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騎士は逆チート「さとり」を使えるようになった!

【第1章の復習】 ここから読み始めた方へ


・ある女の子がヤクハ国の第77代皇帝の一人娘・ノアとして生まれるけど、その子は転生者

・オトセンは私達がいるような世界の住民で、他人のゲーム画面を乗っ取ってゲームチートプレイ実況をしようとしたらなぜか主人公は皇女ノアだった(けど誰も気付いてない)


・オトセンは皇女ノアの内心を聞いて原作シナリオと違う趣旨の発言をしていたので、バグとして制作者(終焉プロの田中)に通報

・ノアは前世そのゲームのデバッガーをやっていたから、騎士ルシーズをオトセンが操って原作シナリオと違う言動を起こしたために混乱する


・ルートを決めるためのイベントでシナリオを大きく外れた事故が起こり、ノアは20歳の誕生日に死ぬ呪いを受ける。ついでにルシーズもノアのワガママのせいでノアの死後3日後に死ぬ呪いを食らう

・呪いを解くためには「高等武器」「半人半妖の騎士」と共に魔族2名に会う必要があり、ノアとルシーズはその旅に出るというRPG展開



 この世にはブラック企業・ブラックバイト・ブラック部活…とにかく闇属性で労働者・雇用者・関係者に無理を強いる組織がいくつもある。

 主な例としては長時間労働、仕事だと労働規約に反した規則、残業代を出さない事、休みが無い事、パワハラ・セクハラなどのハラスメントがまかり通る事などが挙げられる。


 ちなみにこれら全ての項目を満たし、かつ余命宣告7年と3日の呪いをかけられる事と死ぬ前に死体をどこにあっても3日以内に所定の位置へ運ぶ義務、そして規約に反した場合は自分の育った集落の住民を全員拷問の上に公開処刑される、そんな仕事がある。


 お前達、ヤクハ国の皇女の守護騎士にだけはなるな。



♡~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡



 かくして、13歳と17歳と荷運び兼野宿用のメゾンドッグ1匹の旅が始まったのだ。

 王都を出て、俺達は草原を歩いている。ここは王都と街をつなぐ道で、よく商人とか旅人が行き来してるんだけど集落ではない。遠くに畑が広がってるぐらいのド田舎だ。


 ノア:「…ルシーズ、疲れたら休憩するので言ってくださいね。」


 メゾンドッグとかいうゴールデンレトリバーがセントバーナードの体型になって軽自動車ぐらいにでかくなった犬に積んでいる荷物は主に寝具と着替えや食料ぐらいだ。

 一応寝泊りできるようにはなっている。


 ノア:「(まだ荷台のスペースはあるのに武器とかルシーズが自分で運んでいるから心配だな。いくら騎士とは言え、長旅でそれだけの重さを抱えるのも大変だろう。)」


 ルシーズ:「いえ、私は皇女様の物ですので皇女様のペースに付いてまいります。」

 ノア:「またそんな…」


 や~ん、ルシーズ今日もイケメン!


 ノア:「もう…」

 「(いや、これ以上彼の事を悪く言って罪悪感を募らせてしまうのも何だか悪いな。)」

 めっちゃ良い子!


 ノア:「ルシーズ。」

 ルシーズ:「何です?」


 改まりすぎだろ。


 ノア:「わざわざ徒歩で行かせるあたり、お父様は諦めていらっしゃると思いませんか?」

 ルシーズ:「…いや、誰だって無理だと思うでしょうね。」


 どストレート!控えめなおシズさんはどこ行ったよ?

 そんなんされるとアンチコメで……あっ、この動画、バグデータだからアップしないんだった。


 「そういえば田中に連絡!……いや、後で良っか。」

 時計を見ると、もう夜の12時を回っていた。


 ノア:「ルシーズはそれで良いんですか?!一応、あなたは死んじゃうんですよ?しかも死ぬ前に重大な任務があって、出来なきゃ一族が大変な事になるって言われているんですよ?!」


 そうだよ?!俺のせいだけど。


 ルシーズ:「…ですから、私達は皇女様が途中で死なれる前にリタイアされるのだと思っております。安心なさいませね。」


 まあ…城の中庭程度で満足している引きこもり皇女様には山道とか砂利道とか無理でしょうけども。


 ノア:「もう、馬鹿にして!」

 「(確かに今まで皇女として豪華な生活ばっかりしてきたけどさ、そこまで言わなくたって良いじゃん。平和な世の中で平和ボケして何が悪い!)」


 そうだ!平和が1番だってじいちゃんが言ってた!


 ルシーズ:「…まあ、平和とは良い事ですよね。」

 ノア:「(だいたい、あなたが平和ボケしていたからこそこんな事になっているんでしょうが!)」

 それは違うよ?


 ルシーズ:「…皇女様、私は本当に大それた事をいたしました。」

 シズ、お前さんは謝らんで良い!

 ノアさんマジでごめん、俺も…バグか何か分からないけどさ、予想されるストーリーとは違うイベントが入ってきてるわけよ。


 ノア:「何?」

 ルシーズ:「いえ、ですから、皇女様をあんな恐ろしい呪いにさらしてしまった事です。」

 ノア:「もうその話は良いでしょう。」


 ノアさん、メンヘラか!


 ルシーズ:「でも、皇女様からなさいました!」


 シズ、だからコマンド出す前にアクション起こすなって。


 ノア:「いつ?」


 あ~もう!

