革製品を扱うお店に行こう!
薬師ギルドにボロ儲けさせたセーレは寝ているミーアをおんぶしながら歩いていた。
行き先は領都で1番人気の革物屋さんだ。頭に浮かんだ地図でピックアップした。
名前の通りに魔物の皮もとい、加工された革製品を扱う大店だ。
安い物から高い物まで幅広く商売して成功している店だ。
創造神(私)が皮のなめしって面倒くさい。
と、独断と偏見で職業『皮(革)加工師』を誕生させた。一流の加工師は皮を職業魔法で自由自在に加工する事が出来るが、その道は遠い。
とにかく探究心があって、ガッツがあって、革製品ラブ!な人が選択する職業だ。
大体40歳くらいでベテランだ。大器晩成型だね!
皮(革)触ってるだけで幸せッス!って人にしかなれないね!
けど、以外にも選択する人が多いのが不思議だ。まぁ、需要はあるけど。あり過ぎるぐらい魔物が討伐されているので、成功者は大金持ちになれるけど。仕事が無くならないのよね。
もちろん、農村部で趣味で牛の皮のなめしをしている人がいる。植物を調合すれば手仕事で出来るようにもしたんだよね。
その昔、皮のなめしを頑張っている子がいたんだよ。無視できなかったから天啓を授けちゃったよね。神官じゃないのに。いや、頑張って、頑張って、ゴミになっていく皮を加工しようと涙ぐましい努力をしていたんだよ。見てられないよね。でも、目が離せないの。
最後は村になめしを広めて幸せに暮らしてたのを見守ったよ。人の情熱は凄いね。神をも動かしたよ。
さて、お店に着いた。
ギルドと店が近いのはいいね!
調べた所によると、新人さんの作った作品を安く売っているから私のような子供が来ても大丈夫。
今日は陽気が良いからか、オープンしている入り口をくぐって入ると、革製品独特の臭いがした。私はちょっと苦手な臭いだ。人によると思うけど。
グッと我慢して目当ての物を探す。
あ、鑑定書を飾ってあるかな?いや、資格合格書だったっけ。
お会計の辺りを見てみると、お客さんが触れない位置に額縁に入れて飾ってあった。おおー、スゲー。実物を見ちゃったぜ。
私が見過ぎたのか、店員さんが近づいて来た。
「お嬢様、何かお探しですか?」
お、お嬢様とか、言われちゃったぜ。
幼児を背負ってるのに。
「鞄を探しています。男女問わず人気の鞄を」
店員さんはニッコリと笑って案内してくれる。優すぃー!
それにしても広い店だ。あ、2階もあるのか。気になるな。
「お嬢様、ここの鞄はどうでしょう?お手ごろ価格ですよ」
あー、若手が作った製品に案内されたか。んー、正直に予算を言おうかな。
小さな声で。
コショ「あのー、600万エンで買える良い鞄を探しています」
お、店員さんの顔が変わった。上客に対するものだな。
「申し訳ございませんでした。2階へご案内致します。足元にお気を付けて下さいませ」
先導されて2階に上がって行くにつれて、高級感が溢れてきた。2階はVIP待遇の人向けだったんだ。
うほー!素人の私が見てもわかるくらい存在感を「これでもか!」と出した革製品が並んでいる。領都1番の人気店なのも納得が出来るなぁ。なんか、ツヤとか色がもう違うよね。ワザと艶消ししてある商品もあるけど。
「ご希望の男女兼用鞄はこちらのスペースにございます。ご自由にご覧下さい」
おお、そこそこの高級品っぽい所に案内された。600万エン以上にお高い鞄があるって事だ。世界が違うなぁ。
ホントにね、神目線で見る世界と、人として見る世界は違うのだよ。あれだよアレ、象とありんこぐらい違うってやつ。
お金が貯まったら、人の肉体を用意してあげて、子神達を地上に遊びに来させようかなぁ。はしゃぎ回るのが目に浮かぶ。
ドラゴンと対決したいって言った子は地上に降ろさないでおこう。
「触ってみてもいいですか?」
「コチラの手袋をお使い下さい」
おい、何処から持ってきた。子供用手袋を。
まあ、有り難く借りる。
男女兼用の目的は達しているけれど、個人的に大きい鞄が好き。
大きな鞄から手に取って見る。
