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教会に行こう!

 家の外に出て鍵を閉めていると、物音がしたのか隣の家のお姉ちゃんがひょいと窓から顔を出した。


「セーレちゃん!どこ行くの?子供だけだと迷子になるよ?」


 隣の家のお姉ちゃんは14歳。もうすぐで15歳になって大人の仲間入りをするから大人っぽくて頼りになる。私もよく遊んでもらった。


「お姉ちゃん!大丈夫だよ!今日は10歳の誕生日だから教会に職業授与の儀式に行くんだ!」


 お姉ちゃんの顔は心配そうだ。今日、お母ちゃんの葬儀が終わったばかりだからだろう。あ、窓から顔が引っ込んだ。さて、教会に行くかな。


 もう一度、ミーアをちゃんと背負ってるか確認してから歩き出す。


「セーレちゃん!待って!私も一緒に行くから!」


 振り返ると通り過ぎた家からお姉ちゃんが出て来た。一緒に教会まで行ってくれるらしい。


 横に来て手を出してくれたので自然とお姉ちゃんと手を繋ぐ。お姉ちゃんは私と出かける時はいつも手を繋いでくれるんだ。


 私は笑顔でお姉ちゃんを見上げて「ありがとう、お姉ちゃん!」と嬉しくて笑いかけるとお姉ちゃんがミーアの心配をしてくれた。「ミーアちゃん、重く無い?」だって。10歳の小さい私がおんぶしているから心配してくれているのだろう。


「ミーアは軽いよ!おんぶしてないみたい!」


 お姉ちゃんは何故か泣き笑いの表情になった。あ、哀れまれてるのかな?お母ちゃんの葬儀にはお姉ちゃん家族全員で参加してくれたから嬉しいくらいなんだけどな。

 受肉してるけど創造神に戻ったから目は腫れてないはずなんだけどな。身体が丈夫になった気がする。


 お姉ちゃんが無理して明るい声を出してくれる。


「セーレちゃん!そのワンピース黄色で可愛いね!セーレちゃんの髪色と合っていてとても綺麗だよ!」


 私の髪の毛はふわっとした淡い金髪だ。ずっと黒髪だったからこれは嬉しい。外国の人たちは日本人の黒髪黒目が神秘的で美しいって言うらしいけどね。

 あ、ちなみに目はピンク色です。はい、創造神になった時にはっちゃけました。いろんな髪色と目の人がいます。両親から遺伝はするけどね。ミーアはふわっとした赤髪にピンクの目で可愛いんだ。お母ちゃんの色を受け継いだね。


 差別はね、無くそうとしても人間だから地域ごとにあるんだよね。

 よその国に行けば赤い髪は血のようだ、とか言われたり、黒髪は縁起が悪いとか言われたりする。


 私は天界にいた時は神々の髪の色を地上に知らせたりしなかった。差別をこれ以上助長したくなかったし、神聖な髪色とかでの差別もされたくなかったから。


 お姉ちゃんとお話ししながら教会まで歩いて行く。子供の足だと40分くらいで着くかな?教会は一等地に立っているから庶民街からは遠いんだ。仕方がないけど。


 あ、私が住んでいる場所はスペラス王国のインジード領の領都アスペル。領都だから賑わいが凄いんだ!治安は良い方だと思う。教会の力・神の力が強くて大きな犯罪が起きにくいから。もちろん悪いと分かっていても犯罪する人はするけどね。領都はぐるりと高い壁に囲まれてるから街道に出たり入ったりする時に魔道具で犯罪者【奴隷】か調べれるようになってるから、そこさえ通らなければ犯罪をしていても滅多にバレない。兵士の詰め所とかにも魔道具があって調べられるらしいけど。あと、領主館にも。


 教会は領主館の隣にある。

 教会の隣には付属の孤児院があって、孤児だからって蔑まれる事は少ない。よくお母ちゃんに「ここでお母ちゃんとお父ちゃんは育ったんだよ」と言われて一等地で育ったお父ちゃんとお母ちゃんが誇らしかったくらいだ。

 でも、お墓は領都の外の共同墓地なんだけどね。お母ちゃんが燃やされて今日は骨を拾った。家族が出来る最後の事だから儀式みたいに血縁者がするって決まってる。子供でも例外じゃない。記憶が戻る前だったからずっと泣いてたけど。ミーアはお姉ちゃんのお父さん・おじちゃんがずっと抱っこしてくれていた。共同墓地の穴に放り込んで終わりだったけど、お父ちゃんと一緒になれただろうからそれでいいんだ。貴族の墓地は別にあるらしいけど。


 ミーアも重く無いし、お姉ちゃんとお話ししながら歩いていたら、もう教会に着いた。早い早い。


 入り口に聖騎士が立っているけど格好いい。

 門を潜って教会の前庭を歩きながら大きな白い建物を見上げる。教会って領主館と同じくらい大きいんだよ。


 教会の入り口には御用聞の神官がいる。丁寧に挨拶してくれる。


「いらっしゃいませ。御用でしょうか?」


 お祈りだけの時は挨拶して素通りでいいけど、今日は職業授与の儀式があるから用件を言ってお布施を払わないといけない。

 ちなみに職業授与の儀式のお布施は10万エンだ。金貨10枚ね。大体の人は一生に一度だから値段が高い。たまに職業を変えたい人がお布施を払って2回3回と受けてるらしいけど、ほとんどの人は生涯一度きりだ。


