唐突に思い出した
妹を腕に抱えて世の中に絶望に号泣していると、感情の興奮が頂点に達したのか頭に衝撃が走り、雷に撃たれたように自分の前世を思い出した。
(……そうだ、私がこの世界を作ったのだった……)
そうだった。私は世界を作るように大神様に命じられて、前前世に地球の未婚のオタク趣味が生きがいの中年女性で、脳梗塞で死んだ後に『神になれ』と命じられて、趣味全開で地球のような環境・世界を創り出してゲームをしているかのように原始人・多種多様なファンタジー世界の住民を生み出して、世界の中心部に世界樹を植えてハイエルフ達に育てさせ、世界に美味しい魔物達をばら撒き交配させて、ダンジョンも作り込んで、食いしん坊だった私は食料の採取や面白い物や役立つ物を魔物を倒したらドロップさせて、人々に天啓で魔法を覚えさせて魔物に抵抗出来るようにして、信心深き者達に神官と言う職業を与えて、不公平にならないように10歳になる歳に教会で適職や本人の意向をくんだ職業を選ばせて、神官に専門の学校を作らせた。
そのうちに王を名乗る者が現れて、部族ごとに住み分けていた中でも序列が出来出した。
神をも恐れずに教会の者達を弾圧し始めたので、王を名乗る輩に神罰を落として見せしめにしてやると、私を恐れた部族の者達が私に祈りを捧げて【創造神・クィルワール】として私に名前をつけて崇め始めて教会が権力を持った。
そして何を勘違いしたのか教会のトップに立つ者とその周りの取り巻き神官達が豪遊・権力を傘にきて神の名を騙り悪の所業をし始めたので天罰をくらわせて、今まで虐げた人達の下まで落とし、職業を【奴隷】にするとそれを恐れた神官達が善に努めるようになった。
これを機に、重犯罪者には職業【奴隷】が自動につくようにした。殺人なんかしたら一発で【奴隷】だ。
世の中が出来始めると、分をわきまえた人々は部族から国へ、国から戦国の時代を経て皇帝へと成り上がっていったが、私【創造神・クィルワール】を貶めたり蔑ろにしたり、残虐の限りを尽くさない限りには人々の世界には手出しを控えるようになり、私の権能は人々の信仰の力により神威が高まっていたので眷属神を創っていった。
まず初めに創ったのは創造神の頭脳となる万能神を創った。
イメージが優等生だったせいか細かい性格になり、私の足らない頭を補うようにせっせと働いてくれた。その勤勉さは私をただの子供のようにし、万能神をふざけて『ママ』と呼んだ。初めは怒っていた万能神だが、だんだん本当の母親のようになり【万能神兼母神】となった。
【母神】がいるなら【父神】がいるだろうと子煩悩な父親をイメージして【父神】を創った。
【父神】は私と母神を溺愛し、母神の仕事を手伝い、時に心地よく私を甘やかしてくれた。
【母神】と【父神】にしたからか2柱は結ばれて【子神】が産まれた。
とても!とても!可愛くて、すくすくと成長を見守るのが楽しくて毎日、子神と遊んでいた。
次第に子神は魔法の楽しさに目覚めて魔法を使って遊び始めたので【子神】は【子神兼魔法神】になった。
その後も母神はポコポコと仕事をしながらも子神をよく産み、私の眷属神兼兄弟姉妹が沢山産まれた。
毎日が楽しくて幸せだったが、ふと、自分だけが家族で無い事に気がついてからは創造神だというのに、皆は慕ってくれているのに、孤独感を感じ始め、【母神】と【父神】では無い新たな神を創造した。
その名は【友神】。
私は【友神】を心の拠り所としたが、【友神】は子神の【海神】と夫婦になってしまった。
私はますます孤独になり、異空間に引きこもり病んでいき、ある日、皆の見ている中で【転生の渦】へと飛び込んだ!
皆神の叫び声が耳に残っている。
転生を管理していたのは創造神たる【私】。
誰も私を連れ戻す事は出来なかった。
そして【私】は新たな『生』を人から生まれて今まで育った。
両親から愛情を貰いながら元気に成長し【セーレ】という女児として生きてきた記憶がある。
驚きで泣き止んでいたが、残った涙が頬をつたった。
腕の中の妹を見る。
私につられてギャン泣きしている。
可哀想に思い、いつも通りに泣き止ませるために抱っこして揺すりあげあやす。
あれ?妹は、ミーアはこんなに軽かっただろうか?
『創造神!!!』
セーレの、私の頭に大声が響いた!
