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おばちゃんは優しいよ

 次の日の朝は、苺を家にある1番大きなお皿に盛って、おばちゃん家を訪ねた。


「おばちゃん、あーけーてー!」


 足音が聞こえてきた。扉の前から避難すると、バンッ!と勢いよく扉が開いた。


「どうしたんだい!……って、両手が塞がってるだけかい。いらっしゃい。入りなよ」


「ありがとう。おばちゃん」


 おばちゃんは私が玄関を開ける力もないと心配してくれたみたいだ。合鍵を貰ってるから勝手に入れるからね。

 おばちゃんは毎日元気がいいよ。


 家の中に入って、慎重に山盛りいちごを机の上に置いてから、ミーアをおんぶから下ろす。


「待ってなね。今朝食をあっためるからね」


「うん、ありがとう」


 自由に幼児歩きを始めたミーアについて歩く。危険が無いかいつも見ててあげないとね。


 にぱぁと振り返る事があるから転けないように注意すると、おばちゃんが「食べなよー」と声を掛けてくれる。

 魔道具が揃っているお宅は違いますな。

 おばちゃん家にあるのは正規の家に付けるコンロだけど、私の家にあるのは携帯コンロが2つある。亡くなったお父ちゃんが使っていたコンロと、お金が無いから安い携帯コンロを家用に買った物だ。お父ちゃんもお母ちゃんも孤児だったからね。お金があんまり無かったみたい。


 ミーアのお世話をおばちゃんにお願いして、椅子に座って朝食をいただく。

 お、今日は雑炊だ。キノコが美味しいんだよね。


 この世界では、麦と米は各家庭の好みに合わせて食べている。

 育て安く私が創造したけれど、植物の何種類もある病気は無くせなくて、強いけど弱点のある植物が多い世界になってしまった。

 そのせいで、植物が病気になると、同じ場所に埋まっている同じ種類の物は病気がじわじわと広がり全滅するので、周りに病気が広がらないように焼却処分が今では徹底されている。

 まあ、単一穀物を育てると飢饉で食糧不足になり人が死ぬので、リスク分担で麦と米の両方を作るのが推奨され、どっちも美味しいとのことで食べられている。

 米は腹持ちが良い。

 パンは持ち運びが便利だ。

 なんて言われている。

 もちろんだが、他の種類の穀物も食べられているが、大多数の人が食べるのが米と麦だ。

 この辺りは地球と変わらないね。


 探索者の長期遠征とかだと、精米が持って行かれる。パンが焼けないからね。

 でも、栄養が偏るから現地で採取して肉や食べられる草などを入れてごった煮にして食べているようだ。醤油の実と味噌の実は持ち運びに便利だし、米に合う。

 パンも恋しくなる人には時間停止の収納庫を持っている人が入れて行くらしい。パンは水分を抜かないと腐るからね。


 私が食いしん坊だから食生活は良いよ!美味しい物が沢山ある。


 そして初めに戻り、キノコの出番だ。

 地球で大自然の中で暮らした時に悔しかったのがキノコだ。

 何故?毒キノコばかりなのか?美味しそうなのに猛毒を持っているんだと憤った事もある。山ってマジで何処にでも毒キノコが生えているんだよ。じめっとする所にキノコ有りだね。


 なので!私が作ったこの世界に毒キノコなんていりません!食べれるキノコだけ存在していればいいのです!繁殖力が強ければなお良いじゃありませんか!!


 そう、この世界ではキノコは森の珍味だ。いろんな風味で食卓を豊かにしてくれて比較的安価で手に入る。

 探索者が帰りに手が空いてたらひょいひょいっと小遣いがわりに持って来るし、繁殖力が強いので飢饉の見方です。

 ただし、熱を通したり、天日干しすると更に美味しいでしょう。ってのは人類もわかっているから、ちょっと一手間かけて食べられています。栄養もあるしね。幼児さんも安心して食べられます。滋味のあるお味です。


 はー、朝からほっこりとする、汁まで美味しい雑炊をいただいて満足です。卵が入ってるのもグッドです。卵好き。


 さて、ミーアを構おうかと思ったら、おばちゃんが苺に目がいってる。

 食べ方を教えましょうかね。


 ミーアは椅子から下ろして、おばちゃんと2人でいちごを1つずつ持って軽く洗ってヘタを取り、そのまま食べる。


 ん〜!贅沢なお味ですこと。

 おばちゃんも目がキラキラしてる。


 さて、ミーアのお腹を落ち着けましょうか。


 ミーアを座らせたまま、手と足をむにむにしていると、洗い物が終わったおばちゃんが素足スペースにやってきた。


「セーレちゃん、昨日の話の続きなんだがね、旦那に聞いてみたら、やっぱりギルドには得と損があるらしくてね、ギルドランクはAかBに上げちゃって、得な部分だけ享受して利用するのが良いらしいよ。困った時の後ろ盾になるからギルドからは抜けない方が良いらしい。