う〜ん、収納鞄用だからなぁ。盗まれないような鞄がいいなぁ。でも、お高い買い物だからある程度の高級感は必要。
大きさは中くらいで妥協しようか。探索者が使う用とか。容量は大きく出来るから、そこで勝負しようかな?あ、肩かけ鞄がある。これは革も丈夫そうだし、刃物で切られなさそう。鞄の中は謎空間になるから、外側のデザインだけチェック。うん、普段使いにいいんじゃないかな。
「これ、買います」
「ありがとうございます。商品を一度お預かり致します」
素直に手袋をつけている店員さんに渡す。
またもや誘導されて、VIPルームみたいな応接室に通された。
あ、お茶、ありがとうございます。
ミーアを潰さないようにソファに座る……前にミーアに浄化を掛ける。絶対排泄してる。
お茶を飲んでゆっくりしていると、綺麗な箱を持ったさっきの店員さんが現れた。
机に箱を置いて蓋を開けると、先ほど選んだ鞄が入っていた。
うおー、このやわらは何で出来ているんだろうか?しっかりと鞄が固定されている。
「お選びになられた商品はこちらでよろしかったでしょうか?」
「はい。綺麗にありがとうございます」
蓋をかぶせて布製の袋に入れてくれた。
「お値段、540万円いただきます」
鞄から取り出すふりをしてプラチナ貨を5枚と小銭入れの金貨を取り出して金貨を19枚取り出すと、残りが金貨40枚なので、カルトンの中に金貨を出してから、その上にプラチナ貨を5枚乗せた。
「確かめさせていただきます」
目の前で確かめてくれる。
そうか、こういうのが誠実なんだな。一度お金を持って裏に持っていかれたら足りないと言われてもわからない。
「確かに、代金ちょうどいただきました。少しお待ちくださいませ」
店員さんはお金を持って何処かに行った。
私は残っていたお茶を飲み干して、店員さんがいつ来てもいいように待つ。
あ、店員さんが紙を手にして戻ってきた。
「こちら、売買証明書でございます。定期的なメンテナンスにも対応しておりますので、その際はこちらをお持ちくださいませ。
それと、こちらの紙は製品鑑定書でございます。お確かめください」
おー!お姉さんに聞いたばかりなのに忘れてたー!しっかりしたお店で良かった。
「鑑定書を確かめてみてもいいですか?」
「どうぞ、お確かめください」
店員さんが蓋を開けてくれたので、鑑定書を鞄に触れさせる。
ぽあっと、優しい光が溢れた。不思議だ。
「ありがとうございました」
「いえ、当然の事です」
また、綺麗に蓋を閉めてくれた。
「収納庫にお仕舞いになりますか?お手でお待ちになりますか?」
ここなら店員さんしかいないから収納庫に仕舞うか。
「収納庫に仕舞います」
机の上に手を出して箱を収納庫に仕舞う。
手は出さなくてもいいんだけどね。
店員さんが部屋の扉を開けてくれたので、部屋から出ると挨拶された。
「本日はお買い上げありがとうございました」
店員さんにぺこりと頭を下げてから階段を降りる。
おおー!今日の収入がほとんど無くなったぜぃ。
人生で、いや、3つの生で1番高い買い物をしちゃった〜!ふぉー!今頃手が震えてきた。
そうです、小心者なんです。
なんで私が神になれたんだろうね?
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裕福な子供は富裕層が着る服を着て、御付きの人、または親に付き添われて買い物に来るが、今のお客様は幼児を普通の使い古したおんぶ紐でおんぶして高い買い物をぽんとして帰って行った。
あ、私ですか?しがない革商店の接客担当をしております。
私の勘が鈍ったなんて、新人の頃以来です。
不思議なお客様でした。
見た目は可愛いらしい普通の庶民の少女が奮発して父親か母親のプレゼントを買いに来たのかと予想して、1万エンで買える鞄コーナーに案内したところ、桁が違う予算を告げられて固まってしまいました。
今、思うと、お忍びの本物のお嬢様だったのでしょうか?幼児をおんぶして?
謎です。




