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ニードル魔道具店で商談 2

 待っていると、出て行った扉からカルトンを持ってシュンフェさんが出て来た。


「お待たせしました。アダマンタイト貨4枚とミスリル貨5枚です。お確かめください。こちらが買取領収書になります」


 お金を確かめる。

 初めて見る硬貨だから、ちゃんと鑑定するよ。

 ふむ、本物だ。

 アダマンタイト。伝説の金属。これが1億エンか。

 ミスリル貨。こちらもファンタジー金属。地脈が太い所でしか金属が変質しない。1枚1000万エンか。

 4枚と5枚。4億5000万エン。


 ふあああーーー!!


 いけない。興奮してしまった。


 あっ、領収書を確認!ヨシ!


「ありました。ありがとうございます」


「はい、こちらこそ当店に持ち込んでいただき、ありがとうございます。

 さて、本題に移らせてもらいますが、当店と専属卸売り契約を結びませんか?」


「専属卸売り契約?」


 私がぽけっとしていると、シュンフェさんが話し始めた。


「正直に申し上げますと、キャンベル様がお作りになった収納魔道具を他店に売らずに当店だけに卸していただける契約となります。他にも当店が希望する仕様をお伝えしまして、キャンベル様にそのように作っていただくという、売れる製品のアドバイスが出来ます」


 んー、専属卸先ができるって事は私が作った収納鞄を買取ってくれるんだよね。

 あと、売れる製品のアドバイスは嬉しい。プロからの意見だからね。

 だけど、ミーアが大きくなったら収納鞄をプレゼント出来ないって事?


「誰かに収納鞄をプレゼントするのは出来ますか?」


「他の店に売っていませんので大丈夫です」


 あとは、あ、ミュンちゃんが成人したらプレゼントするかもしれない。プレゼントだからいいよね。それなら大丈夫かな。


「よろしくお願いします」


「では、契約書の作成をして参ります。契約内容に希望などございますか?」


「え、えーと、いくつ、たくさんの収納鞄を作っても買い取ってくれますか?」


「今、100個の収納鞄をお持ちいただいても購入させていただきます」


 100個!!!

 アダマンタイト貨4枚とミスリル5枚の買取でしょ?

 450億エン!!!

 ひゃ〜〜〜!!!大金持ちだ!もう働かなくていい!


「納得しました」


「よろしゅうごさいます。それでは行って参ります」


 シュンフェさんは奥の扉から出て行った。

 収納鞄、置いてあるけどいいのかな?


 今のうちに水分補給しよう。


 おんぶ紐をほどいてミーアを見ると、寝ていたけど、起こして水分補給させる。機嫌が悪そうだ。無理矢理起こしたからかな?

 おおー、飲む飲む。喉乾くよねー。

 おかわりを要求されたので味変してみる。今度はちょっとだけ甘酸っぱいよ。

 おおー、これもよく飲む。まあ、コップが小さいからね。


 飲み物を飲み終わったミーアを膝に乗せて、魔法瓶に氷入りのミックスジュースを出して飲む。


 くはーーー!美味しい!氷をミキサーで砕いているのがいいんだよ。


 ミーアが魔法瓶に興味があるみたいだから遠ざける。ミーアにはまだ早いよ。

 手を魔法瓶に伸ばしてくるミーアを宥めながらミックスジュースを飲んでいると、時間が結構経っていたようだ。

 シュンフェさんが紙を待ってやって来た。


「お待たせしました。内容をご確認ください」


 ミーアが契約書をやぶいたらいけないので、急いでミーアをおんぶ紐で私の背中に固定する。

 それから2枚あるうちの1枚を取って専属卸売り契約書を読む。


 うん、さっき説明されたことが書いてある。


 うん?こういうのって、雇用契約の一種みたいな物だよね?会社と個人事業者との契約。期間とか無いのかな?


「すみません。契約期間とかは無いのですか?」


 シュンフェさんは一瞬、動きを止めてから話し出した。


「専属卸売り契約は双方が契約を破棄したいと言い出さない限り契約期間が続きます。……ご不満でしょうか?」


 う〜ん、なんか喉に小骨が刺さったみたいだけど、なんだろうか?

 ゔー、わかんない!今はどうでもいいか。


 あっ!そうそう、薬の件で私は学んだのだ。一般販売価格を聞かないといけない。


「今回卸した収納鞄ですが、いくらで店頭販売されるのでしょうか?」


 シュンフェさんは少し時間を置いた後に答えてくれた。


「今回は初回のお取引なので、店頭販売価格の5割を買取額とさせていただきました。次回、収納鞄を私共の希望を聞いてくれて納品してくださるなら、6割取り引きをさせていただきます」


 卸売り価格が5割。

 まあ、普通かな?この店を仲介して販売するし、更に商人が仕入れの為に購入した場合にはもっと高くなるんだろうから、多分適正価格なんだろう。地球での卸売りは確か、4割から7割の間だったはずだから、おかしな金額ではない。


 契約しちゃってもいいかな。


 ペンを取って、インクをつけてから私の名前を書いていく。


 フルネームを書いた後に、契約書が淡く光った。魔法契約書だったのかな?


