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第98話 御伽の世界8

思考操作を受けた魔王は、徐々に精神を蝕まれていた……

ある日、御伽の世界の国々にクイーン グリムヒルデから手紙が届いた。


”武闘会の御案内”


観る側ではなく参加する側としてだ。


しかも、受け取ったのは、王族や貴族ばかり。

そんなもの誰が参加するものか……そう思われたが、意外にも多くの参加申込みがあった様だ。


何故なら、優勝者に与えられるのは、御伽の国の王女カーラ。

娘を賞品にするとは、何とも素晴らしい母親である。


シンデレラ…桃太郎…金太郎…ハンス…ガッジ…グルナ……浦


ん?……俺も!?


いやいや、何かの間違いだろう。

何せ、俺は強力な思考操作の影響で、魔女の情夫となっているのだ。

手に入れたばかりの玩具を壊す様な事はしない筈だ。


「お前が優勝しても、直ぐには婚約にはならんぞ?安心するがいい。

魔王の力がどれ程のものか見てみたいだけじゃ」

「……い…つ…婚約す…る?結婚…は…?」

「ふふっ。お前の心の傷を癒してからじゃ。

じっくりと癒してくれようぞ//」

「……………」


なるほど……散々楽しんで、飽きたら娘にくれてやる訳だ。

リサイクルするとは、魔女は意外と倹約家なのかも知れない。しかし、そっち系のお古に需要は無いと思うのは俺だけだろうか?

