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第93話 御伽の世界3

クイーン グリムヒルデは、配下の騎士達を集めていた。


「この女達を拘束し連れてまいれ。抵抗した場合は、その場で始末せよ。竜宮城へ向かうのだ」


今回のターゲットは、魔法の鏡が映し出した3人の美女。

国に忠誠を誓う騎士達だが、女王の目の敵にされるのは美女ばかり……

流石に心が痛む。

銀髪の男も映り込んでいたが、そちらはどうでもいい様だ。


「女王様。我々は竜宮城へ入る事が出来ません」

「バカ者どもめっ!海岸で待機しておればよいのだ!!

さっさと行けっ!!」


嫌気がさすも命令は絶対であり、背けば自分の首が飛ぶのだ。

騎士団は、装備を整え竜宮城への玄関口である海岸へと向かったのだった。


……………………………………


乙姫に案内され、俺達は竜宮城を楽しんでいた。

水に濡れても型崩れしない服を扱う店。宝石の様な貝殻や鱗を販売している店など、目新しいものばかり。

そして、俺は妙な違和感を感じていた。

竜宮城に着いてからというもの、異様な万国感を感じていたのだ。


「気がつきました?この敷地内には、四季を楽しめる部屋が存在してますの」


城を中心に、四方に神々しい建物が有るのだが、その一つ一つは空間魔法で内部を拡張し、環境制御魔法で季節を再現していて、北の建物に入れば冬を、南の建物入れば常夏を……といった具合いに、一年中様々な季節が楽しめるのだ。

海水を遮断する障壁もそうだが、環境制御魔法も興味深い。


「旦那様……お土産買おうよ//」


忘れていたが、現地の通貨は俺しか持っていなかった……

アンラ・マンユから貰ったのは、女性の顔が刻印された金貨10枚と同じ柄の銀貨50枚に銅貨200枚だ。

この女性がクイーン グリムヒルデだろうか……

それはいいとして、価値が分からなかったので乙姫に聞くと


「そうですわね……庶民が若干高めの宿に泊まるとして、1泊食事2食付きの料金が1人銅貨2枚程でしょうか。

大衆食堂の様な店で食事すると、銅貨1枚出せば大概の店では、お釣りが出ますわ。

銀貨は、銅貨20枚分です」


いまいちピンと来ない。

高めの宿というのを、1人2万円程だとすると、銅貨1枚が1万円程の価値となり……

そう考えると、大衆食堂で1人1万円分食べるなど普通は有り得ない訳で、お釣りが出るのは納得だが……アンラ・マンユからは、銅貨より細かい通貨は貰ってない。


「銅貨より細かい通貨は各国で違うのです。でも安心して下さい。価値は同じなので何処の国でも使えますから」


竜宮城が発行している通貨は貝貨らしい。

他にも石貨や羽貨等がある様だ。

偽造されないか気になったが、不可能だそうだ。


試しに露店で焼貝を4つ買ってみたが、銅貨1枚出すと大きな貝貨が9枚と小さな貝貨が2枚返ってきた。

大きな貝貨が1000円、小さな貝貨を100円だとすると、銅貨1枚はやはり1万円程の価値がある事になる。

どうやら、今回の旅行では金貨を使う事はなさそうだ。


「焼貝美味しい//」

「フフフッ。今日の夕食は城で御用意致しますわ。新鮮な魚介類を使った料理を楽しんで下さいね」

「「「わーい!//」」」


お土産を買い、妻達の服やアクセサリーを買ったりとショッピングを楽しんでいると、すっかり夜になってしまった。

乙姫の待つ城に行くと、豪華な装飾が施された部屋に案内され、贅を凝らした夕食をいただく事になった。


食事をしながら、この世界について色々教えてもらっていた俺達は、浦島太郎について聞いてみたのだが……


「浦島太郎はアカン!あんな堂々とセクハラしおったんはアイツぐらいやで!!

早う斃れ!と思って呪いの玉手箱を持たしたったんやけどな、なかなか死なへんねん!」

(何で関西弁やねん……)


給仕人曰く、乙姫は酒が入ると方言が出るらしい。

まぁ、地上世界の商務長官ファムも関西弁チックなので、妻達は何を言っているか理解している様だったが。

その後も乙姫は浦島太郎について熱く語り続け、その中で幾つか分かった事があった。


浦島太郎は、玉手箱を開けなければ20代後半だという事。

そして、出禁の証である玉手箱を用意するのは意外と大変だという事だ。


「特定の人間の時間だけを操作するのはシンドいねん……でも浦島太郎は、人の気も知らんと何度も竜宮城へ来ようとすんねんで!?どう思う?」

(いや、知らんがな……)

「ホンマにストレスで肌荒れヤバいわ」

(剥きたてタマゴ肌にしか見えんのだが……)


「でも乙姫様?お肌すごくキレイですね」

「そう?//実は……こっそりケアしとんねん♡お肌の曲がり角を間違えたらアカンやろ?//」

「私も思ったぞ。何使ってるんだ?」

「この秘薬や!♡秘密の鍵っていう知る人ぞ知る人気商品や!!♡」


乙姫が持ってきたのは、小さな玉手箱。

その中には、薄いピンク色の瓶が数本入っていてキットの様になっている。

この化粧品は一般には販売してないらしく、乙姫が気に入った客人のみに販売しているらしい。


「売るのはえぇけど……高いで?」

「なんぼするん?」

(何故アリスが関西弁になるんだ……)


「1ヶ月分で銀貨10枚や//」


銀貨1枚が銅貨20枚分の価値と言っていた様な……

銅貨1枚は1万円相当……つまり竜宮の秘薬(化粧品)は200万円程という事だ。

マジかよ……


「旦那様……?あの玉手箱欲しい……」

「つるつるになった頬っぺをだんな様に触ってもらいたい……」

「グルナ、私達はもっと可愛くなるぞ?」

「…………」


「自分ら夫婦なんやろ?このべっぴんな嫁はんが更にべっぴんさんになるんやで?たまらんやろ?どや?」


俺を見つめる妻達と乙姫。

3人分×1ヶ月分=600万円相当の買い物だ。

一瞬気が引けたが、普段おねだりしない妻達が瞳をウルウルさせながら此方を見ている。


・買う

・話題を変える«


「……買おう」

「旦那はん太っ腹やな!よっしゃ!明日の出発までには用意しといたるで!♡」

「…………」

「ん?旦那さんどないしたん?大人しくなってしもて……」

「……12セット用意してくれ」

「え?旦那はん本気で言っとんの?」

「次は何時来れるか分からないんだ」


俺は、使う事は無いと思っていた金貨6枚を乙姫に手渡した。

金貨1枚は銀貨20枚分の価値だ。


「……金貨やて!?あんたら一体何者なんや!?」

「ただの商人だよ」

「なんや商人か!//どっかの王族かと思ったわ!!」

(なかなか鋭いな……)


初回限定〇〇%offとかは無いのか?と思ったのはここだけの話だ。



翌朝。


「近くまでいらしたら、是非お立ち寄りくださいね//」

「あぁ、今度は子供達も連れて来るよ」

「お待ちしてますわ//ブツをたんまり準備して//」

「…………」


亀に送ってもらい、浦島太郎と出会った海岸に戻って来た。しかし、そこには浦島太郎と子供達の姿は無く、1人の少女が待っていたのだった。

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