ロック・シーザー・ペーパー
長い間更新できなくてすみませんっ!
ストックが…尽きてきて…
やば。
自分の手札を見て、僕───朽葉秤は頭を抱えていた。
手札が弱すぎる。
2が最も強く、3が最も弱いという特殊な強弱関係の大富豪だが、基本的には数字が若いほうが弱く、数字が大きい方が強い。
そして────
僕の手札は、全て一桁のカードしかなかったのだ。
「めっちゃ良い手札ゲット〜」
右隣から慧悟の陽気な声が聞こえてきた。
「ハハッ、勝確と言っても過言じゃないなコレは。今のうちに決めておきますよ、ピース」
そう言って二本指を立ててみせる慧悟。
現代においては写真を撮る時以外にもはや用いられなくなったポーズだ。
「何と言っても2が何枚もあるのでね。敗北する未来が見えないと言うか」
そういって、殊更に2を強調したピースサインを繰り出してみせる。
またこうやって要らんフラグを……。とはいえ慧悟のことだ。きっと嘘なのだろうが、なんの意味があってそんな嘘言を?
「それはなかなか強いね。だけど、ジョーカーのこともお忘れなく」
不敵で素敵な笑みを浮かべる先輩。
「ジョーカー?確かに大富豪においては最強のカードと言っていいですね。まあ俺の半身みたいなものですから、何も感じませんがね」
「はんしん………?プロ野球の話ですか?」
「冴月……誰も阪神タイガースの話はしていない」
俺の阪神ってどう考えてもおかしいだろ。なんでプロの球団を私物化してるんだよ。
「………いつ始まるんだ?」
堪りかねた、という調子で龍宮さんが口を挟む。
なぜだか今日の彼女は時間を気にしているようだ。
「おやおやこれは……俺の尊敬して止まない龍宮さんらしくないですね。人の談笑をせっつくなんて。お急ぎのご用事でもあるんですか?」
「………」
こんな失礼かつ無謀な事を平然と出来る者などこの場に一人しかいない。凪霞慧悟だ。
「お前………急に慇懃無礼になったな」
まずい。
龍宮さんが軽く怒気を纏った。
このままだと彼女の拳が炸裂してしまう。
ドスッ
「グハッ!」
───僕に。
「どうして僕に……」
「気にするな………八つ当たりだ」
「流石にふざけんな」
なんて横暴だ。本来ならすべての暴力は慧悟に向くはずなのに。
「は?」
「すみません……」
どうして僕が謝罪を。被害者の僕が。
「先行は誰にする?」
「ジャンケンで決めます?公平に」
「そうだね。勝った人から時計回りで」
最初はグー、じゃーんけん………
ジャンケンの掛け声。
皆の目が手元に集まった瞬間。
その隙を縫うように、僕は慧悟と目を合わせた。
即ち、自分の右側に座る人物に。
僕の左手、つまり下に引っ込めて隠している方の手を示す。────握った拳を、見せておく。
「あいこ……みたいだね」
先輩がグー。冴月がチョキ。龍宮さんがグー。慧悟がチョキ。────そして僕が、グー。
詰めが甘いですよ、先輩。
僕はほんの少しだけ頬を歪める。
「もう一度、最初はグー……」
ジャンケンぽん。
「またあいこか」
先輩がパー。冴月がチョキ。龍宮さんがパー。慧悟がグー。僕がパー。
苛立たしげに龍宮さんが言う。まあ確かに、誰だってあいこが続くのは嫌だろう。
「もう一度、あいこでしょっ!」
先輩がチョキ。冴月がチョキ。龍宮さんがチョキ。
慧悟がグー。僕がチョキ。
「やっぱりなかなか決まらないね」
「5人ですからね。それはやっぱり仕方ないですよ」
人数が増えるほどあいこになりやすい。こんなものは常識だ。理系であろうと文系であろうと。
けれどそれは言い換えれば、あくまで常識の範疇での確率だ。
いつかは勝敗が決まる。
そのいつかが次に来るのか1000回後かはわからないけれど、必ずいつかは勝敗がつく。
それが確率だ。
けれどそれは、無作為の場合である。
無作為。誰もが公正で公平な気持ちで臨んだ場合。
けれど、そんなことはあり得ない。
いつ如何なる場合でも、人は都合の良いことを望むし、そうあろうと足掻くのだから。
そう。例えば────この僕のように。
先程、慧悟と交わした会話が蘇る。
───「ジャンケンで秤に負けるようにしてくれ?それはまた、最高のジョークだな。秤らしい」




