表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
52/52

早暁にて

 あの日のことは忘れない。

 私────桜庭奏は、1年前のあの日、決定的な失敗をしたのだから。

 決定的に徹底的に、いっそのこと喜劇的ですらあるほどに悲劇的な惨劇のように────失敗してしまったのだから。


「そんな顔をしないでくれよ、奏。俺まで悲しくなってしまうじゃないか。胎児よ胎児よ何故躍る────踊る気力くらいは残して置こうぜ」


 はぐらかすような言葉。まるで私の失敗を無かったことにするような────残酷なほど優しい言葉。


「どうしてキミはそんな事が言えるの?」


 口に出してから、意図せず責めるような口調になってしまったことを後悔する。


「あはっ」


 そうだ。

 アイツは─────このとき笑ったんだ。

 どうしようもないほど明るい笑みで。

 救いようもないほど蔭のない笑みで。


「面白い事を聞くじゃん。そうだな、強いて言うなら────」


 そして言った。

 冷酷なまでに─────

 冷徹なまでに─────

 冷厳なまでに─────


「惚れた弱みかな」


 ───────優しくて甘い言葉を。







「じゃあ、9で」


 冴月が1枚のトランプを机に置く。


「そういえば先輩、あの噂のこと知ってますか?」

「え?ああ………もちろん知ってるよ。あの噂だよね。あの。いやあ、あれを聞いたときは私も驚いたよ。まさかあれがあれになるとは」

「なるほど知らないんですね」


 と、慧悟があまり間を置かずトランプを置く。


「11─────何だよ秤、水臭いな。何か面白いことがあったら真っ先に俺に話してくれっていつも言ってるだろ?」

「初耳だ」


 そう言い捨てて、僕は自分の手札を見つめる。

 まあ改めて見るまでもないか。言うまでもなく僕の選択は決まっている。


「パスで」


 仕方ない。仕様がない。なぜなら僕の手札には一桁のカードしかないのだから。


「それで?その『噂』って言うのは?──1」


 先輩はそう言って、Aと書かれた札を置く。


「いや、大した話じゃあないんですが、何と言うか気になるというか……」

「早く言えよ。別に興味ないがもったいぶられるとイライラする」


 ドスッ


 龍宮さんの拳が飛んできた。この人そろそろコンプラでバンされるんじゃないかな。心配になってくる。


「なんだと…?」


 急に龍宮さんの目が険しくなった。まるで殺戮を繰り返す暴君みたいだ。待てよ?まさか僕はまた心の声を漏らしてしまったのだろうか。


「そのまさかだ。………どうやって死にたい?」

「後生です。どうか命だけは…」


 僕は言った。命乞いをした。隣で冴月が「こんぷら……?まさかコンクリートプランクトン……!?」とか意味わからないこと言っているけれどそんなものは無視だ。

 何だよコンクリートプランクトン。食べにくそうだな。


「何で魚視点なんだお前」


 龍宮さんが呆れたような目を向けてきた。心外だ。


「まるで噂みたいですね」

「?………どういうことだ?」


 怪訝な顔をする龍宮さん。


「龍宮さん───()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「なんだと?あたしのどこが理不尽だ」

「理不尽じゃないと思ってたんですか…」


 そりゃすごい。大した自意識だ。


「朽葉クン。もうちょっと具体的に話してほしいな。結局のところその噂っていうのはどういうものなの?」


 戯言の応酬に飽きたのだろうか。単刀直入に問うてくる。


「この学校の生徒の間でとあるサイトが出回ってるの知ってます?」

「サイト?」

「裏掲示板って言うんですかね。生徒限定で閲覧できるサイトらしいんですが」


 先輩たちは知ってますか?

 僕はそう訊いた。


「あいにく寡聞にして知らないな。少なくとも私は。わかばは?」

「いや初耳だ。一応確認しておく必要があるかもな。いちいち目くじらを立てるつもりはないが、いかがわしいものだと困るからな」

「生徒会長的に?」

「生徒会長として()な」


 よく分かった。

 僕は笑う。

 少なくとも二人はそのサイトを知らない。ならば、僕にも少しだけ勝ち目はあるだろう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] ああーーーーつ!!この、この序盤にでてきた方は、奏先輩の!?おお、おお、名前こそ出てませんが情報が手に入りましたです。奏先輩に失敗なんてイメージはないのですけど、いったい何が……(。。) …
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