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{ショートショートを一杯} 「COLOR」

作者: 圭
掲載日:2020/12/06

 「ねぇ、パパ。」

 「んー?」

 「この前ね、パパのむかしの写真見つけたの。わたしと同じきれいな赤色のかみだったよ。」

 「へぇ、そんな昔の写真がねぇ。この間見つけたアルバムかな。」

 「ねーえ、どうして?」

 「ん?何が?」

 「なんで大人は、みんなそんなにまっ黒なかみなの?考えるだけで変えられるのに。」

 「・・・あぁ、それはな」



{3/12  晴れ}

 学校に、転校生がやって来た。最近引っ越してきたらしい。学校中でうわさになる位きれいな子だった。とくに髪は、まるで海みたいな深い青色に、所々宝石みたいに透き通る水色の髪がキラキラと光っていて、思わず見とれてしまった。わたしの髪も、よくきれいだと言われるけど、あの子の髪とは比べ物にもならない。どんな純粋な心なら、あんな色が出せるんだろう。ステキな子で、カッコいいとすら思った。友達になりたい。


{6/4 晴れ}

 彼女に、恋愛相談をしてみた。先輩と同じ部活だったので、最近ハマっている事などを色々教えてくれた。流行なんかにも強い彼女のアドバイスは本当に的確で、分かり易かった。でも、ショートヘアが好きだっていうのは、少し意外だった。演劇部、髪の長い子が多いのに。それはそうと、今日は少し良い事でもあったみたいで、髪がみどりがかった鮮やかな色になっていた。これはこれでエメラルドみたいで綺麗だなと思った。


{7/7 曇り}

 振られてしまった。好きな子がいるらしい。髪色も今日はすっかりくすんでしまった。もうこれ以上は書きたくない。


{8/1 雨}

 彼女が、先輩に告白されていた。私の事を考えて断ってくれたみたいだけど、「困るよね」なんていう割には、いつもより髪の色が鮮やかだったような気がするのは、私の気のせいだろうか。


{10/11 晴れ}

 秋の終わりにしては暑い1日だった。先輩と彼女が付き合い始めて、そろそろ半月だろうか。聞いた話によると。先輩に無理矢理押し切られて、付き合い始めたらしい。付き合う前に私に一声かけに来たのは、親切心からだったんだろうか。まぁ、今更なんでもないから、別にいいんだけど。


{11/23 曇り}

 何があったんだろう。あの子の髪が、すべて真っ黒に変わっていた。身内に不幸があったとか、いろんな噂が出回っていた。あの一声以降あまり口をきかなかったのもあって、何故だかは聞かずにおいた。あの子の鮮やかな髪色がもう見られないのは、とても残念だ。なのに、


                どうして私は、喜んでいるんだろう。


{12/4 曇り}

 あの子が引っ越してからは、今度は私が注目の的になった。先輩も「変わったね」なんて言って声をかけてくるけど、正直もうどうでもいい。というか、そんな余裕がない。流行のチェックや、予定の確認。果ては友達とのコミュニケーションなど、どれにも気を配らなきゃいけないなんて。疎かにすれば、周りに蔑まれるのは目に見えている。引っ越した後もみんなに嗤われていた、あの子の様にはなりたくない。

 でも、いい加減疲れてきた。


{12/29 雪}

 どこで、間違えたんだろう。思えば、はじめは持ち合わせていたはずのそれも、いつの間にか壊れて、いや、壊してしまっていた。かといって、だれを責められるわけでもない。これは、全て自分が招いた事なのだから。

                          髪が、少しずつ黒に染まり始めていた。



 「ねぇ、ママ。」

6歳になったばかりの息子が、可愛い声をあげる。

 「んー?」

 「この前ね、ママのむかしの写真見つけたの。ぼくと同じきれいな赤色のかみだったよ。」

 「あら、そんな昔の写真が。この間見つけたアルバムかしら。」

もう、全て燃やしたと思っていたのだが。

 「ねーえ、どうして?」

 「え?何が?」

息子は、さも不思議そうな顔で

 「なんで大人は、みんなそんなにまっ黒なかみなの?考えるだけで変えられるのに。」と聞いてきた。



私は、少し寂しそうに微笑んだ後、口を開いた。

   「・・・あぁ、それはね」


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