表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
86/132

第85話 従者を見つけ契約せよ! 後編

森の国。


ラクレスは困っていた。

従者とは何ぞや……給仕人?執事?とは違うのだろうか?

旅のお供と身の回りの世話をしてくれる人だろうか?


「ラクレス?どうした?」

「母さん、従者って何?どんな人?」

「常に近くに居て、色々してくれる人だ。ただし、ある程度の戦闘力は必要だろうな」

「…………?」


戦闘にも参加出来て、身の回りの事も出来る人……。


森の国には、猛者と呼ばれる者達は大勢居るが、神様だったり軍の幹部だったりと、声を掛けにくのだ。

しかも、身の回りの事も頼める人となると、正直誰も居ない気がするのだ。

(はぁ…どうしよう……それって従者じゃなくて……)


母の助言を得たラクレスは、人生で一番困っていた。



…………………………………………



ラクレスが途方に暮れていた頃。


オリオンも森の国へ来ていた。

向かったのは、少し沖合いにある無人島。

ネモフィラ連邦国の軍事訓練施設がある島である。


島では、海岸線防衛を想定した合同軍事演習が行われているのだ。

攻撃側はプティア王国海軍、島で迎え撃つのは、上杉率いるネモフィラ連邦国地上軍である。

その様子を見守るのは、ネモフィラ連邦国の守護神セレネ。


セレネは、最近元気なのだ。

試練が始まる前は、週に1度はオリオンにイチャモンを付けられ襲撃されていたから、たまったものではない。

(後、数ヶ月……長ければ数年は襲撃されないで済むわ//)


その時、セレネは覚えのある魔力反応を探知する……

そう、オリオンである。


”神竜の鉄槌”


風と雷の魔法を竜のブレスに載せて放つ強烈な一撃。それは、セレネの最強防御結界”破邪の盾アイギス”を大きく揺らした。


「オリオン様、試練の最中なのでは?」

「よぉ、セレネ。今は単独クエスト中で自由が利くんだ。試練の最中でも、自己鍛錬は怠る訳にはいかねぇだろ?」


セレネは、得体の知れない頭痛に眉を顰めた。

一体、私が何をしたというのか……何故、こうも頻繁に襲われなくてはならないのか……

何が気に食わないのだ……

思い当たる節があるとすれば、オリオンが10歳の頃……


”セレネ!お前の結界は最強らしいな!勝負しろ!!”

”オリオン様相手に、結界なんて必要有りませんわ”


素手でボコボコにしてやったのだ。


”結界も武器も必要無い”


余程悔しかったのだろうか

その後、毎週金の日になるとオリオンは現れ、勝負を挑んで来る様になり、ある時は、オリオンが疲れ果てて動かなくなるまで結界の中で読書を楽しみ、ある時はメイスでボコボコにシバいて追い払い……

初回に、結界を使っていれば諦めてくれたのだろうか……


”いや、諦めていた筈がない”


考えるだけ無駄と判断したセレネは、1つ提案する。


「オリオン様、今日の勝負で私が勝利したら、1つ言う事を聞いてもらいますからね」

「あ?どんなお願いなんだ?」

「今後、私に勝負を挑まない。です」

「……分かったよ」


言質をとったセレネは、最高密度の”破邪の盾(アイギス)”を展開する。

成人となり、試練の途中とはいえ、魔力の質・量共に飛躍的に成長しているオリオン。

脅威と言っても過言ではない存在なのだ。


一方、相対するオリオンはメイスを持ってはいるものの、特に気負っている様子はない。

何時もなら、周囲の空気が歪む程の魔力を放っているのに……

(少しは成長したみたいですわね……)


「セレネ。俺が結界を破ったら、お前も1つ言う事聞けよ?」

「分かりましたわ。”破邪の盾(アイギス)”を破る事が出来たなら、ご命令に従いますわ!!」


最強防御結界を纏うセレネに、オリオンは近付いて行く。

その様子は、まるでピクニックを楽しむかの如く軽快な足取り。

セレネを中心に、半径10mに展開している”破邪の盾”

それに、オリオンの身体が触れた瞬間、異変が起こった。


オリオンは、結界を通過した……いや、結界がオリオンを避けたのだ。

”破邪の盾”は、主に仇なす全てを遮断する。

病原菌、熱、魔法、物理攻撃、全てである。

これを破ったのは、オリオンの父、”破邪の盾”を上回る上位の能力”雷霆”を操る魔王グルナのみ。

しかし、オリオンの竜眼は、抜け穴を見付けていたのだ。

”破邪の盾は敵意や脅威にのみ反応する”


