時の流れと逆らう君達へ
私の実家は東京だから欲しいものはすぐ揃うし、最新のカルチャーや食べ物はテレビで流れる前に見たり口に入ったりしてた。
学生時代に生きた英語を学ぶ為に故郷を離れて単身海外へ渡った。言語も違えば文化も違う海外の生活に最初は戸惑いを隠せなかったが徐々に打ち解け別れの際はとても辛かった。
東京に戻ってからはアパレル関係の仕事に就いた。私の人生は順風満帆で何一つ不自由もなくママもパパも優しいし私の周りには友達も多く楽しい毎日を送っていた。そう、あの日までね。
その日は少し汗ばむ初夏の日で相変わらず忘れん坊な私は傘も持たずに夕立が降りそうな雲から駆け足で逃げていてたの。するとゴロゴロと雷が鳴り始めたと思ったらいきなりバゴーンと聞いたこともない様な轟音と真っ白な光に包まれた。
次に目が覚めた時には私はロボットスーツみたいな中にいた。すると1人の白衣姿の男が話しかけてきた。
君は不幸なのか幸福なのか分からない人生だったな。俺がこのパワードスーツを米軍の指示で開発していなかったら君は死んでいた。幸運だったのが同じ日本人って事で不幸だったのが雷によって10億ボルトの電圧が君の体内に流れてしまった。君は1度絶命にかなり近いところまでいたのだが俺に出会うまで死のうとしなかった。だから君は生きている。
私は虚な意識の中で白衣の男に身に覚えがあった。先輩の友人のゆーき。さんだった。
確か数年前に米国に戦争テクノロジーの分野で買われ渡米したまでは聞いていた。ゆーき。さんは話を続けた。君は今着ているパワードスーツによって生命を維持しているが一度スーツを脱げば薄翅蜉蝣つまりアリジゴクの成虫の様に一晩程しか君は生きられないのだ。
私は頭が真っ白になった。まだやりたい事や叶えたい事が沢山あったのに悔しくて悔しくて涙が滲んだ。すると私の身体は青白く光り出した。ゆーき。さんが辞めろっと大きな声で静止しようとしたが無理だった。私は感情がコントロール出来ずにベッドから飛び起き、ドアをパンチ一つでぶち壊しコンクリートの壁を走りながらタックルして突破し、4階からそのまま1階まで着地した。以前と違い身体能力が最大値まで上昇した気がした。今まで自分がどこに居るのか分からなかったが、どうやら東京大学医学部附属病院に身体を預けられていた。
このままだと捕まってしまうと思いJR上野駅まで走ろうと思った。足が着地する度に小さな稲光が地面から足に向かって発生し、疲れるどころが走るのが楽しく病院から数秒で駅まで着いたのだった。
電子媒体を病院に置きっぱなしだったので駅で紙媒体の東京の地図を貰い家に帰ろうと思った矢先、気がつくと周りから人が居なくなっておりゆーき。さんと警察官達が私の周りを包囲していた。
拡声器を使いゆーき。さんが叫ぶ。
見つけたぞ!大人しく病院へ戻るんだ!君も分かっている通り感情に対して力の強さが倍増してしまうんだ、無駄に人を殺す事があってはならない!拡声器のスイッチを切り小声でボソッとやれやれいい加減にしろよどんだけ時間を使わせるんだよまったく。とつい本音が飛び出してしまった。これが良くなかった。
私は聞こえてしまった。私の中でなにかが吹っ切れた。あんた達が好き勝手にやってるだけで私はただの被害者だー!!腹の底から叫び怒りが怒髪天になり髪の色が金色に眼は黒眼を失い白眼になっていた。手の先から腕にかけて稲光走っていた。もう誰にも止められない。私は地面に向かって万歳の形をして稲妻を出し空に向かって飛んだ。駅のホームを出ずに飛んだ為に上野駅にはポッカリと大きな穴を開けてしまったが後悔はしていない。
私は空を飛びながら考えたこのまま家に帰っても警察か自衛隊に捕まるだけだから寄り道でもして帰ろうと思った。
人が居なくて夜空がよく見える場所と考えていたら小さい頃に家族と山登りに行った新潟県の妙高山を思い出した。あそこなら静かだし思い出もあるし良いなと思った。
光の速さで飛んでいくものだから自分が思ってるよりも随分とスイスイスイと空を飛んで行った。そしていよいよ妙高山の山頂に着陸しようとしたらデッカい烏にぶつかってしまった。人なんかいないもんだと思っていたから、顔面を思いっきり打撲しボールの様に来た道を跳ね返りながら跳び返してしまった。
飛行コントロールを上手く出来ずに制御しようとした頃には、どこかに不時着してしまった。気がつくと仰向けで倒れていて、大勢の人がこちらを凝視していた。どうやらどこかの山に不時着したみたいだった。
私はなんでこんな山に人がいるのか分からなかったが、ここにいてはいけないというのはなんとなく分かった。
水筒のカップを持った小学生の男の子なんて驚いて、中身を体にこぼしてしまったらしく熱い熱いと泣いていた。
私は心臓の高鳴りを感じつつ仰向けのまま一気に夜空に向かって飛び上がり、稲光を出し人前から消えた。
翌日スポーツ新聞数社が新種のヒューマノイド静岡県三ツ星天文台に現ると書いた。次の月、月刊ムーでも緊急特集が組まれ顔は知られてないがちょっとした有名お尋ね者になってしまっていた。
結局、誰の話だって?私の名は雷撃少女の遊。よろしく。