第2話 睡魔が襲う授業
チャイムが鳴り、号令を掛けられてから一時間目の授業が始まった。
一時間は、なんと一番の苦手教科の数学だ。
「すう………がく………」
この時間は本当に地獄のようで、生きた心地がしない。エックス(X)がどうとかワイ(Y)がどうとか………。
知らねぇよ! 何が計算だ。暗号が書かれているだけじゃないか! 見ていて吐き気がする。
「はぁ……」
退屈な授業が始まった。
「一次関数だからここは………で………」
先生が生徒に分かるように必死に教えようとしているのが伝わってくる。黒板に文字を書いている時のチョークのカツカツという音だけが教室中に響きわたる。
でも、だんだんとその音や声も聞こえなくなっていく。
………眠い。
「陽翔! 寝ちゃダメだって!」
隣に座っている雛瀬が、顔を真っ赤にしながらちょっと恥ずかしそうに耳元で囁いてきた。
「はっ!」
おっと、危ない危ない。宇宙と交信(寝る)しかけていた。
「寝てないからな?」
「寝てたんだね」
「寝てないって!」
「じゃあ今さっき先生は何を教えていたでしょう?」
今さっきの話だろ? 思い出せ………聞いた記憶はある………。
「あれだ! えーっと、あれ! あれだよ。うん」
「………ちゃんと授業聞いときなよ。じゃないとまた宿題で分からないとか言って騒ぐことになるよ?」
「デスヨネ………」
「まぁ………分からなくなったら教えてあげるから………その………言ってくれたら………」
今なにか雛瀬がモジモジしながら言っていたように見えた気がしたが、気にせず言われた通りに授業に集中しようとした。
「起きろよぉ!」
「はっ!」
また寝てしまっていた。
………やっぱり授業に集中なんて無理だわ。
「授業終わった後で今日の範囲教えてくんない?」
「え………?」
「あ、嫌ならいいよ? 別の人に頼むわ」
「………私でいいなら………全然いいよ………?」
雛瀬がまたモジモジしながら何か言っていたように見えたが、やっぱり声が小さくて聞こえない。
そうだよな。教えるなんてめんどくさいよなぁ。
海人に頼むかぁ。
………あいつオレよりバカだけどなぁ。
そんな事を考えていた時、隣から声が聞こえてきた。
「教えられるように頑張らないと………!」
雛瀬がそう言って、普段よりも真剣な顔つきで授業を聞き始めた。