 お姉ちゃんが用件を言ってくれる。


「この子の職業授与の儀式に来たのですがお願いできますか?」


 私はポケットから金貨10枚を取り出して神官さんに渡す。お父ちゃんとお母ちゃんが私の為に稼いでくれた大切なお金だ。

 私が支払ったのに驚いたような顔をしたけれど「司祭様にお伺いして参ります」と奥に歩いていったので、お姉ちゃんと隅に寄って神官さんが帰ってくるのを待つ。

 その間にもいろんな人達が教会に来たり帰ったりする。見ているだけでいろいろな職業の人がいて楽しい。あ、私、当然ですが創造神なのでこの世界の人が出来る事は全て出来ます。今は人物鑑定してました。

 お役人さんとかは職業【先生】とかの人がなってる。人に教えられるくらい頭が良いってことね。本当に教師の人もいるけれど。研究職の人とかもいる。

 やましい心を持つ人は教会や領主館や役場を避けるから基本的に平和だ。日本より治安が良いくらい。兵士の詰め所なんてもっと避けられるから、詰め所から近い家の家賃は高い。安全だからね。命が買えると思うと安いと感じる人もいるだろう。


 あ、神官さんが帰って来た。オタク心が疼く格好してるんだよな。


 教会の階級制度を神託したのは私です!オタクは知識が豊富です。えっへん!というか、神になってから記憶力が良くなったから意識して記憶を消去しない限りは忘れない。


 ちなみに日本語は人類が誕生した頃に使ってたから、今じゃ神聖文字として研究されている。


 ワタシワルクナイ。


「司祭様が今から儀式をしてくださるそうです。ご案内します」


 神官さんは物腰柔らかく案内してくれる。

 一般区画から奥に入って創造神像の置かれている近くまで行く。

 創造神像、私に似てなくて髪の豊かなぼんきゅぼん!さんの美人さんです。女神とは伝わってるけど。自分で見てて恥ずかしくなる。きっと人々の夢と希望が胸と尻につまってるのさ!

 でも女神が主神だから男女平等の国がほとんどだ。体格が小さくて力が弱くても魔法を使えば大男だって女性が倒せちゃう世の中だ。見かけで人を判断できないんだぜ。キラン!


 大きい神像の下には小部屋がある。

 神官さんが入り口を開けてくれると司祭様が優しい顔で迎えてくれた。


「あ、赤ん坊は降ろして下さいね。儀式は1人でお願いします」


 私が困ってるとお姉ちゃんが付き添いの人が座る席から立ってミーアを降ろすのを手伝ってくれる。

 座ってじゃないと1人でおんぶ紐をとけなかったからミーアを掴んでいてくれて助かる。


 ミーアを抱っこしてお姉ちゃんが「頑張って!」と声を掛けてくれる。

 うん。もう結果がわかってるけど、今日から準成人になるからちょっと大人になった気分だ。10歳になったら職業訓練が出来たりするから大切な節目。お姉ちゃんとミーアがいてくれて良かったかも。ちょっと嬉しい気持ちが湧き上がる。


 神官さんに促されて個室の中に入ると神官さんに扉を閉められた。


 司祭様が職業授与の儀式の説明をしてくれる。


「まずは、今日めでたき日を迎えられておめでとう。

 さて、職業授与の儀式だが、普通の人で1〜5つぐらいに頭に浮かぶそうだ。それ以上多く浮かぶ場合もあるけれど慌てなくていいからね。それは君に才能がある証拠だから。将来の職業に関する事だから慎重に選んでくれて構わないよ。焦って選ぶと違う職業に変えたい時はまたお布施をもらわなければいけないから、よく考えて選ぶようにしてね。今から儀式を始めるけど質問はあるかな?」


 司祭様が優しくて感動してしまう。今までのセーレの人生史上最も偉い人だ。天界から見ていた人を近くで見るのも感慨深い。


「いいえ、ありません。よろしくお願いします」


 司祭様が私を落ち着けるようにニコッと笑ってから、創造神像の方を向いて祈りの言葉を強い声を響かせて唱えだす。


「天におわします創造神と眷属の神々よ。神々の御子が無事10の歳を迎えました事此処にご報告致します。10の歳を迎えた寿ぎに職業への道を開かれること此処に願い奉ります。

 どうか10の歳を迎える神々が御子に可能性を示しましませ」


 司祭様が振り返って手に持つ神具の鈴をシャンと鳴らすと、祈っていた私の頭に職業が浮かんで来た。

 創造神本人でも今は受肉してるから浮かんだのかな?


 私は一つしかない創造神の職業を選ぶ。

 選ばなかったらどうなるか興味があるけど、そんな意地悪な事しないからね。


 私と司祭様の間にあった水晶が光を放つと後ろから歓声が上がったので目を開くと、なんだか教会が明るかった。水晶だけが光ってるんじゃないらしい。


 驚いて光の元を探すと、神々の像が光っていた!

 えっ?私こんな仕様にしたっけ?


 ぽけっとしていると司祭様が神像の側にある扉を開けて左右を見渡してから跪き神像を仰見て祈り出したので、急いで私も真似をする。


『これぐらいの意趣返しはしてもいいですよね』


 頭の中で母神の声と子神達の笑い声が聞こえた!

 この〜!イタズラしたな!


『母神!今すぐ辞めて!予想外の未来になっちゃうから!』


『転生の渦へあなたに飛び込まれた時の私達の焦りを受け止めてください』


 創造神が悪いんだー


 と子神達の声が聞こえてくる。


 2度としないから辞めて〜!!!

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