 セーレちゃんは薬師ギルドでお得な情報とか、教えてもらっているかい?」


「んー、薬瓶とか薬紙とかは会員価格で売ってくれます。あと、失敗したポーションも栄養剤とかになるから売れるし、受付のお姉さんは優しかったです。ギルドランクも上げると特典があると言っていました。

 あ、あと、Bランク以上のポーションは製作者隠蔽を無料でしてくれるそうです。あ、ギルドに卸すならと言う条件だったかも」


 おばちゃんはちょっと悩んだ後に提案してきた。


「おばちゃん、午前中は用事があるから、午後からおばちゃんおすすめの薬屋に行ってみないかい?ポーションを高く買い取ってくれるように交渉するよ」


「え!いいの?おばちゃん?」


「ああ、いいさ!そこの奥さんと友達だからね!有利な条件を引っ張り出すよ!」


 満面の笑みで言ってくれた。


 私は感動でジーンとしていた。ちょっと鼻が詰まってしまった。


「じゃあ、午前中はお散歩して来るね。午後からよろしくお願いします」


「水臭いねぇ。普通に喋りな!」


 ふへへっと笑う。

 支えてくれる人が居るっていいなぁ。


 お腹も落ち着いて来たので、ミーアをおんぶ紐で背中に、固定してから立ち上がり、おばちゃんの家から出た。

 もうすぐ9時だからお店が開いているはず。


 ゆっくりと人と馬車と台車が動く街を歩いていく。

 また、草原にミーアを散歩に連れて行きたいなぁ。


 子供の足の短さで、沢山の人に抜かされながら中心部近くに歩いて行った。

 のんびりと生きるのも贅沢な気がして良いのだが。


 そういや、今度薬師ギルドに行ったらお姉さんの心を読んで見ようかな。ピンポイントに記憶を読むのも良いけど。あんな優しいお姉さんに騙されるようじゃ人間不信になりそうだからね。


 今度からは失敗しないぞ。読心を使っちゃうからね!


 この間、来た魔道具屋さんに来ました。

 そうです。収納鞄を売るためです。交渉頑張るぞ!


 名前は『ニードル魔道具店』か。


 扉を開けて中に入ってお兄さんを探すと、知らない店員さんがいた。

 えーと、能力を知られるのは最低限の人がいいな。


「すみません。シュンフェさんに会いに来たのですが」


 店員さんは何故か気の毒そうな顔で見て来た。


「すまんなぁ、お嬢ちゃん。シュンフェさんはあれでも結婚して成人した子供がいるんだよ。別の男の人を探しなよ」


 はーっ!?何か凄い誤解をされた。

 シュンフェさんはモテるのか?そうだね、エルフだからモテるよね。


「あの、そういうお話しではなくて、仕事のお話をしに来ました。個人取り引きです」


 中年に差しかかろうとしている男性店員さんが驚いたような顔をした。


「本当かい!?いや、ごめんね。あの人、女の人をよく引っ掛けてくるから。誤解しちゃったよ。

 ちょっと待っててね。お嬢ちゃんの名前を教えてもらっていいかな?」


「セーレ・キャンベルです」


「セーレ・キャンベルさんね。待っててね」


 店内に誰も居なくなったんだけど、大丈夫か?


 ジーッと店内を見ていると違和感に気がついた。

 防犯の魔道具が作動している。へー、こんなのもあるんだ。

 店舗に組み込まれている魔道具を見ていると、男性店員さんが帰って来た。


「お嬢ちゃん、奥においでよ。商談してくれるってさ」


「あ、ありがとうございます」


 カウンターを開けてくれたので中に入り、男性店員さんについて行く。

 へー、ちゃんとした内装だ。店の裏側って汚いイメージがあった。


「この部屋が商談室だ。大型魔道具の持ち込みもあるから中は広くなってるけど、落ち着きなよ。

 ジェーフです!入りますよ!」


 部屋の中からベルの音がした。綺麗な音。


「さ、入って。お嬢ちゃんの商談だから、私は入れないんだ」


「ありがとうございました」


 さあ、今から商談だ!

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