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4.話し合い

 昼飯を食べてからは何をするかとベッドに横になっていると、扉がノックされる。


 狩りの帰り、その翌日に客人は珍しいがおおよその見当は付く。

 返事をすると扉が空いて立った時の俺の肩くらいしかない身長をした見た目はそっくりな、しかし色違いの二人が入ってくる。


 片方は白髪蒼眼の白い肌、もう片方は黒髪紅眼の褐色肌。特徴だけ挙げれば正反対の二人だが見た目はそっくりだ。


「スキルのレベル上げたんだね」


 俺のスキルについて言葉を放ったのは白髪の方。本名はそこそこの付き合いをしてる俺ですら知らないからとりあえずシロ姉と呼んでいる。

 同様の理由で黒髪の方はクロ姉。


 スキルレベルを上げて狩人として成長している筈なのにまだ把握しきれない人達でもある。気配を殺すのが異様に上手いから、未だに虚を突かれる事もある程だ。


 モールデンは苦手意識があるのか避けているが、俺はこの二人について家族的な好意を抱いているから何とも思わない。寧ろ足を運んでくれて嬉しいとさえ思う。


 上手く言葉に出来ないが二人から感じる波の様なモノは心地が良い。

 これが家族っていうモノなのかと思う程度には二人の事を大切に思ってるし、小さい頃は何度も世話になった。俺に親が居ればまた違った感情を抱くのかは謎だが、多分変わらないだろうなとも思う。