即ち、心底無害なら結界は無いも同じと言う事だ。

遂に、オリオンはセレネの目の前まで来てしまう。


「そんな何故っ!?」

「結界を破ったぜ?言う事聞けよ」

「くっ……」

「俺の従者になれ」

「くっ……嫌です!いっその事殺しなさいっ!!」

「言う事聞くって約束だろ?まぁいいよ。従者は嫌か?じゃあ、俺の妻になれ」

「……えっ?」

「俺が命にかえても守ってやる。だから一緒に居る時は、そのウゼぇ結界は使うな」

「…………」


頭の中が真っ白になっているセレネを抱き寄せ、オリオンは唇をそっと奪った。


……………………………………………



その頃。

困り果てていたラクレスの元を、カラとジーノが訪れていた。


「ラクレス様!私達が従者になりますよ!」

「私達、バリ頑張るけぇね!!」

「えっ!?でも、カラは軍の最高司令官だし……ジーノはマカリオス王国の駐ネモフィラ大使でしょ?ダメじゃない?」

「「いいの!!」」

「……………」


その日の夜。


俺は、森の国に呼び出されたのだが、城の一室に集まっていた面子を見て察しは着いた。


魔力と威圧全開である。


「で?何の話なんだ?」

「「…………………」」


部屋には、少し困った顔のディーテ。

俺の目を真っ直ぐに見つめるオリオン。そして、その横で真っ赤になり俯いているセレネ。

困っている様にも見えるラクレス。その横には、カラとジーノ。

カラとジーノは、何故かドヤ顔である。


「父さん、俺はセレネを従者とする。王位に就いた暁には、セレネを王妃として迎えるつもりだ」


何と……何と男らしい……。

即答でOKしてしまいそうになったが、セレネは森の国の守護神だ。

女王の意見を聞かない訳にはいかない。


「オリオン。母さんは全然いいぞ!セレネを幸せにしてやるんだ!!」

「母さん!ありがとう!!」

「……オリオン?アリスは知ってるのか?」

「うん、頑張ってみるって昨日言っといた!」

「…………」


どうやら、問題無いらしい。

気にした俺が馬鹿みたいだ。

問題は、ラクレスである。どう見ても、カラとジーノが強引に名乗りを挙げた感じだ。


「正直、誰を誘おうか困ってたんだ。2人が従者になりたいって言ってくれたから、お願いしようと思うよ」

「……そうなの?カラは自分の立場分かってる?」

「軍の最高司令官です!!」

「ジーノは自分の立場分かってる?」

「うちは、駐ネモフィラ大使じゃけ大丈夫!!」

「…………」


コイツら馬鹿じゃねぇのか……

全然分かってない。


「馬鹿野郎共がぁぁぁぁ!!後釜どうすんだよッ!!」


クレ○ンしんちゃんのアレで、2人まとめて悶絶させ、説教の始まりである。

淡々と説教をしていると、部屋にアルトミアが入って来た。


無表情。透き通るような白い肌と薄く紫に光る瞳……その儚くも美しい美貌に恐怖を感じずにはいられない。


「ジーノよ」

(アルトミア!ガツンと言ってやってくれ!)

「お前の後任は、ほぼ決まったぞ。存分に尽くしてやるがいい(昼も夜も//)!!」

「アルトミア様!うちバリ頑張るっ!!」

「…………」


「カラ。暫くの間、上杉に代理やってもらうから楽しんで来い。お前は国外にあまり行けなかったもんな。地上軍の指揮は、副官のマリにお願いしといた!」

「ディーテ様!ありがとうございます!//」

「…………」


何故、俺はこの場に呼ばれたのか?

何かと疑問は尽きないが、その中の1つにラクレスの人選がある。

実は、ラクレスはエキドナと仲良しだったのだ。

エキドナは、国の幹部で発言力もある。

声を掛けにくいのは分かるが、この2人よりは動きやすい筈なのだ。

この2人が言い寄って来た時点で、エキドナに助けを求めるのも有りだったと思うのだ。


「ラクレス、エキドナには声掛けたのか?」

「父さん、エキドナは出不精でしょ?何か申し訳なくて」


まぁ、確かに……

エキドナは、自室で優雅に寛いでいる事が圧倒的に多いが。

結局、既に話は纏まっていて、報告を受けただけの様な感じになったが良いだろう。

今は、魔界で過ごす期間なので戻ろうとしていると、部屋にエキドナがやって来たのだ。


「私、ラクレスに着いて行っちゃおうかな♪//」

「ディーテ、幹部がぞろぞろ居なくなって大丈夫なのか?」

「大丈夫だろ。人材の育成は課題の1つだからな。それなりに進めてあるし、良い機会だと思うぞ?」

「……うーん」

「それに、この国が侵略されそうになったらグルナ軍が協力してくれるだろ?」


我が魔王軍は頼まれなくても参戦するが……

まぁ、地上世界は戦争が起こる気配は皆無だ。

それ程に、魔王達の統治は上手く行っている。


「エキドナ、領地の方は大丈夫なのか?」

「大丈夫だよ♪私の分身に任せてあるから♪」


後に発覚したのだが、エキドナの分身とは自身の魔力で生み出した精霊だったのである。

見た目は、幼いエキドナ。

本体と同じ記憶と能力を持っているだけでなく、意識を共有しているらしい。

自分が2人居る状態とは非常に興味深いが、頭が痛くなりそうなので、あまり考えない方がいいだろう。


クロエはムックを従者兼ペットにし、男の子達は将来の妻を従者に選んだ。

ラクレスに3人が付いて行くなんて、イレギュラー以外の何ものでもないが、流石は我が子という事だろう。

選ぶ基準は男女の考え方の違いだろうが、俺としてはクロエが未来の旦那を連れて来なくてホッとしている。

そして一番の発見は、不老だとこの様な事が起こるという事だ。

ここ数年、地上世界の王妃の座を賭けた争いが起こらなかったのも納得である。


第9の試練、全員クリア。

次なる試練は魔王パーシスにキノコを献上すればクリア。

一見簡単そうなクエストに、張り切ってキノコを探していた子供達だったが、予想外の強敵と遭遇する事となる……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