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この期に及んでまだ出ようとしない騎士

 『ロードが完了しました。

 ゲームを始めますか?▼』


 「おっ、終わりましたね!じゃあ…そのまま始めてくれ!頼む!」


 犠牲者の乙女ゲープレイヤーと同期している以上は、向こうがゲームを始めてくれないと俺がゲームを出来ない。だからこの仕事はほぼ相手の生活スタイルに合わせるようになる。


 『ここはヤクハ国。2つの大陸とたくさんの島々の大国を統べる第77代皇帝の一人娘として生まれたあなた。蝶よ花よと、それはそれは溺愛されて育っています。』


 うん、だろうね。まさかお抱えの騎士が世界滅ぼすなんて思わずにベタ惚れさせるなんてよっぽど頭の中お花畑なんだろうね。


 『今日はあなたの12歳の誕生日。ヤクハ国では女子は満10歳から婚約、13歳から入籍を許されているため、位が高くなればなるほどこのあたりの年頃から危険から娘を守るために専属の護衛を付ける家庭が多いのです。

 特に護衛の中では、ただ武術のみに優れているというだけでなく、相応の知性があり主人の品位を上げるような振る舞いの出来る守護騎士という人材を多くの貴族たちは好みました。

 それは皇室も例に違わず…皇帝はあなたのために近衛兵だけでなく中央騎士団に属する護衛職員全てに武術・学術・面接など厳しい試験を課し、残った最後の1人を選びました。』


 戦士に科挙させたんかwwで、それを勝ち残った天才がルシーズというわけね。


 『そして皇帝はサプライズとしてあなたにその優秀で忠実な騎士をプレゼントするのです。

 ロードに入ります……。』


 もう皇女様はこの時点で「どんなイケメンが来るんだろうドキドキ♡」ってなってるよ、うん。

 ルシーズの優秀さと容姿は保証する。だけど、忠誠心はゼロに近いと思え?更生の意味では100期待してくれても良いよ?



♡~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡



(皇女ノア視点)


 「まあ、お綺麗ですわ、皇女様!」

 鏡の前でメイドさん達が声を上げる。実を言うと、私も自分の姿に驚いていた。


 「わあ…皆さんの素晴らしい腕を振るってくださってありがとうございます。こんなに綺麗になるんだなんてびっくりしました!」

 「もう!皇女様ったら!皇女様は元々が素敵なんですよ~っ!」


 この10数年、メイドさん達とも仲良くなってきた。やたら人数がいて入れ替わりも激しいけど、いつメンは大体分かる。


 その時、部屋のドアをノックしてサリバン先生が入って来た。この人には何でも教えてもらったな~。小学校の先生レベルに全知全能なんだもんな。


 「まあ、皇女様!とても素敵です!」

 「ありがとうございます。」

 「こうして見ると…だんだん皇妃様に似てこられましたね。」


 先生は懐かしそうに笑った。


 「陛下の執務中・訓練中にことごとく邪魔をされていらっしゃいました。」


 両親は歳の差婚だ。芸能人の報道をよく聞くが、うちの両親は13歳違う。

 だから父はロリコンと言われるかもしれないが、別に少女趣味があったわけではない。むしろ年上が好きで、年上の他の貴族令嬢(シリル様母のジュノ様の名前をよく聞く)や騎士に声をかけて浮き名を流していたんだと古参の部下の人達が懐かしそうに話しているのを聞く。


 でも視察で訪れた領主の姪である母と出会い、それはぱたりと止んだ。そして政府官僚だった母の両親の王都にある屋敷まで赴いて頭を下げ、縁談を申し込んだそうだ。

 趣味の違う皇帝にそこまでさせるほど、母は美しかったのだ。


 そんな母に似ているといわれると…もうべた褒めじゃないですか~、サリバン先生!


 「えへへ~。」

 「皇女様、気を引き締めてください。今から大勢の皆さまが皇女様のお誕生日を祝福してくださるというのに、そのような態度…皇帝・皇后の両陛下そして客人の皆さまに失礼です。」


 あ~始まったよ、サリバン先生の説教!


 「分かりました!」

 「ええ、ですから」  「『清く正しく美しく、凛とした皇女らしい振る舞いを』心がけますぅ~!」


 もう何言いたいか分かるって。

 先生は「分かっていればいいんですよ、それをやってくださいませ」とブツブツ言いながらドアを開けてくださった。


 謁見の間の入り口に立つ。


 「皇女様、お誕生日おめでとうございます。」

 「おめでとうございます。」

 「ありがとうございます。」


 ドアの番兵の人達に会釈をすると、部屋の奥で「皇女様、ご入場!」と王佐アトラスの声が響いた。

 番兵の人達が重そうなドアを一気に開け放った。まぶしいな…いつ来てもまぶしい。


 私はまず玉座にいる両親を見た後、その場で深々と会釈した。

 そして歩き出した。


 両親の前まで来ると、私は両親、そして大臣や王佐のいる席に次々と一礼した。何か入学式とか卒業式の前で何か言う人みたいなアレだ。

 そして最後、振り返って来客に一礼して両親に向き直る。


 皇帝は私を見て「ほう、自分達によく似てきたな」という顔を浮かべ、皇妃は何か「こんなに大きくなって…」と涙ぐんでいる。両陛下…ここで親の顔してどうするよ?


 一応、両陛下はその後親の顔から皇帝・皇后の顔になって式典を粛々と進めた。

 そして毎年恒例の式典が終わり、プレゼントタイムだ。他の貴族たちからの贈り物(貢物)は個人的な挨拶で受け渡しがされるが、両陛下からの贈り物はなぜか公の場でパーティーの前に行う。


 「では、続いて皇帝・皇后両陛下から皇女様へ贈り物の受け渡しを行う!」


 アトラスの言葉が終わると、皇帝・皇后のそれぞれ隣から箱が持ってこられた。


 「?!」


 いや、おかしい。原作でいくとお母様は確かドレスかティアラをくれるはずだから箱で問題無い。しかし、お父様はこの日、騎士…バッドエンドでトラウマを植え付けてくれたルシーズを守護騎士として付けてくれるはず。なぜ箱なんだ?

 この中に人が入るのは無理な大きさだよ?


 「今年は皇妃様の贈り物から開けてくださいませ、皇女様。」


 アトラスが言うので、私はお母様の方から出てきた箱を開けた。

 やはり、中にはティアラが入っていた。子供だましの色を吹いた石ではなく、全て銀細工のみが施されている。ずっしりとした重みがあるから合金じゃなく、純銀だろう。


 「ノア、大人のレディになる証に銀細工だけのティアラを調えました。色物に頼らずともそれだけの美しさを保つ、つまり飾るだけの見掛け倒しではないことが淑女の心得なのです。」


 お母様が言うと、周りから歓声が上がった。

 飾るだけの見掛け倒しではないこと…年とってもなお美しさを保っている皇妃の言う事には一理あるだろう。


 「分かりました。ありがとうございます。」


 こんな物…一生宝にするわ。頭に付けるのが怖い。


 「次に皇女様、皇帝陛下の贈り物を開けてみてください。」


 ここで人の生首とかやめてね?あと、「ルシーズ」と書いた引換券が入ってるのもやだ。

 お父様をちらりと見て、私は箱を開けた。


 「剣…?」


 そこには、剣が横たえられていた。

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