ブラック企業の社員と一致
その時、ルシーズがふと足を止めた。
「どうしました?」
「ああ、ここで王都の方に使いを出したいので…少しお待ちくださいませね。」
ルシーズに付いて建物の中に入る。役場のようだ。
「…すぐ呼ばれると思います。ソファにかけて待ちましょう。」
「あ~お兄さん、今空いてるから整理券取ってまっすぐこっち来て!」
「そこにかけてお待ちくださいね。」
窓口のおばさんが手を挙げた。ルシーズが券を1枚取り、窓口に進む。
「王都のキングハンズ、公務省の宮内部へ急ぎの電報をお願いします。」
「あら、お兄さん、お貴族さんなの?」
「いえ、私は護衛です。ただ、私の名前で出した方が伝わるので機密文書・書留速達で願います。」
「はいはーい。」
ルシーズがおばさんを軽く相手しながら手続きをどんどん進めてくれた。そして料金の銀貨を支払い、私達はその建物を出た。
「…着払いで送れば良いのに。」
「それでも構いませんが、着払いの場合、その場で開封される事もあるので。」
「そ、そうなんですね。」
「皇女様のお名前を出さなかったのもなりすましを避けるためでございます。」
皇女は非常識だけど、ルシーズはステータス以外では常識なんだよな。
「本来ならば常識なぞご存知にならないまま一生を終えるのが貴族に生まれた女性でございます。」
「その意味では貴重な体験ですね。」
「この状況下でそのような事を仰るとは思いもしませんでした。やはり、私は皇女様を見くびっていたようですね。」
それ皮肉?
「今回『は』決して皮肉ではございません。純粋に感動いたしました。」
「どこに感動の要素が?!」
今回「は」っていうのは聞かなかった事にしておこう。
「ああ…陛下、皇后陛下、皇女様は己の立場に一切おごる事無く一般市民の立場に寄り添おうとされていらっしゃいます。私はこの身を皇女様に捧げられる事を騎士として誇りに思います。」
それは買いかぶりすぎじゃない?
「いいえ皇女様、貴族の女性と言うのはそのようなものでございますよ。市民の生活に気を向けているのは一部の良君となる男性ばかりで、それも一握りでございます。市民の労働は貴族の私腹を肥やすため、貴族はそれを当然であるかのように振る舞われます。」
「そんな事したら革命起きますよ?」
「それから貴族を守るのが私達の役目でございますよ。」
何か…世間一般からして悪者扱いなんだね、騎士って。
「守護騎士というのは…市民にもなれず、貴族にもなれない半端者でございます。市民の敵であり、貴族からの差別の対象でございます。」
「私のせいで辛い思いさせて本当にごめんなさい。」
「いいえ、皇女様は私を大事にしてくださっています。」
ルシーズ、一旦自分にかけられた呪いを見てみよう。
あなたは一度労働についての法律と基本的人権について学ぶ必要がある。
オトセン:「良い子の皆!前にも言ったと思うが、ぜっっったいにヤクハ国の皇女の守護騎士はやめとけよ?」
ルシーズ:「あの…R15指定がついている時点で子供は閲覧しないのでは?」
オトセン・ノア:「R15指定の元凶が言うな!」