まぁ、優勝したらの話ではあるが。


狂ってやがる。


……すぐ横に、問題発言をした魔女が居る。

今すぐにでも爆発したいが、まだ今は我慢の時だ。耐えるとしよう。


魔女の机の上に、参加者の一覧があったのだが、知っている名前も在れば、知らない名前もある。

しかし、その中で気になったのは、唯一の女性参加者のシンデレラだ。

優勝賞品は第1王女カーラなので、シンデレラはバイ・セクシャルなのか……若しくは、女性ではなく、実は中性的美少年なのか……良からぬ想像は膨らむばかりだ。

良からぬ想像をしていると、魔女が話し掛けてきた。


(お楽しみ)までは時間がある……城を案内してやろう」


そう言うと、魔女は俺の手を優しく引き、城内を案内してくれたのだ。

途中、豪華な料理を振る舞い、中庭でお茶をさせ……

この魔女は、何と良い人なのだろうか……

そして、夜になり、魔女の部屋に連れていかれる頃には、俺に掛けられた思考操作は、心をボロボロに蝕んでいた。



…………………………………………



その頃、穴に落ちてしまった妻達は。


遡る事、1日前。

大穴に落ちた妻達とカーラは、謎の兎に遭遇し、穴が塞がっていると知らされる。

深い穴に落ちた筈なのに、とても明るい空間だったそうだ。


出口を探そうと、辺りを見渡すと壁に小さな扉が有るのに気が付いた。


「あの扉の鍵は机の上にあるよ!」


そう言うと、兎は懐中時計を見ながら忙しそうに扉から出ていったそうな。


「開けっ放しで行ってくらたら良かったのにな」


ごもっともである。

兎の言う通り、鍵は机の上あったそうだが、扉は小さく、どう考えても通れるものではない。

困っていると、机の足元に小箱が置いてあるのに気が付いた。

開けると、中には”小さくなる薬”と書かれたメモと、謎の液体が入った瓶が入っていた。


4人は、意を決して謎の液体を飲んでみた。

すると、体はみるみる小さくなり、扉を楽に通れる程になったのだ。


「「すごーい//」」


だが、肝心の鍵を机の上に置いたままだった事に気付き、また困ってしまう。


「もう、壊しちゃう?旦那様待ってるし!」

「アリス!頼むぞ!!」


アリスは竜王。

小さくなっても竜王は竜王なのだ。

扉を木っ端微塵に破壊し、部屋を出た。


そこは、青い空と緑が生い茂る不思議な世界だった。

小さくなっているので、森にしか見えないが、実際には草むらだっただろう。

暫く、道なき道を進んでいると、服を着た兎が走っているのが見えた。


「兎だ!あいつ捕まえて出口まで案内してもらおう!!」


ディーテが走り出し、それに釣られる様に3人も走り出した。

しかし、兎はとても速く、あっという間に居なくなってしまった。


「君達、もう兎は行っちゃったよ。どうせ暇なんだろ?それなら僕の詩を聞いていっておくれ」


現れたのは、巨大なイモムシ。

イモムシと会話している事に感動した妻達だったが、急いでいた事を思い出した。


「私達は暇じゃないぞ?結構急いでるんだ。大きくなる方法も見付けないといけないし!じゃ!」


断られたイモムシは、たいそう怒ったそうだ。


「なんて無礼な奴等だ!もう許さん!!」


そう言うと、イモムシの体は更に大きく膨れていったのだ。

そして、元々大きかったイモムシは、最初の状態の2倍程まで膨れ上がり、遂に背中の皮が破けた。


「あいつ背中が破けたぞ!どうなっちゃうんだ!!?」

「大丈夫!私がみんなを守るっ!!」


皆を庇い、イモムシの前に立ちはだかるアリス。


竜王VSイモムシ(特大)


しかし、奇跡のカードが実現する事は無かった。

イモムシの背中からは、黒とエメラルドの様な青が美しい蝶々が出てきたのだ。


「ありがとうございます。おかげで蝶になる事が出来ました。

お礼に、体の大きさを変える方法を教えましょう」

「「……………」」

(勝手に蝶々になった……よね?)


イモムシの話では、草むらを抜けると湿地帯があり、そこに生えているキノコのどちらかを食べると体は小さくなり、その反対側を食べると体は大きくなるそうだ。

4人は再び歩き出し、湿地帯を目指した。


何とか草むらを出た4人は、湿地帯でキノコを探していた。

キノコは直ぐに見つかったものの、問題は、その見た目であった。

とても毒々しいキノコに怖気る4人。


「……料理しましょう!」


リリアは、キノコの端と端を切り取り、空間収納から取り出した調理器具で料理し始めた。

辺りには美味しそうな香りが漂い、居合わせた者の空腹感を刺激する。


(リリア、常に道具持ってるのか……女子力すごいな……)

(毒キノコって知ってても、食べたくなっちゃう……やば……)


今まさに、キノコを頬ばろうとしていた時、物陰から巨大な猫が襲い掛かってきた。

現在、4人のサイズはネズミ以下。

猫から見れば、餌以外の何者でもない。


大きな風きり音を立てて迫り来る猫パンチに対し、人差し指を、その肉球に押し当て制するアリス。

次の瞬間、呆気に取られる猫の鼻は爆ぜた。


強烈な鼻ピン


殆ど無限の握力と腕力は、小さくなり弱体化しても、天文学的数値だ。

その天文学的な力で放つ鼻ピンの威力に、猫は10m以上吹き飛んだという。

そして、猫の意識が戻った時、目の前には元のサイズに戻った4名が見下ろしていたのだ。


「お供させて下さいニャー!私を連れて行くと良い事がありますニャー!!」


このままでは殺される!そう思った猫は、子分にしてくれと頼み込んだ。

4名は、二本足で立ち、言葉を喋る猫を気に入り、子分にしたそうだ。

子分の証として、猫に魔王の為に買ったブーツと使わなくなったペティーナイフ、そして、少しオシャレな帽子を装備させた。

その姿は、まさに長靴をはいた猫だったという。


森でテントを張り、一夜を明かした4人は道なき道を進んでいた。


漸く、道を見付けた4名は、猫を先頭に更に進む。

何とも言えない後ろ姿……フワフワと揺らめく尻尾……猫の後ろを歩きながら、4人の胸はキュンキュンしていた。


暫く進むと、小さな家の前で兎が立っていた。

懐中時計を見ながらオドオドしている。


「丁度いいところに来たな!家の中に手袋を忘れてしまったんだ!取ってきてくれ!あー忙しい!」

「ん?誰の家なんだ?」

「私の家だ!取ってきてくれ!あー忙しい!」

「自分の家なら、自分で取ってきたらよくないか?」

「いいから!取ってきてくれ!!あー忙しい忙しい!!」

「…………」


自分の家にも関わらず、取りに行かせようとする兎。

すると、アリスは家の前へ行き呟いた。


”神竜の吐息(極弱)……”


