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はじめての花祭り

「ジークは今年の花祭り、リア様と一緒に見に行くの?」

 真夏に開催されるヴィルヘルム王都の花祭り──。それは午前中出発する花車のパレードからはじまり、キャンドルで飾られた広場で夜通し行われる踊りまで丸一日続く大きな夏祭りである。花祭りでは将来の伴侶と巡り会えるという言い伝えもあり、相手のいない若者たちが多く参加する。

 話には聞くものの、ジークフリートとレジナルドは今まで一度も祭りに参加したことがなかった。大勢の人々が集まる祭りに王太子自ら参加して混乱を招くような真似は出来ないし、何より二人とも将来の伴侶が祭りで見つかるなどとは思っていなかったからだ。


「花祭り、か。考えたこともなかった。女性はそういうものに行きたがると言うからな…。」

「リア様花が好きだろう?二人が祭りに参加するなら何人か騎士をつけるように話しとくからさ。」

「あぁ、一度聞いてみるよ。」


「レジー様?」

 レジナルドが執務室で一人雑務をこなしていると、セシリアが遠慮がちにドアを開けた。

「あれ?リア様、ジークと一緒だったのでは?」

「ジーク様はリーナ様と少しお話になってから戻られるそうです。」

「あ、そうなんだ。何の話なんだろう?」

 なんとなく姉弟で話す内容は想像出来たがそこは敢えて触れず、手元の書類を軽く整えるとソファーにセシリアを促す。

「そういえば…花祭りの事、ジークから何か聞いた?」

「はい。実は…私、花祭りには一度も行ったことがないのですが…。」

「あー…」

 そうか、確かに昨年までのビューロー候爵邸での扱いから考えると祭りなど到底行かせてもらえる立場では無かっただろう。

 そこでセシリアは少し恥ずかしそうにしながら聞いてくる。

「レジー様は…お祭りに行かれないのですか?」

「将来の伴侶を探しになら行く気はないけど?」

「…そう、でしたか。」

「リア様は花祭り行きたいんじゃないの?雰囲気だけでも楽しめるでしょ?ああいうのって。」

「…私は華やかな場というものに慣れておりませんので、それほどでも。」

「そうなんだ?まぁそう言う俺達も今まで一度も行ったことはないんだけどね。」

「お二人は今まで花祭りの日は何をして過ごされていたのですか?」

「花祭りの日は、そうだなぁ…。」

 去年の花祭りの日は何をしていたか…。確か前日に大雨が降り花祭りの開催が危ぶまれたのだった。祭りの日は朝から晴れたが湿度が高く暑かった。夜になっても気温が下がらず、王宮の塔の上で涼みながら広場を見下ろせる場所で…。

「思い出した、去年はジークと二人で王宮でアイスクリーム食べた!」

「はい?」

「夏に冷たいアイスクリームを食べられるのは限られた日だけなんだよ。氷にも限りがあるからね。」

「アイスクリーム…ですか、花祭りの日に…?」


 王宮にはヴィルヘルム国内にある高原の湖で冬季に作られた氷が保管してある。その氷室は地下にある巨大なものらしいがやはり保存できるとは言っても使える量には限りがあり、使用には王族の許可が必要となる。

 最近氷を使用したのはレジナルドが知っている限りでは春の茶会でセシリアが倒れた日だ。夜中に目が覚めたセシリアが冷たい水を飲めるようにとジークフリートが直々に持って来させたのを覚えている。


「本当にお祭りに行かなくてもいいなら、今年は三人で一緒にアイスクリーム食べようか?きっとジークも許可してくれると思うよ?」

 セシリアは目を丸くして一瞬驚いた様な顔をしたが、すぐに破顔すると大きく頷いた。

「はい。私、アイスクリームもはじめてです。」

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