第94話 御伽の世界4
海岸で出会った少女は、離婚しろと言ってみたり、妻達のオッパイを触ったりとやりたい放題……
果して、クイーン グリムヒルデの放った刺客から逃げ延びられるのか……
海岸に戻った俺達は、出禁どころか、歓迎された事を自慢すべく浦島太郎を探した。
しかし、浦島太郎はおろか子供達の姿もなかったのだ。
つまらん……。
どうやら、浦島太郎は天才的なタイミングの持ち主らしい。
浦島太郎の事は忘れるとして、そろそろ異世界の街へ行ってみたいところだ。
道を教えてもらおうと、現地の人を探していると、1人の少女が近付いて来た。
「あんた達!此処に居たら殺されちゃうわよ!!私が逃がしてあげるから一緒に来なさい!」
「…………。はぁ?」
「な、何よ!?私が嘘言ってるとでもいいたいの!?」
「いや……そういう訳ではないんだが……」
まぁ、嘘を言っているようには見えなかったので、少女に付いて行ってみる事に。
「アイツらが居なくなるまで、ここに隠れるわよ」
海岸近くの林の中で、そっと息を潜める俺達。
絶対に此処も捜索されるぞと思ったが、隠れるなど久しぶりだった俺は少し楽しんでいた。
暫くすると、少女の言う通り、海岸に重そうなフルプレートアーマーを装備した騎士団が現れたのだ。
騎士団は、暫く海岸で待機していたが引き上げてしまった。
「行ったみたいね……」
「行ったみたいだな。……てかお前誰?」
「!!?……私を知らないの!?」
少女は、クイーン グリムヒルデの娘。
城を抜け出す為に、みすぼらしい格好をしているが第一王女でカーラという名らしい。
「ママに狙われてるのは、あんた達3人よ。
銀髪の貴方は関係無いわ」
「関係無くはないぞ?俺達は夫婦で旅行を楽しんでいる最中だ。妻を守るのは俺の役目の1つだからな」
「騎士団は強いの!このまま一緒に居たら、貴方まで殺されるわよ?3人と離婚しなさい!」
この子は何を言っているんだ……
離婚しろだの、赤の他人に指図される謂れは無いだろう。
妻達は激怒するかと思われたが、意外にもニコニコしながら話を聞いている。
「何よ!何ニコニコしてんのよ!ちょっと美人で、ちょっといいオッパイ搭載してるからって調子に乗らないでよね!!…………ちょっと触ってみてもいい?」
「どうぞ//」
ペタペタ……
リリアのオッパイを触るカーラ……
触った直後、彼女の顔はこれ以上ない程に曇った。
(…くっ……めっちゃ柔らかい……ふわふわしてる……)
「ふんっ!!私だって、もう少し大人になったら絶品になるんだら!!調子にのらないでよね!!」
(この子は、一体何の話をしているんだ……)
「あの子達と同い年ぐらいかしら?反抗期?かわいい//」
「もーーーっ!!」
「まぁ落ち着け。カーラと言ったな?何故、妻達は狙われてるんだ?それに、何故俺達の存在を知っている?」
「魔法の鏡がママに貴方達の事を告げたのよ。ママは自分より美しい女を許さない。騎士達に指示しているのを、私は偶然聞いちゃったの!」
「カーラ、お前は意外と良い奴なんだな」
「もーーーっ!!からかわないでよね!!」
どうやら、クイーン グリムヒルデという魔女は、白雪姫の母らしい。
俺の知っている物語は
ある国の美しい后は、雪の様に色白で、血の様に頬が赤く、黒檀の様に黒い髪の子供が欲しいと望んだ。
そして、願いが叶い、とても美しい女の子を授かった。
しかし、美しい后は出産後に亡くなってしまう。
翌年、王は新しい后を迎える。
新しい后は、魔法の鏡を持ち、この世で一番美しいのは誰だと、魔法の鏡に問い掛け、自分の名前を聞くと満足感を得る精神異常者。
ある日、鏡は后よりも白雪姫の方がもっと美しいと告げる。
それを聞いて発狂した后は、白雪姫を殺そうとする。
猟師に殺しを依頼するも、猟師は不憫に思い白雪姫を殺さず森に置き去りにする。
森を彷徨う白雪姫は、やがて小人の家に辿り着き、共に生活を始めるのだが、ある日、生きている事を后に知られてしまう。
その後、様々な方法で殺されかけるも、生き延びた白雪姫だったが、遂に后の作った毒入りリンゴを食べ死んでしまう。
悲しみに耽る小人の家に、何処ぞの国の王子が通りかかり、白雪姫の遺体を見てしまう。
何処ぞの国の王子は、小人達から遺体を譲り受け城へ運んで行くのだが、途中で棺桶を持つ家来の1人が躓いてしまい、棺桶が傾いてしまう。
その拍子に、白雪姫の喉に詰まっていたリンゴが取れて、白雪姫は蘇生する。
喜んだ王子は、白雪姫を妻として迎え入れ、その披露宴の席で、后に真っ赤に焼けた鉄の靴を履かせ死ぬまで踊らせた……
という、物語だ。
実の娘ではないにしても、何度も殺しに行く頭のおかしい義母。
死体を持って帰る変態な王子。
義母が悶え苦しむ様子を見ても、止める事無く眺める残酷白雪姫。
何ともサイコパスな物語だ。
しかし、カーラ曰く、クイーン グリムヒルデは実の母と言っているし、殺されそうなのは妻達……
やはり、俺の知っている物語とは色々と違う様だ。
ディーテとアリスのオッパイも触り、絶望するカーラ……
色白、赤頬っぺ、黒髪ではあるので……彼女が白雪姫なのだろうか。
どうせなら、小人も出て来てもらいたいものだ。
アホな事をしている間に、林の周囲に何者かの気配……
先程の騎士団だろうか?完全に包囲され、上空以外に逃げ場は無い。
一気に距離を詰められ、囲まれてしまった。
重いフルプレートアーマーを装備しているが、なかなかに優秀である。
「女達には国家反逆罪の容疑がかかっている。城まで来てもらおう」
「おい、俺達はただ旅行しているだけだ。それに、まだ2日目だぞ?間違いなく冤罪だろうが!」
「あんた達!この人達は何も悪い事してないわ!!下がりなさい!!!」
王女だと気付いた騎士達は、一瞬ザワついたものの、引く気配は無い。
「申し訳ございませんが、我々は女王の命令で動いております。この女達は城へ連行させていただきます」
さっきから、俺の事は眼中に無いと言わんばかりの騎士団。
カーラの言う通り、目的は妻達だけだった訳だが、この虫唾が走る状況に……
俺の堪忍袋の緒は切れてしまった。
久しぶりにキレてしまった魔王。
しかし、相手が何者か知らない騎士達は、更にキレさせてしまう。