収納鞄作り スクロールって何?奴隷って?
よしっ!と気合いが入ったけど、午前中はおばちゃんも洗濯と買い物で忙しいから、午後からミーアを預かってもらおうかな。
「おばちゃん。お昼過ぎからミーアを預かってもらえますか?」
そっと金貨を差し出す。
子守のお金だ。
「もう!もう!水臭いね!お金はいらないよ。午後からはミーアちゃんを任せておきな!用事があるんだろう?」
「うん、そうなの。ありがとう、おばちゃん」
「いいよ」と優しく言ってくれる。本当に子供好きなんだなぁ。人が良すぎておばちゃん騙されちゃうぞ。
食休みも済んだのでミーアをおんぶして自宅に帰ると、寝室に入り、ミーアを下ろして裸足にさせる。ここは土足禁止だからね。
あとはミーアに土踏まずが上手く出来るように素足で行動させる。幼稚園で裸足で走らせて土踏まずを作ると聞いたことがあるけど、小さな子供は何歳で土踏まずを作れるのかな?
口周りが汚いミーアを浄化してから、音のなるおもちゃを創造して手渡すと、元気に振り回すので、キャッキャっと喜んでいる。
私はベッドの上に上がって昨日買った鞄を取り出して、う〜ん、と考える。
収納鞄は2通りの作り方がある。
1つは、魔道具師が職業魔法で魔力の量や魔力操作に対して空間の広さや能力を固定する方法だ。
もう1つは、魔術師が魔法陣を刻んで、その魔法陣の意味で収納機能を作る方法だ。
魔術師とは基本的に、魔法陣を覚えてそれを使い、スクロールを作ったり、魔道具を作ったり、魔法陣の文字を解読し研究して新しい魔法陣を作るのを生業にしている。
少し魔道具師に似ているかな?
この人達は魔法師ギルドに登録している。
魔法師ギルドは魔法使いが登録したり、探索者ギルドと掛け持ちをしたり、魔術師が登録している。
ようは、魔法に関する事なら魔法師ギルドだ。情報の売り買いや魔道具ギルドとの協力、仕事の斡旋などをしている。
スクロールとは専用の魔法紙に魔法陣が書かれていて、魔力を流すと魔法が使える物だ。探索者向けの商品が多いが、今は本型の攻撃魔法本が値段が高くても、持ち運びが楽なので人気だ。魔法陣が汚れたり、ボロボロにならない限り使えるが、購入者は魔法誓約書を書かされて『人に向かって魔法を撃たない』事を契約させられる。違反は契約に縛られて出来ないようにされる為、攻撃魔法本とスクロールは人に向かって使えない。普通の魔法は人に向かって使えるので、犯罪者を捕まえる時に役立つので、魔法使いの職業価値は落ちない。
魔法使いは基本的に無詠唱なので、使う魔法のイメージが大切だ。専門学校魔法科で習う者もいるが、富裕層は引退間近か引退したベテラン魔法使いを雇って、訓練場で本場の魔法をマンツーマンで教えてくれる。まあ、その分、高い家庭教師代を払う事になるが、この世界は習得を頑張れば全ての魔法や新しい魔法が使えるようになる。秘匿魔法を教えてもらいたい魔法使いが多いので『スクロール』や『攻撃魔法本』の需要はあるが、開くための一手間と使うコツがあるので、魔法使い需要はある。
魔術師は一流になれば、紙だけでなく、硬い金属に魔法陣を刻む事も出来るので重宝される。
魔法使いは、付与魔法を使えるようになれば同様の事が出来るので、荒事が好きでは無い魔法使いが覚える傾向にある。
防御力を上げられたり、攻撃力を増したり、自動修復機能をつけれたり、浄化付与など、便利な機能がつけられるが、代金は高いので、大体は付与された既製品や魔法陣が刻印された既製品を買う方が安くすむ。オーダーメイドは高いのだ。富裕層や上位探索者や上級兵士や騎士しかオーダーメイドは出来ない。技術の安売りはしないのである。
この世界は努力するほど、強くなり儲かる仕組みになっている。【努力は裏切らない】世界であるからして、努力をしない層は自業自得で貧乏なのが当たり前だ。
生活保護など無いので、子供は孤児院に保護されたり、大人でもランクを上げれば所属ギルドに借金出来る。もちろん、保証人はいるが、信用度が高いと各ギルド長の判断で、保証人は要らない場合もある。
が、借金を返せない額まで借りてしまったり、働けなくなれば、強制・自主的に借金奴隷となり、買われた額の2倍の金額を返済しなければ死ぬまで借金奴隷だ。
中には年老いて働けなくなり、自主的に知識を売ろうと借金奴隷になって面倒をみてもらいに行く人もいるくらいだ。その場合は生い先短いので安く買い叩かれるが、買い手が生活の保証はしてくれる。
