悔は無いが、子神は子神だなと思うのだった。


ーーーーーーーーーー


 セーレはぼんやりと目を覚ました。


 創造神に目覚めたのに、身体が重く感じる。

 この感覚は病気をした時以来だ。


 喉が渇いた。


 何故だか身体が膨張した後のように感じる。

 要は筋肉痛のようで、火傷をしたようで、骨折をしたような感じだ。


 実は父神がセーレの神力と同調して落ち着かせなければ、セーレの肉体は神力を抑えこめずに膨張して弾ける前だったのだ。

 危ない所を父神に助けてもらった自覚はない。


 セーレはそんな重症な身体を無理して起こすと、周りを見渡した。

 何かが足りない。


 それが何か思い出せずに、飲み物を創造して喉を潤した後に父母のベッドに横になった。


 そうだ!ミーアがいない!


 動きたくない身体をもう一度起こして、頭の中の地図でミーアを探すと、隣の家のリーバ家に居るのが分かったので、安心して横になった。


 私は病気になってしまったのだろうか?

 治癒の力を自分自身に行使すると、みるみる肉体が回復してきた。


 神力で肉体を痛めていたのであって、魂は傷ついていなかったので、創造神の力で身体が再生された。


 身軽になったので起き上がり、寝巻きから私服に着替えて隣家の鍵がダイニングの机の上に置いてあったので、家を出て、リーバ家の中に入った。


 すると、おばちゃんがセーレに気がついて、眉毛を下げて心配そうな顔をしながらセーレの近くに来てくれた。


「セーレちゃん!やっと起きたね!よかったよぉ。役場で倒れたんだって?覚えているかい?」


 役場で倒れたの?何があったっけ?


「ううん、覚えてない」


「治癒院でみてもらった方がいいかねぇ?ハルに来てもらったらセーレちゃんは寝ているだけだから、起きたらお師匠様の薬を飲むといいって言って帰って行ったよ。セーレちゃんが辛かったら、自分で作ったポーションでも飲んでみなよぅ」


 おばちゃんには心配をかけたようだ。身体はもう元気なんだけど、誤魔化す為に低ランクポーションでも飲むかな?


 椅子に座らせてもらって、おばちゃんが見守る中でポーションを飲んだ。んー?味がしないのも不思議だ。


「どうだい?良くなったかい?」


 体調は大丈夫だけど、心配してくれているおばちゃんを安心させるか。


「うん!すっかり良くなったよ!ハルおばさんは凄いね!」


 おばちゃんはホッとしたようだ。


「そうだよ。ハルはね鑑定を持っているからねぇ。病気になったらハルの出番だよ」


 うん、ハルおばさんが鑑定を持っているのは知っていた。


「お腹が空いたろう?3日も起きなかったからねぇ。雑炊がいいかねぇ。すぐに作れるし栄養があるしね」


 3日寝てたのか!危なかった。人は3日水分を摂らないと死ぬって聞いたことがある。

 あ、ミーアがよちよち歩きしている。可愛い。


 ミーアに吸い寄せられて抱っこしてしまう。

 ミーアが笑顔で顔を触ってくるから、私の回復を喜んでくれているみたいで嬉しくなっちゃう。あ、目は触らないで。


「ミーアちゃんは心配いらないよ。すっごく元気だったからね。旦那が可愛い可愛いって、うるさいくらいだったよ」


「ミーアのお世話をしてくれて、ありがとうございます。おもらしして汚してしまったんじゃないですか?」


「旦那が魔法が堪能だから大丈夫だよぉ。すぐに綺麗になるから」


「おじちゃんにお礼しないといけないですね」


 おばちゃんが軽やかに笑う。


「セーレちゃんの持って来てくれる果物でいいよぅ。旦那が美味しいって言ってたからね。どこで売ってるか、教えてくれる気になったかい?」


 普通に売ってないから、教えられない。


「内緒ですよ。私のお土産が活躍しなくなるじゃないですか?」


「あー、なんか固い喋り方して〜。普通に話しなよ」


 おばちゃんはいつも楽しそうだ。いつも元気で楽しそうなお母さんていいよね。子供の情操教育に良さそう。


「雑炊が出来たよ。あっつ熱だから、ゆっくり食べなね」


 大きな器に、たっぷりと雑炊をよそってくれる。


 ミーアを素足エリアに下ろしてから席につくと、美味しそうな匂いが漂う。

 身体が空腹を思い出したかのように「食べろ食べろ」と急かしてくるから、火傷をしそうになる。

 あれ?この体って火傷するかな?


「セーレちゃんが倒れた後かな?役場で犯罪があったらしくて、役場の人が全員捕まっちゃったんだよぉ。それで、役場が今閉鎖されちゃってねぇ、領主館に緊急窓口を作ったって話だよ。一部の人が困ってるって言ってたねぇ。怖いねぇ。近くで犯罪なんて」


 へぇー、役場で犯罪か。犯人は余計な勇気があるね。

 ん?なんか引っかかるな?なんだろう?


「もうすぐ、ヒュリカとミュンが帰ってくるよ。セーレちゃんの夕食はどうしようかねぇ。今、夕方なんだよ」


「寝たきりから回復したばっかなんで、これ、雑炊が夕食で充分ですよ。ありがとうございます」


 のんびりと雑炊をうまうまと食べていると、音がして玄関が開いた。見てみるとミュンちゃんだった。


「ミュン、おかえり」


「ミュンちゃん、おかえりー」


ミュンちゃんは険しい顔をしていたけど、素足エリアに行くと座り込んでしまった。

 おばちゃんが心配そうに聞く。


「なんだい。今日は何かあったのかい?」


「お母ちゃん。今日出かけてないの?」


「うん?いつも通り、午前中に買い物に行ったよ」


「じゃあ、あれは午後からか」とミュンちゃんが呟いた。


「あのね、体が黒くて光っている人が何人かいたの。気持ち悪くて、速足で帰って来たんだ」


「そうかい。変な人が出たんだなぇ。明日は学校、休むかい?」


 ミュンちゃんは悩んだ後に「明日決める」と言って、素足エリアで横になった。ミーアがいい障害物が出来たと、寄っている。子供って何故か登るのが好きだよね。


 あ、お姉ちゃんも帰って来た。はぁはぁ言ってるから、走って帰って来たのかな?


「お姉ちゃん、おかえり」


「ヒュリカ、おかえり。変な人がいたのかい?」


 お姉ちゃんは汗をぬぐって答えた。


「うん、変な黒くて光ってる人がいた。怖かったー」


 お姉ちゃんもだ。ミュンちゃんと同じ事を言っている。


 それから、おばちゃんが料理を作って、私以外の人が夕食を食べて、ミーアの着替えやオムツを手に自宅にミーアと帰った。


 黒くて光っている人って、なんだろね?

セーレは意識が無かったので、父神の神託は聞いていません。

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