僕と女の子
部屋に入ると兄さんの骨壷が目に入った。兄さんが死んだことでいじめも酷くなり、父からの暴力も制御出来なくなった。兄さん無しでは自分の身も守れない自分が
「嫌いだ」
その声と一緒に涙が溢れて来る。
そのとき良いことを思いついた。
あの女の子に会いに行こう。あの父さんもあの女の子に近づくなと言うくらいだからきっと度胸試しにちょうど良いだろう。そう思い立ったってから行動は早かった。部屋を飛び出し靴を履いて、外へ駆け出した。
あの女の子が居るのはいつも通る神社だった。確かクラス男子が肝試しに行く時、担任の先生が血相を変えて止めていたっけ。確か神社の名前は…
「矢舞神社」
古びた扁額にそう刻まれてあった。すると突然背後から気配がした。
「来てしまったんですね」
「うわぁぁぁ!」
僕が振り向いたら気配が消えた。
「あれ、今声したよね!?」
「それは誰に聞いているんですか?」
「うわぁぁ出た!?」
僕の目の前に居たのはあの女の子だった。
「ここから先に入るともう後戻りは出来ませんよ」
覚悟を決めて来ていたのに、女の子の冷たい声で僕は震え上がってしまった。
「貴方の様な子供には未来があるのですから、早く帰った方が良いですよ」
閉じていた女の子の瞳が大きく開かれた。
「私のような化け物に喰われてしまいますよ」
女の子の瞳は黒目と白目が逆になっていた。
兄さんが死んだ時のような感覚が僕を襲う。
心臓が千切れるような恐怖が脳裏に蘇る。
でもだからこそ、兄さんに見ていて貰えるような人間に僕はなりたい。だから…
「僕は行きます」