 そんな二人は昔から自由で、何をするにしても一緒に行動しているから片方を見つければもう片方も必然、見つけられる。

 二人はクゥが出て行くのを見てから俺の許しを得る事なく俺を挟む様にベッドに腰掛ける。


「また斬術上げたんだ」

「悪いか?」

「ううん。アーサーらしいと思うよ」

「そうだね。それに斬術スキルを上げれば自然と立ち振る舞いも洗練されるから、良いと思うよ」

「その内人を斬りたい欲求が生まれるかも?」

「アーサーがそれを望むなら、それも良いんじゃない? 最初に斬るのは私にしてほしいな」

「いや、私」


 ほぼ予想通りの返答に思わず口角が上がる。クロ姉の言う通り斬術スキルはアーツを覚えるだけじゃなくて太刀筋含む文字通り斬術が鍛えられる。


 シロ姉は無関心の様な口振りだけど、成長を喜んでくれているのが良く分かる。無表情だけど、そういう波長を放っていると幼い頃から関わっているから分かる。

 矢張りと言うか、己の成長を認められると嬉しくなるものだ。


「大きくなったから座ってたら撫でられないのは残念だね」

「小さい頃のアーサーは可愛かったね。今でも可愛いけど」

「二人は変わらないよな。おりゃ」


 腕を肩に回してベッドに一緒に倒れると、二人は楽しそうに微笑う。

 行動もリンクしているのか二人同時に動くと俺の腕を枕代わりにし始めた。座った姿勢から倒れたから動くのはそこそこ難しいと思うが、二人には関係無いらしい。


 二人はもう話したい事は話したのかいきなり無言になる。


 そういう所が他人から距離を置かれる要因になると告げても変わる様子は無い。

 この二人が誰かの言う事を聞く時はきっと未だ見た事も無い恐ろしいドラゴンが暴れ回っている事だろう。それだけ我が強いとも言う。


「昨日は布団ありがとな。お陰で快眠出来たよ」

「なんだ、気付いてたの?」

「起きてたなら襲えば良かったかな」

「年頃の女性がそんな事言うもんじゃないだろ」

「アーサーだから言えるんだよ」

「アーサーになら何を言っても許されるからね」


 俺はもう十八になる。

 二人は俺が小さい頃から変わらないから確実に十八よりは年上だと分かるが、見た目が変わらなさすぎて年上である事を忘れてしまう。


 だからというか、この二人には変わらず俺の事を支えて欲しいとも思う。

 小さな村で生きていればいずれは旦那を貰って子供を産むのだろうが、それでも変わらずに俺とこうして欲しいと思う。


 二人が立ち上がると、腕の重みが無くなる。

 少しだけ寂しいと思うが二人はそれを理解しているのか微笑みながら扉に向かう。


「今日はお終い」

「時間がある時にまた来るよ。アーサーは寂しがり屋だからね」

「それじゃあ、またね」

「またね」

「おう」


 二人が出て行くと途端に部屋が静かになる。


 クゥは昼の温泉を楽しんでいるから寝床兼居間の空間には静寂が訪れる。もう少し一緒に居たかったが、あの二人は一定の場所に留まる事を余り好まない。


 それは長い付き合いで分かっている事だ。

 だから切り替えて余った時間をどうするか少し考える。


「さて、どうしたものか」


 二人が来ると分かっていれば藁人形での試し斬りは後回しにしたが、既に一頻り確認したからこれ以上は藁を無駄にするだけだと思うとやる気は出ない。


 あの二人は俺が初めて狩りに出る前日の夜、一緒に寝てくれた。

 俺には家族というモノが居ないから外に出る緊張やら期待やらで妙なスイッチが入った俺を宥めてくれたのは今でも良く思い出せる。


 本格的にする事も無いなら薪割りでもしようかと扉を開けるとノックをしようとしたのか、片手を上げた姿勢の人が家の前に立っていた。


「アーサー、今暇かな?」


 そう訪ねるのはこの村の村長。長の血筋としてこの村では唯一由緒正しいとも言える血筋の人だ。


 確かまだ二十代後半だったが、先代の村長は俺が小さい頃に流行り病で亡くなったからこの人は若くしてこの小さな村の舵を取ってる地味に凄い人でもある。

 あとスキルも凄い。悪巧みをされたら誰も防げない程だ。


 俺が狩人のスキルを発現させている事が耳に届いていたらしく、村長という上の立場としての意見では成人である十五までは村で修行を積んで欲しいと言う保守的な意見を持っていたけど、ドラゴン被害を俺が実際に収めると頷いてくれた。

 因みにこの人の旦那さんはモールデンだったりする。

 この前の話し合いの合間にあいつは工房に閉じこもってるから中々子を成せないと愚痴を溢していたのを覚えている。


 そんな村長がわざわざ訪ねて来るなんて、もしかすると依頼があるのかもしれない。

 刄王竜は個人的な活動だから、大人しく従う事にしよう。そもそも逆らう気は無いけど。


 この人は「占星術」のスキルで星を見てある程度の未来を見る人だから、もしかすると村に関わる案件なのかもしれない。


「する事も無いんで薪割りでもしようかと思ってた所ですね」

「それなら私の家に来てくれないか? 少し話したい事があるんだ。狩りの翌日だから遠慮しようと思ったが、双子が入っていくのを見てね」

「ははっ、構いませんよ。それよりもヤバい依頼ですか?」

「まだなんとも言えないがね」


 この人の占いはかなり当たる。女の勘というのも合わさってるのか異様に当たる占いは村の進退に大きく関わり、これまでに村の脅威となるドラゴンは未然に俺を使って排除している。


 何処までの未来が見えるのかは知らないけど盲竜との戦いで匂い消しを持っていく様に言われた時はこの人にかなり感謝した。


 そんな人がまだ、と言う。

 見えないモノは無さそうだと思ってた人がそう語ると少し怖いと思うが、未来なんて分からないのが普通。だから余り構えずに自然体で着いて行くと村長の家に通される。


 俺の小屋()とは違ってしっかりとした木造建築は長く村長と呼ばれる血を守ってきたと思うと力強さを感じさせる。

 内装は豪華では無いけど、しっかりと家具が一通り揃ってるからきちんとした家だと思わさせられる。


 俺の家は椅子兼ベッド、部屋の大半を占めるテーブル、釜戸、温泉、試し斬りの空間。なんか後半は家具じゃない気がするけど張り合えるのは温泉くらい。とは言え村長宅も温泉を引いている。


 増築を考慮すべきかと思っていたが、対面に座った村長の顔を見てそんな考えは吹き飛ぶ。


「大きな力が通るんだ」

「力……?」


 思い詰めた様な顔だ。

 いつもとは違うかなり曖昧な表現に首を傾げてしまう。


「厄災そのものと言える力だ。アーサーは自然現象を司るドラゴンとの戦闘経験はあるだろう?」

「まあ、ありますね」


 王の名を冠する個体よりも上位の存在。

 厄災そのものとして辺りに甚大な被害を与える個体と戦った事は確かにある。そのどれもは撃退という形で終わっているし、経験回数も片手で足りる程度だが。


「それと似ているが、どうも私には同じに思えないんだ。全てが巻き込まれるという表現が適しているかな。とにかく大きな力が遠くない未来で猛威を振るう」

「その対策をしろと?」

「それもあるが、その前にアーサーには焔王龍を倒して欲しいんだ。産卵期なのか雄の個体が辺りを警戒している。可能性として、この村が襲われるからね」


 村長が急かさないという事はまだ未来の猛威とやらは気にしなくても良いのかもしれない。


 それよりも焔王龍を倒せという事は、もしかするとある程度の未来は見えていて敢えて伏せている可能性もある。この人は無駄に恐怖を感じさせない為にそういう所があるからな。


「了解しました。武器が戻り次第向かいますんで、どの辺に居るのか教えて下さいね」

「勿論だ。時間を取って悪かったね」


 村長宅を出た俺は背伸びをしてから薪割りに勤しんだ。途中ルゥとカレィが俺の薪割りに参加したから誰が一番多く割れるか勝負をしたけど、二人を足しても俺には届かなかった。

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