この、懐かしい声はーー
「母神!!」
『やっと気づきになられた!!どうか天界へお戻りください!皆、あなたの帰りを今か今かと待っております!』
「ああ、今から」
「ぎゃー!うぎゃー!」
「おお、よしよし、いい子だの。泣き止んでくれミーア」
どっと、妹の泣き声で我に帰り、母が亡くなった事にまた悲しみが襲ってきた。
そして、私は覚悟した。
ミーアを育てる。
『創造神?』
「母神よ、今は帰れない」
『創造神!?何故?!』
「私は天涯孤独となった妹の生を見守りたいのだ。許せよ。幸い、天界は母神と父神がいれば仕事も回ろう」
『……仕方ないですね。私は創造神の事を家族だと思っていましたが、あなたは孤独を感じていた。それを放置して転生渦へと飛び込ませてしまった負い目があります。好きに生きてください。皆の説得は私がなんとかします』
「すまないな。世界の監視は任せたぞ」
『はい。創造神の御心のままに』
私はミーアをどうにか泣き止ませて、ステータスを開く。この仕様もオタクだった私が考えて世界に馴染ませたのだった。多分に地球の影響を受けているな。
名前 セーレ・キャンベル
年齢 10(1245378)
職業 創造神
生命力 測定不能
魔法力 測定不能
神力 測定不能
特殊能力 創造
これではダメだ!創造神としての能力が蘇っている!
隠蔽をしなければ。
んー?都合の良いように、ちょいといじって。
よし、ステータス!
名前 セーレ・キャンベル
年齢 10【1245378】
職業 創造【創造神】
加護神 創造神
生命力 15【測定不能】
魔法力 500【測定不能】
【神力 測定不能】
特殊能力 創造
(【】は隠蔽中)
これでいい。
ちょっと、いや、かなり教会に勧誘されそうだが、便利な能力を使えるのは隠さない方が言い訳がたつ。
それに両親は真面目だったから蓄えは多少あっても、収入がなくては2年程で金が無くなるだろう。明日から、いや、明後日ぐらいから働かなくてはいけないだろう。この【創造】の能力は大いに役立つ。
出来れば、この両親との思い出のある家を買い上げるくらいまで儲けられれば直良。
えっと、今まではお母ちゃんが役場に家賃を支払っていたけれど、これからは私が家賃を支払いに行かなければならない。明日、役場に確認だな。
おっと、考え事をしていたらミーアがヨチヨチと1人で歩いている。お腹はまだ減ってないかな?
そういや、もうそろそろ食料品が無くなる。いや、腐ってきているかもしれない。隣の家の仲良しのおばちゃんが孤児だった両親に良くしてくれて、お母ちゃんが亡くなってからも手続きをしてくれたっけ。
あっ!!なんで記憶が戻ったかと思いきや、今日は私の誕生日じゃないか!教会に行って職業を授からないと不審に思われるかもしれない。でも、ミーアを1人にしておけない。
よし、先月やっと1歳になったばかりのミーアを歩かせるのは可哀想だからおんぶして行くか。
んー、おんぶ紐があればいいな。
確かお母ちゃんが使ってたのがあったはず。探そう。
お母ちゃんとミーアの寝室に入り、おんぶ紐を探す。
うーん、しょっちゅう使ってからそこら辺にあるはずなんだけどなぁ。
ん?物置が開いてる。
覗くとおんぶ紐があった!あと扉は閉めておかないと。ミーアが入り込んだら大変だ。最後に開けたのは、お母ちゃんだったな……。
家にそこかしこに残るお母ちゃんの痕跡に涙が滲んでくる。
初めは地球の両親。
次は【母神】と【父神】
今世はお父ちゃんとお母ちゃん。
両親が3組もいるなんて、恵まれてるじゃないか。涙を流している暇なんてないぞ!私!
ぐいっと涙を拭って、今日の為にお母ちゃんが用意してくれた職業授与の綺麗な服に着替える。
このワンピースは、お母ちゃんが夜にコツコツと縫ってくれたんだよな。これが最後の服になるなんて……。
ああ、いけない。ミーアを捕まえないと出かけれない。
ミーアを捕まえてお母ちゃんがミーアにいつもしていたように太い紐を苦しくないように巻きつけていく。あー!もう!ミーア!大人しくしてくれ!こっちは10歳児の身体だぞ!120cmくらいの身長だぞ!
てへ、そうです。面倒くさくて地球の日本の単位を持ち込みました。あ!でも文字はローマ字だよ!意味も細かい名称とかは手を出してないからよく分からない名前とか普通にある。
よっこいしょとミーアをおんぶして立ち上がる。
あれれ?ミーアの重みを感じないぞ?手でちゃんとミーアをおんぶしてるか確認してみると、ちゃんとおんぶしている。
そうか!覚醒して身体能力も上がってるんだな!力加減を考えないと。
え〜と、お布施と家の鍵を持って、さぁ!教会に職業授与の儀式に行くぞ!