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王太子と王女

『レイラ嬢はまだ王宮で何が起きたのか、貴方がどうなったのか知らない。だから学園で必ず接触して来るはずだ。申し訳ないが、()()私が学園で貴方を守る訳にはいかない。だからせめてレジーと一緒に行動してくれないか?』

 休日最終日、王宮で初めて夕食をジークフリートと共にしたセシリアはくれぐれも気をつけるよう念を押されていた。翌日からの学園への送迎は勿論、昼の過ごし方まで。全てを可能な限りレジナルドかジークフリートと共にするように、と。

 学園で妹が直接何かを仕掛けてくる可能性は低い様に思えたが、接触して来るのは当然だろう。

 ジークフリートの言うように茶会に行って帰らぬ姉を心配するのは妹として当たり前なのだから…。

「それから、学園の制服などは侯爵家にそのままだろう?姉上に頼んであるから、そちらで用意してもらうといい。」

「リーナ殿下に、ですか?それは…でも…」

 リーナ王女はこの春丁度学園を卒業されているから制服などはまだ残してあるのかもしれない。しかしセシリアとリーナ王女とはほとんど面識がなかった。

「大丈夫、姉上はむしろ張り切っていたよ?」

 ジークフリートが食後のお茶もそのままに席を立つと入れ替わるように侍女が現れる。

「私はまだやるべき事が残っているので先に失礼するよ。貴方はこの後で姉上の所を訪ねて欲しい、いいね?」

 ニッコリと微笑むとジークフリートは返事も聞かずに足早に去っていった。

 侍女によって連れて行かれたリーナ王女の私室、そこには既に所狭しと学園で使用する小物が並べられていた。

「まぁ、貴方がセシリア嬢なの?よろしくね」

「リーナ王女殿下。セシリア・ビューローと申します。この度はご迷惑をお掛けして大変申し訳ありません…」

 セシリアがそう言って頭を下げると、リーナはあらまぁと楽しそうに声を上げた。

「迷惑だなんて、全然そんなことないのよ?ジークからの頼まれ事なんていつ振りかしら?あの子があんなに必死な様子を見ていたら、なんだか私嬉しくって。」

 尚も楽しそうに笑いながら、リーナは侍女に命じて自らの制服をセシリアに当てて見せた。

「――そんなに手を加えなくても着れそうかしら?わたくし1度でいいからこういうことをしてみたかったのよ!さすがにジークにわたくしのドレスを着させることは出来ないでしょう?」

 侍女たちは手にした道具で何やらサイズを測りながら、その場で手早く服を直しているようだった。

「セシリア嬢、――リアって呼んでも?」

 リーナがにこやかに微笑むとセシリアの首は自然に縦に振れていた。侍女に抑えられているため、その動作もどこかぎこちなくなってしまう。

「制服と普段使えそうなドレスをいくつか…。あとは何が必要かしら?靴や直接身に付けるものは明日の朝には届けさせるわ。それから…」

 尚も楽しそうに小物を選ぶリーナに、何とも言えない感情が湧き上がってくるのをセシリアは感じていた。

 侯爵家とここ王家での自らに対する対応の差は一体何なのだろうか…。自らの立場や利益などを考えることも無く、ただただセシリアの為に動いてくれているジークフリートとリーナ、それにレジナルド。たかが侯爵令嬢に過ぎない自分、ましてや菓子に薬を忍ばせたのかもれない自分に、どうしてそこまでしてくれるのか、今はまだ戸惑いしか感じられないでいたのだった。

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