会わなかった空白の時間
「圭ー。あんたの通ってた小学校から廃校のお知らせってハガキきてたわよー」
学校から帰宅した俺に母親がハガキを差し出してきた。
高月小学校廃校のお知らせの文字が目に入ってくる。小学5年生の夏休みに引っ越すまで通っていた田舎の小さな学校だ。
今住んでいる所から、そう離れていないけど1度も遊びに行く事の無かった町だったけど、5年間過ごした小学校が廃校になるのは何とも寂しい気持ちになる。
そんな事を思いながら、母親からハガキを貰い自分の部屋へ向かう。
「電車で1時間くらいだし、1度くらい遊びに行けば良かったな…」
今までそんな事思った事もなかったのに、そんな事をつぶやいていた。
「あっ。やべ。バイトの時間だ」
急いで着替えて、母親に行ってきますを告げてアルバイト先のコンビニへ急ぐ。
「小出さんお疲れ様です」
「おー。高橋くんおつかれ〜」
バイト先の先輩の小出さんと挨拶を交わす。小出さんは彼氏と同棲して4年目の27歳の女性だ。俺がバイトを始めて半年、週に2回は顔を合わせているだけあってだいぶ打ち解けてした。明るくて話しやすいので内気な男子高校生の俺としては大変ありがたい存在だ。
「圭くんお疲れさまー」
「山内さんお疲れ様です」
横から180センチ超えの50歳の背の大きな山内さんが話しかけてきた。
山内さんは俺と同じ時期に入ってきた、バイト仲間の男性だ。
山内さんはつい最近まで交通事故の影響で半身不随か、後遺症が残るかと言われていたが、2年間のリハビリと手術を経て医者もビックリな程の回復を果たした波乱万丈な人だ。
年齢はバラバラだが話しやすくて、学校の事や、あそこのラーメンが美味しかったなど、いろんな話をする間柄だ。
何かの話題から、俺は昔通ってた小学校が廃校が決まった事、引っ越して以来離れてしまった友達にどうして1度も会いにいかなかったのか、それを寂しく感じていることを話した。
すると山内さんが
「行ける距離なら今からでも遅くないよ!僕も通ってた小学校が廃校になってた事を大人になってから知って、たまたま近くまで行ったから急に見たくなってね、行ってみたら太陽光パネルの設置エリアになってて後悔したんだよ」と残念そうに言った。
小出さんからも、行けない距離じゃないなら行っておいでよ!!
と背中を押され、5年ぶりに子供時代を過ごした町へ行ってみることにした。