 シュンフェさんが2枚あった契約書を確認して、1枚を私に差し出して来た。多分私用の控えだろう。

 もう一度内容確認をしてから収納庫にしまう。


「それでは今から契約内容にもあった通り『販売が伸びる為のアドバイス』をさせていだきます。よろしいでしょうか?」


 背筋を正して勉強する気持ちで挑む。


「よろしくお願いします」


 シュンフェさんは契約が終わったからなのか、柔らかい表情をして、机の上に置いてある収納鞄を隅に置き、まっさらな紙を取り出してサラサラと書き出した。


 なになに?あ、わたしが収納鞄につけた機能か。


「まず初めに『魔物・動物解体機能』ですが、これは素晴らしい付与です。今後納品していただく全ての収納鞄に付けてください。

 2つ目に『リストアップ』ですが、この付与も人が作れる数は少ないので是非付けてください。

 3つ目に『時間停止』『収納鞄に触って入れたい物を認識すると鞄より大きい物も入れられる』『万引き出来ない』『生き物は入れられない』は収納鞄には自動的に付与されているので、そのままで。

 4つ目に『重量は鞄の重みのみ』と『防水』。

 何故、この効果が初心者のあなたに付けれたのか不思議ですが、有りな効果です。収納鞄の値段に多大な影響を与えます。

 5つ目に『収納鞄の劣化防止』。これは素晴らしいです。収納鞄の価値を大いに上げてくれます。こちらも是非付けてください。

 6つ目に容量ですが『一軒家が入るくらい』の大きさだと漠然としています。

 数学の面積計算やその大きさをイメージして容量を指定することは可能ですか?」


 あー、面積計算とか大の苦手。頭が爆発しそうになる。

 それでどうやってこの世界を創造したかって?教えてしんぜよう!それは『能力任せ』だ!!力が膨大だから「こんな物創りたいなぁ」と創造するだけで瞬時に創れたんだ!創造神の能力は凄いのだ!


「あの、大の苦手です」


「分かりました。では、容量は公共の建物を基準として作成してください。多分今回の『一軒家が入るくらい』はあなたの家を基準として作られたのでしょうが、収納鞄を購入する人は富裕層が圧倒的に多いです。富裕層の一軒家の容量と勘違いされる恐れがあるのでやめましょう。「教会の待合室ぐらい」とか「どこかのギルドくらい」の大きさなら大抵は何処の街にもあるので想像しやすいので、今後収納鞄を作られる時は「公共の建物を基準とする」ようにいたしましょう。今回の鞄は「庶民街の一般の建物」だと説明して販売しますが、これは収納鞄を作られたキャンベル様の身バレに繋がる恐れもあります。容量はキャンベル様の魔力と相談して作られると良いでしょう」


 おおー、一気に言われた。

 そうか、家一軒て、いろんな大きさがあるもんな。確かに漠然としている。教会なら何処にでも同じ大きさで建設されているから想像しやすいかもしれない。他の公共の建物は想像出来ないので却下だ。


 教会は私(創造神)のお家だからね!思い出すのは簡単なのですよ。それにいろんな部屋の大きさがあるからね。


「それと、今回は普段使い出来る鞄を元に収納鞄を作られたようですが、お客様にはいろんな鞄の需要がございます。100万エンの目立たない鞄が欲しい方もいらっしゃれば、1億エンの鞄を欲しい方もいらっしゃいます。『リザルト革店』で鞄を購入された選択はとても良いです。信用のある商会ですからね。今後とも『リザルト革店』で鞄を購入するのをおすすめします」


 ほうほう、安い鞄から高い鞄まで需要があるのか。でも最低価格は100万エンと。収納鞄は高価だから、そこそこの見栄えは必要なのかもしれない。


「今すぐと言うわけではありませんが、この鞄と同じくらいの値段の物、400万エンから600万エンの収納鞄を30個は納品していただきたいですね。肩掛け鞄は良い選択です。いざという時には探索者や商人は収納鞄だけを手に持って逃げなければならない時もございます。このデザインなら万人受けするのでお買い上げされやすいでしょう」


 ふむふむ、勉強になりますなぁ。

 でもあの革屋さんに同じようなデザインは少なかった気がするなぁ。


「あのぅ、鞄を購入した時に同じ様なデザインの物は少なかったのですが、どうすればいいですか?」


 シュンフェさんは当たり前のように答えてくれた。


「当然です『リザルト革店』は大店ですからね。展示してある品と同じような物が欲しいと言えば在庫がありますので出して来てくれますよ。店内のスペースは限られているので、大店は商品が無くならないように常に在庫を抱えていますから」


 ほう!目から鱗だ。そんな常識は知らなかった。地上は奥が深いなぁ。


 お昼の時間も近かったので、シュンフェさんが要望をまとめてくれた紙を参考にして、次の収納鞄を作りますと約束しておばちゃん家に帰った。

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