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第76話 天空神の神殿を掃除せよ!

仲間を逃がす為のスキル”漢気”に苦戦するも、何とかクリアしたオリオン。

アルトミアの城で皆と合流し、ゼウスの神殿へ向かうと……

オリオンの戦いは酷かった……

しかし、殺せば不合格の状況で決めきれなかった訳だ。

あのまま長引かせれば、消耗しオリオンは負けていただろう。

負けとは”死”と同義。ならば何としても生き延びないといけないが、その”生き延びる”為の行いは、時として、反吐が出る程カッコ悪いのだ。


第3の試練は、天空神ゼウスの神殿を掃除する。

神殿へは、マカリオス王国にある月への神殿から転移しなくてはならないので、アルトミアの城で集合する事になったようだ。

第2の試練を突破したオリオンの到着が夕方という事もあり、その日は城で1泊させてもらう事になった。


「お前達、見事に曲者共を打ち負かしたそうではないか!流石じゃ!!

今夜は、クロエに夕食の支度をする事を許す!!妾は肉がいい!!//」

「アルトミア様!お任せ下さい!!」


何故?

そう思いながらも、支度を始めるクロエ。

自分以外は全員負傷しているので、肉料理は丁度いい。

肉食なアルトミアの為に、大量にストックされている肉の中から選んだのはモモ肉。

霜降り肉は柔らかく美味しいが、少量で満腹になってしまう。

赤身ならいくらでも食べられるし、良質なタンパク質が摂れる。


モモ肉を程よい厚さに切ってもらっている間に、サラダやスープ、特製ダレを作る。

少しだけフルーツを擦りおろし、隠し味にしたピリッと甘辛いタレを、肉に揉み込んでいく。

それを、鎧の置物が持っていた槍に刺し、クルクル回しながら焼いていくのだ。

そう、ケバブである。


「何じゃ!?この肉の塊は!!赤身ではないか!!丸焼きでは硬くて食べられんぞ!!」

「アルトミア様、切り分けますよー」


切った所からホロホロと崩れるお肉。

赤身だが、絶妙な厚さに切ってあるのと、フルーツの酵素でタンパク質が分解され、普段より柔らかく仕上がっている。


「アルトミア様、どうぞ♡」

「ふむ、なんとも食欲を誘う香りじゃ」


パンにサンドしたケバブを頬張るアルトミア。

(……!!?)


「アルトミア様?美味しくなかったですか?」

「クロエよ、褒美を取らすぞ」

(流石はリリアの娘じゃ!何としても養女にしなくては!!)


お気に召した様だ。

お肉をお腹いっぱい食べて、クロエ以外は早めに就寝し、翌日に備えた。


翌朝、ボロボロになって帰って来たクロエが少しだけ気になった3人だったが、聞かない方がいい事が世の中には有るだろう。と頷き合い、月の神殿へと向かった。

子供達は、神殿に行くに当たってグルナから助言を得ていた。


世界の意思(超絶美人さん)に好感を持ってもらえれば、一生安泰。

しかし、嫌われてしまえば……

くれぐれも、接し方には注意する様に!”

であった。


神界に到着すると、世界の意思(超絶美人さん)が出迎えてくれた。


「皆様、ようこそお越しくださいました」

「「お久しぶりです!」」

「早速なのですが、此方をご覧下さい……」


ゼウスの神殿へ案内された子供達は、目を疑った。

東京ドームで表すと、凡そ5個分の部屋には、空の酒瓶が溢れていた。

高さは7~8mだろうか……

無造作に積み上げられ、最早何処から手を付けたらいいか検討も付かない。


「マジかよ……」

「……これを1週間以内に処理して頂きたいのです」


とても申し訳なさそうな世界の意思さん

食事や睡眠は、世界の意思(超絶美人さん)の神殿でお世話になる事になり、そちらも案内してもらう事に。


「此処が私の神殿です。自由に使って下さいね」


塵など皆無、ホコリ1つ無い室内。

整然と並べられた、宝石の様な食器や酒瓶……

センスの光る調度品の数々。

女性らしさを感じさせる温かみのある内装。

素晴らしい……。

ゼウスの神殿を見た後なら尚更感動するだろう。

しかし、子供達は特に驚いた様子は無かった。


「素晴らしいですね。室内の清潔さも、整然と並べられた食器類の高級感も」

「此処は、私と天使達数名で維持してます。天使達も評価していただけて喜ぶと思います」


「……はぁ。

真っ先に、この神殿に迷い込めば良かったな……」

「……何故です?」

「最初に、世界の意思さんに出迎えられてしまったので、室内の美しさは勿論、此処の全てが霞んでしまったのです……」

「お世辞でも嬉しいですわ//」

(な……なんて良い子達なのですかっ!!//)


