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プロローグ
昭和25年。
カラスがうるさく鳴いている。
同級生達は、もうとっくに帰ってしまっていた。
僕は濡れた服を絞って、夕陽を見ながら呟いた。
「何で兄さんが死んだんだろう。」
兄さんは、5年前に終わった戦争で死んだ。味方を守って死んだらしい。とても兄さんらしい死に方だが、僕はそれが気に食わなかった。
兄さんは僕の憧れの人だった。なんてったって、
兄さんは僕がイジメられている時にいつも守ってくれたし、それに、頭が良くて運動も出来る。
まさに文武両道だ。そんな兄さんが遺骨として帰って来た時は、吐き気がして、その場から逃げ出したかった。その時に分かった。僕は…、僕は守られているだけだった。