00 最後の審判。そんなにカッコよくない終わり。
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魔法のiらんど小説大賞 最終選考にノミネートされました
答えは、そこに描いたはずだった。
たった一枚の、ちっぽけな板の上。そんな場所に、世界の尊い真実の何もかもを描き出した、と。俺はそう、傲慢にも思い込んでいた。
普遍的な美とは、何だろうか。
人はそれをモナリザの微笑みや、そこに描かれた黄金比だとか、はたまたそれらを導き出すための数式に求めたりする。あるいは、海の雄大さや星空の輝き、山頂から見る日の出のように壮大な自然の姿。もっと抽象的に命の儚さや力強さ、それらが巡り巡って母子像に見出され、古典絵画や彫刻へと回帰していく……なんてこともあるのかもしれない。
普遍的であるということは、世界の裏側にいる人とでも共有し、理解することのできる一定の基準を持っているということだ。そして、それを『美』でもって表現しようとするということは、自ら基準を作り提示し続ける覚悟を持つということ。
そんなこと、神でもなければ正気を保って続けられるはずがない。
それだけの簡単な真実にたどり着く、ずっと手前で……俺は世界の美しさの何もかもを知ったような気になって、芸術なんて名付けたガラクタで世界を汚し続けていた。
罪には、罰を。
世界が今、俺に裁定を下す。
『審査の結果、受賞者なしとの結果に――』
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本作品は22万文字で完結します。