その日から、世界の加護”極”が子供達に追加付与されたのであった。


部屋の取り合いが終わり、子供達はゼウスの神殿で作戦会議を始めた。

1週間後に大切な客人が訪れるらしく、その歓迎の宴を、この荒れ果てた大広間で行いたいらしい。

先ずは、大量の酒瓶を外に出そうということになり、作業が始まった。


「みんな重力操作出来る?」

「「出来るよ!!」」


自分が飛行する時にしか使った事のない魔法なので、少し戸惑う子供達。

しかし、すぐにコツを掴み空き瓶を神殿の裏に運び出す。

ここでネックになったのは、空き瓶の多さだ。あまりの多さに魔力が尽きてしまい、搬出を終えるのに2日も掛かってしまった。


「ものすごい量でしたね」

「おじいちゃんは一日中飲んでるから!フフフ」


「お前達!すまねぇな!」


ゼウスである。

厳密に言えば子供達は孫ではないのだが、可愛くて仕方ないゼウス。

最早、その存在は孫同然なのだ。

嫌な顔1つせず、張り切って掃除する孫達に差し入れを持って来た様だ。


「じぃちゃんありがとう!!」

「何これー!3色のお団子!?かわいいー!!」

「あっちじゃ、まだ流通してないんだったな。そのうち魔王が商品化するだろうよ」


作業開始から5日目。

4人は、天井から床までピカピカに磨き上げた。

そして学んだのだ。

一人暮らしを始めたら、ゴミ出しだけは怠ってはいけないと。


「まぁ!まるで新築当時に戻った様ですわね!」

「みんな、ありがとな。おじいちゃんは感動の涙が止まらねぇよ」


号泣するゼウスは、深呼吸すると何かを出して来た。

キラキラ光る大き目のレンガの様な物体……


「おじいちゃん、これは何?」

「報酬だ。これを粉にして、武具とか小物を作る時に混ぜると色々な効果を発揮するぞ」

「色々?」

「風邪を引きにくくなったり、傷の治りが早くなったり、運が良くなったり色々だ。極小量でも効果が有るから、装備を新調する時に少しづつ使ったらいい」

「「おじいちゃんありがとう♪」」


ゼウスから感謝の言葉をもらい、第3の試練は終了なのだが、子供達には気掛かりな事があった。

神殿の裏に運び出した空瓶である。


「あー、あれはそのままでいいぞ。後でやっとくから。ゴハン食べて行くだろ?」

「「……………」」


子供達は分かっていた。

絶対に放置したままになる事を。


食事が終わると、子供達は神殿の裏手に集まり会議を始めた。

ゼウスが放置したままにするのは明らかなので、瓶の始末をもって試練終了としたのだ。


「魔界では、リサイクルしてるって聞いたわ」

「地上世界も同じです。粉々にして溶かして?瓶を作り直してます」

「じゃあ、フルフルに教えてもらおうぜ!」


急遽呼び出された獣型悪魔フルフル。

人生初の神界に、彼はビビっていた。かつて邪神達が怒って降臨した際、魔王が捕虜として神界に送った悪の化身アジ・ダハーカ。

魔界での戦いが終わり、神界から帰って来た凶悪なドラゴンは、一瞬引いてしまう程のボロ雑巾になっていたので無理もない。


「おっ!悪魔フルフルじゃねぇか!」

「!!?天空神様はじめましてー!!」

(何で名前知ってるの!?こわいー!!)

「うん、瓶の処理を教えてもらおうと思って呼んだんだ」

「ガハハハッ!ムックみたいな姿だな!孫達を頼むぞ!」

「は…はいー!!」


翌朝。


早速、作業に取り掛かる。

瓶は、全て透明度の高い濃い青色なので色分けする手間は無い。

ディオニスが土魔法で炉と型を作り、空焚きを行う。

その後、オリオンが瓶を粉々に粉砕し、カレットにする。

それを、ラクレスが融点まで加熱し、謎のレンガを少量づつ配合していく。

型に流し込み、加熱して大まかに成型した物をクロエとフルフルが仕上げていくのだ。


出来上がった硝子細工は、月の神殿で神界にしか無い謎の物質を混ぜて作っているので三日月形にした。

透き通った濃い青色の中に、謎の物質がキラキラと輝き、蛍石の様でとても綺麗だ。

粉砕や溶解する作業が終わると、全員で仕上げの作業を行う。

仕上げの作業は、繊細な魔力の操作が求められ、集中力を維持しなくてはならない。

子供達は魔力の枯渇と回復を繰り返しながら黙々と作業行なっていったのだ。


そして3日後の夜。


「終わったー!!何個出来たんだろうな」

「うーん……10億や20億じゃないわね、もっとある」

「土台を作ってアクセサリーにしてみましょー!」


フルフルは、持っていたアダマス鋼を加工し台座となるブレスレットを作った。

そこに、三日月形に加工した硝子細工をはめ込む。


「綺麗……♡」

「神様達にプレゼントしましょー」


宴が終わり、二次会を始めていた神々の元に子供達がやって来た。


「おじいちゃん!帰る前にプレゼントを渡したいの!!//」

「プレゼント?」

「うん、酒瓶で作ったんだ!」


簡単な小箱に入れられたブレスレットが神々と天使達に配られた。

中身を見た世界の意思(超絶美人さん)や女神達は号泣したのだ。


「愚か者の神殿を掃除してくれたばかりか……こんな素晴らしい贈り物まで……」


神々は、ブレスレットに不変の術式を付与し、一生の宝物とするのであった。

子供達は、作った硝子細工を地上世界と魔界に運び、各国の職人に加工を依頼した。

アクセサリーに加工してもらい、国民に無料で配布する為だ。

費用は、邪龍ファフニールの財宝で賄ったのである。




第3の試練をクリアし、次なる試練に挑む子供達。

地上世界の南の島国プティア王国。

畑を荒らす鳥を見た子供達は絶句し、アリスはグルナに牙を剥く

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