弾道ミサイルが降ってきたかの様な爆発。

周囲の木々を薙ぎ倒し、兎の家など跡形もなく吹き飛んでいた。

恐らく、俺が読書している時に発生した地震の原因はコレだろう。


兎の姿は消えていたが、木々が薙ぎ倒され、開けた視界の先に城が見えた。

かなり遠いが、情報が得られるかも知れないと思い、猫と4人は城の方へと歩き出したのだった。


城に着くと、そこには美しい庭があり、体がトランプの庭師が手入れをしていた。


(大きなトランプが働いてるぞ……御伽の世界はすごいな)

(いっぱい居ますね……大丈夫でしょうか?)


トランプが動き回っているのだ。

それは警戒もするだろう。

様子を窺っていた4人に、トランプが話し掛けてきた。


「今日は、来客の予定は聞いていないぞ?君達は誰だ?何の用だ?」

「私達は道に迷って困ってるの。城には用事は無いわ」

「そうなのか。城の中に物知りが居るから聞いてみるといい」


どうやら、城の中へ入っていい様だ。

城の中へ入ると、トランプの兵士が1人。

そして、指示された部屋に行く事になるのだが……その部屋には、またトランプの兵士が1人……

その兵士に尋ねると、また違う部屋へ案内される。

たらい回し状態になり、何時しか出口も分からなくなってしまっていた。


「もーー!何なの!」


アリスは相当頭に来ている様だ。

諦めて出口を探そうとしていた4人は、偶然にも兎が部屋に入って行く所を目撃する。

その部屋に何か有るに違いない!

4人と猫は、その部屋へ入った。


その部屋は、法廷であった。

陪審員席には、兎や大きなネズミ……そして大勢のトランプ。

中央の席には、1人の女性が鎮座していた。


「静粛にっ!!これより裁判を始める!」


何故か、部屋に入ると直ぐに被告人席となっている部屋……そして始まってしまう裁判。


「あんたの名前は、アリスだね?死刑だ」

「!!?」

「兎の家を吹き飛ばしたらしいね?もう死刑は免れないよ?」

「ちょっと待って!確かに、家を吹き飛ばしたのは悪いと思うけど、死刑はやり過ぎだと思うの!!それに名前がアリスだから死刑って、すごくおかしいと思う!!」

「おかしくなんかないよ。あんたは私の許可もなくアリスを名乗ってんだから死刑になるのは当然さ」

「どういう事なの!?」

「私は、不思議の国の女王アリス。私の許可無くアリスを名乗るなんて無礼でしょ?死になさい。

他の3名も死刑だよ?キノコを食べたね?あれは私のキノコなのさ!」


部屋の中に居た大勢のトランプは、死刑コールを叫び始めた。


「静かにしなさいよ!トランプのくせにっ!!」


アリスが叫ぶと、トランプ達は舞い上がり、一斉に襲い掛かってきた。


防御結界を展開するディーテとリリア。

アリスの掌には、魔力の結晶が握られている。


「もう怒ったから!!」


握り潰された結晶は、蒼い炎を撒き散らし、一瞬にして部屋を10万度の高温で包み込んだ。

しかし、終わりでは無かった。

全てを燃やし尽くす炎は更に温度を上げ、アリスを中心に大爆発を起こしたのだ。


遂に、魔女にベッドへと連れて行かれた魔王。

貞操を守ろうとするも、強力な思考操作に苦しむ。

その頃、妻達は、不思議の国の女王アリス諸共、城を破壊し難を逃れたと思ったが……

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