 良いや、俺が普段は操ってるからたまには自分を出させてあげるよ。


 ルシーズ:「ですから、先ほど『私が平和ボケしていたからこそこんな事になっているのだ』と責められましたよね?」


 皇女様は「ゔっ…」とうなった。そして拗ねたように言った。

 ノア:「…口には出してないでしょ。」

 「(…で、なぜ知っているんですか?)」


 ルシーズ:「…えっ?」

 ノア:「…えっ?」

 ルシーズ:「いえ、皇女様のお声かと思いましたよ。」


 2人が辺りを見回してみる。ただの草原地帯だ。

 商人たちは忙しそうに進んでいて、2人をからかう暇などなさそうだ。

 むろん、メゾンドッグが言葉を話すわけなどない。

 2人の少し後ろの方にいた商人たちが追い越していくと、そこは人気が無くなった。

 ルシーズが剣を構える。


 ルシーズ:「…タチの悪いモンスターでしょうか。」


 あっ、そっか、シズは俺に体乗っ取られてる自覚はあまりないのか。

 俺のコマンドを無意識に自分の決断として受けているから、チートを本格発動させた時に違和感覚えるんだな。


 ルシーズ:「不気味ですね。」

 ノア:「…もしかして、私の心が読めるとかそういうやつですか?」


 ぴーんぽーん!


 ルシーズ:「…なるほど、呪いの副作用、という事でしょうか。」

 逆チートだよ!


 ルシーズ:「では皇女様、私の心は読めますか?」

 ノア:「さあ?」


 良かった、こっちのバグは起こっていないようだ。


 ノア:「(全く読めないけど、どうせネガティブ思考に走っているんだろうな~。)」


 少なくともコマンド主である寄生虫・オトセンは害悪だからそういう事考えてないよ?


 ノア:「(めんどくさいし、正直読みたくない。)」


 言うやんww

 ルシーズがムキになる。


 ルシーズ:「皇女様、めんどくさいとは何ですか。」

 ノア:「厄介ですね。」


 まあ、確かにな。


 ルシーズ:「でもこれで皇女様に私の心を読まれない事が分かりました。これで皇女様は気兼ねなくいつこの旅をお止めになられたいか、ご自分の心でお決めになるという事が出来ると証明されましたし、私は皇女様にお付き添いいたしますよ。」


 全力で運び屋の義務を放棄しようとする騎士様、今日も性格イケメンですね♡

 女の子がキュンとくるサプライズを粋に…例えば世界とかサクッと終わらせそう♡

 あと、ムード作りも上手そう…朝起きたらもうそこは2人だけの世界♡


 ノア:「…はあ~、ルシーズの心が読めないとフェアじゃないです。」


 読めても何の利益もなさそうだけど。


 ルシーズ:「ええ、私が何と思おうと、皇女様のご意思のままでございます。」

 ノア:「(うぜぇ~!!)」


 シズってある意味腹黒系?


 ノア:「早く着かないかな~。」

 ルシーズ:「次の町まではこのままのペースだとあと30分、といった所でしょうか。」

 ノア:「(この2人きりの状態が半時間も続くのか?!やってられるか!)」


 おっ?おっ?おっ?

 ルシーズも「キタんじゃね?」という顔をしている。


 ルシーズ:「止められますか?」

 ノア:「いいえっ、止めません!」

 「(危なかった…。)」


 ノア:「(ていうかさ、な~んで豪華絢爛な感じの貴族恋愛のはずがこう…RPG系になってるのさ。)」


 それな!俺も商売になってないから案件元から怒られるんだよ。

 もう既にバグかアンチのハックか分からない現象が起きてるけど、チートプレイのアプリは正常に起動しているみたいだし、見てて面白いからもう付き合うよ?


 ノア:「(確かに推しと2人きりっていう状況は美味しいよ?うん、すっごく美味しい!)」


 マジで?!推しなの?!あれ…じゃあ初見プレイじゃないって事?

 それなら今までの皇女の心中語が分かる。

 慌てて田中に連絡した「シズが世界を終わらせる」発言などのネタバレも分かる。


 ただ問題は、なぜ現実のプレイヤーの気持ちがこのゲームのテキストに表示されてんのか、って事だ。これに関しては俺が何もイジってない以上…考えられるのは、ノアさんが端末に打ち込んでるっていう変な1人遊びをしている可能性だ。

 もし第3者がノアさんの端末をハッキングしてこの台詞を改ざんしていた場合、ノアさんも俺みたいに驚くだろうからその可能性は無くなった。


 ノア:「(だけどさ…何か読心術とかいうチート使ってくるし、性格割と悪いし、何なの?)」


 チート…まさかノアさん、俺のリスナー?!

 そうか、君はハック先特定して接続させるぐらいの技術を持つファンまたはアンチなんだね(歓喜)!

 この世界でオフ会だね、ノアさん!


 ノア:「(猫かぶりか、コラ!)」

 ルシーズ:「ふふっ、皇女様がどのような夢をお描きになっていらっしゃったかは幼い頃より伺っておりますのでよく存知上げております。ただ…私のせいで時間が少なくなってしまい申し訳なく思います。どうです、今の内に引き返して残った時間で恋愛を楽しまれるのは?」


 シズ、その笑顔イケメン過ぎてうざい。


 ノア:「また馬鹿にして!」

 「(もう…ホントやだ。何なのホント、本編ではモブキャラで隠しキャラとして出てくる上にイマイチ物足りないエンディングだったくせにさぁ!

 しかもさ、バッドエンドがメンヘラでとある主要キャラと丸被りだったんだよね。)」


 めっちゃやりこんでるやんw


 ルシーズ:「メンヘラ、とは?」

 君の仕えている皇女様の事だよ。


 ノア:「あなたは知らなくて良い事なんです!」


 そんな卑猥な単語でもあるまいし、ケチらずに教えてあげれば良いじゃん。


 ルシーズ:「分かりました。」



【次回予告】 ガイドライン遵守系男子・ルシーズ VS イケナイ皇女様

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