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存在感ゼロって攻略キャラとして終わってない?(ノア視点)

 「剣…?」


 貴公子が貴族のたしなみや教養として軽く剣術を覚えた後に、ステータスを示すお飾りとしてぶら下げているような装飾が施されている。


 手を伸ばし、そっと持ち手を握る。ひんやりとして冷たい。


 「ノア、持ち上げてみなさい。」


 お父様に言われてそのまま手を上げようとすると、全く動かなかった。


 「ふんっ…!」


 力を入れるとわずかに動いた。


 「ははっ、ノアよ、それはお前の力では両手で持ってやっとだろう。」


 お父様が言うと、周りの人達も微笑ましそうに私を見ていた。


 「皇女様、頑張ってくださいませ!」


 いつの間にか応援までしてもらった。頑張るしかない。


 「ふっ…!」


 両手を使っても箱から出せる程持ち上げられそうにはない。お父様を見ると、楽しそうな笑顔を浮かべていた。


 「ノアよ、無理であれば近衛兵の力を借りても良いのだぞ?」


 近衛兵の人達も私が頼めばすぐに手伝ってくれそうな雰囲気だった。

 でも、この誕生日でルシーズがプレゼントとして私に贈られる事はほぼ確定だから、この剣は絶対それに関連しているに違いないと踏んだ。


 「いいえ、もう少し1人でやってみます。」

 「ほう…」


 皆が見守る中、私は考えた。

 私1人では両手を使っても箱の中を引きずって、箱のフチに先っぽをかけるので精いっぱいだろう。


 ん?じゃあ、何も問題無いじゃん。

 「持て」ではなく「持ち上げろ」なんだからさ。


 私は柄を握り、ビロードの上をずりずり引きずって箱のフチにかけた。そして柄を引いた。

 半分以上、宙に浮かせた所で私は柄の先端を下に押した。剣先が上がる。


 「これでよろしいですか?」


 私が言うと、広間はシーンと静まりかえった。

 えっ、やらかした?


 「はあ…ノアよ、私はとんちを問うたつもりではないぞ。」


 お父様が呆れたように言った。


 「左様でしたか。ご期待に添えず申し訳ございません。」

 「しかし、『そいつ』は感動しているようだ。この場合は私も譲るとしよう。」


 そいつって?


 「はっ、光栄でございます、陛下。」


 私のすぐ後ろで若い男の声が聴こえた。これは…!

 振り返ると、ルシーズが胸に手を当てて会釈していた。


 「ど、どこから…!」


 私が感じた疑問はなぜか客人の皆さんも同じく思っているようで、会場がざわめきだす。


 「静まれ!」


 お父様の声で会場がお父様に注目した。


 「近衛兵や私は分かっていたぞ。彼がそこの使用人の入り口から出て来たのを。なあ、ルシーズ?」

 「はい、私は皇女様が近衛兵の力も借りずお1人で成し遂げると決めなさって懸命に頑張られていらっしゃるのを邪魔せぬよう、気配を消して出てきてここで控えておりました。」


 強くない?


 「そういうわけだ。ノア、紹介する。私からの贈り物は守護騎士…つまりそいつだ。」


 で~す~よ~ね~!ウン、知ッテタ。


 「ルシーズ・ラグリーンと申します。よろしくお願いいたします。」


 ルシーズが私に深くお辞儀すると、周りの客人がまたざわめきだした。


 「ルシーズだって?あの北部軍の前線を守っていた男だろう!なぜこんなところに!」

 「あ~、実力はあったから長の死後、妬みを買ったんじゃないか?自治区の奴らの一部は排他的な人間が多いからな。あの見た目じゃあな。」

 「あの見た目でよく気配を消してすぐそこにいれたよな。さすが皇室の守護騎士は違うな。」


 ルシーズは何にも反応しない。

 えっ、気配消してるとか攻略キャラの自覚あるのかな、この人。それとも隠しキャラだから、メーカーから何か変な圧力かけられて「課金されるか、10周目まではでしゃばるな」みたいに言われてるのかな。

 終焉プロの中ではかなり社員さんに愛されていたキャラで、キャラデザとか演出とかこだわってたみたいだけど、そうでもないのかな。


 「ノア、その剣をルシーズに渡してやれ。」

 「はい。」


 あっ…。私は後悔した。これ以上どうにも出来ないのに。


 「では受け取らせていただきます。」


ルシーズが箱のフチにかけたままの剣を両手でいただいた。

 持ち上げられなくて申し訳ない。でもありがとう。

 ルシーズはあれだけ重かった剣を軽く扱ってる。

 ルシーズは受け取った剣から柄を引き、鞘をベルトに掛けて剣を箱に戻した。


 「?」

 何で戻すの?


 「それではこれより、皇女様による守護騎士の任命式に移ります。」


 あっ、そんな急にあるんだ。原作では任命式から始まってたから知らなかった。終業式からの離任式にすぐいくやつか。

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