奴隷商は犯罪奴隷も扱う関係で大体は国営である。理由は犯罪者を取り扱うのと、単純に儲かるからだ。
だから、奴隷商には国の役人が1人は必ずいる。監視員を兼ねているので、現役引退した騎士や兵士が派遣される。
【禁忌魔法】に【隷属魔法】があるが、犯罪奴隷に使うのは神からのお許しがあるので、職業『奴隷』にはこの魔法を使うのが許されている。
『借金奴隷』の場合は隷属はされないが、購入者の意向に逆らったり、その要求が法を侵さなければ従わなくてはならない。
国は【禁忌魔法】が正しく使われているかも監視している。
奴隷商は国営だけあって、役人並みに給料が良いので、人の世話が嫌いじゃない人には人気の職業だ。
この世界の人は『奴隷』に拒否反応はない。買った所で、真面目に働からない奴隷は返品出来るので、下位使用人という扱いなのだ。返品の理由に金銭の損失が認められれば、賠償金も支払われるので、下手に平民の使えない人を雇うより信用がおけると考える人もいる。
需要はいつでもあるのだ。
まあ、話は大分それたが、セーレは創造神なので『創造』に関することが得意だ。世界を創った主神でもあるので、基本的になんでも出来るが。
なので、魔道具師の収納鞄を作る方法で機能と広さを創造する。魔力と神力の扱いも神時代に嫌というほど使用しているので、収納鞄を作るぐらいはホーンラビットを殺すぐらい簡単である。
ただ、深く考えるのが苦手で失敗もするのだが。
うーん、魔物・動物解体機能はいるよね。時間停止、リストアップ、収納鞄に触って入れたい物を認識すると鞄より大きい物も入れられる。万引きは出来ない。事故防止に生き物は入れられない。人が間違って入ったらゾッとするよね?
収納鞄に劣化防止。
大きさはどうしようか?
私が創った、ダンジョンの深い階層でドロップする収納鞄は容量が王宮ぐらい入る大きさだったけど、やりすぎはよくない。
一軒家が入るくらいにしようか。
セーレは魔力を鞄に流し込みながら機能を追加していった。
こうして、セーレが考える理想の収納鞄が出来上がった。
セーレは丁寧に鞄を箱に戻して蓋を閉めて、収納庫に入れた。
ベッドから降りて、ミーアと遊ぶ。
確かたくさん話しかけると良いはず。
「可愛いですね〜。楽しい?ミーアちゃん楽しいですか?」
「きゃーーー!」
おお、叫ぶ叫ぶ。耳がビビるわ!
あ、排泄してる。浄化、浄化。
音のなるおもちゃを振り回しながら足踏みする楽しそうなミーアを見て、セーレは創造する。
お父ちゃんぬいぐるみとお母ちゃんぬいぐるみを部屋の壁に座った状態で置いて満足する。
自己満足かもしれないが、お父ちゃんとお母ちゃんはいつも私達を見ていてくれるよ。ミーアが大きく成長するところも見ていてくれる。
『私達も見ていますよ』
ははっ、母神だ。
「ミーア、ミーア、母神のママも見守ってくれているって!良かったねぇ。ミーアがいい子だからだよー」
「みゃんまー!」
え、今、ミャンマーって言った!?どこから出てきた、その言葉!
あ、見守ってのところを言ったのかな?そうか、もうそろそろしゃべるか。
「お姉ちゃんだよ。お姉ちゃん。言ってみて。お姉ちゃんですよー」
ミーアはご機嫌に「にゃんにゃん」と言った。なんだか惜しい気がする。
ミーアは「みゃんみゃん」とか「にゃんにゃん」とか言った後に「きゃー!」と楽しそうに叫ぶ。
あーん!日本にある音の出るおもちゃとか出してあげたいよー!
ミーアを抱きしめて思う存分に幼児独特の匂いを吸い込む。幸せな香りだ。柔らかい身体。腕にすっぽりとおさまる小さな身体。
ほっぺにちゅーっとすると、涎に気がついて浄化する。もうそろそろ水分補給かな。
ミーアを膝の上に乗せて、収納庫からミーアのコップを出して果実水を創造で入れる。
そして、ゆっくりとミーアに飲ませる。
目をきょときょととしながら素直に飲む。
うーん、唇がツヤツヤだ。可愛いやつめ。
水分補給を済ませたミーアは、また幼児歩きで探検を始める。興味がいっぱいのお子様なのだ。
午前中いっぱいミーアと遊んで、おばちゃん家で昼食を食べた後にミーアをお願いした。
おむつの替えを忘れずに渡す。私がいないからね。
「ミーアをよろしくお願いします」
「はいはい、気をつけてね?」
「はーい!行ってきます!」
おばちゃんの家を出てから、人気が無くなったら素早く自宅に入り鍵を閉める。
よっし!今から頑張るぞ。




