表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
74/132

第74話 単独クエスト ディオニスVS魔王軍デアシア

魔界の景色を楽しみながら、魔王城へ向かうディオニス。

観光気分になっていたが、そこは既にデアシアの領域であった……

「ラクレス様とクロエ様が勝利したよー!ディオニス様も頑張ってねー!」


何か連絡があると現れるムック。

今回は、2人の勝利報告であった。

ディオニスは、あまり魔界に来た事がない。

邪龍ファフニールの財宝を回収する為に、魔王城から遠く離れた洞窟まで行ったが、転移魔法でひとっ飛びだ。

本当は、魔界の景色や謎の生命体などゆっくり見てみたかったディオニスは、徒歩で魔王城へと向かっていた。

歩き始めて2日、遠くにサタナス国の明かりが見えて来た。


「魔界の星空は素晴らしいですが、それが霞む程に”夜の都”サタナス国の夜景はキレイですね」


魔界の月は大きい。

月明かりだけで、何の支障もなく行動出来る魔界の闇。

全てが新鮮で、これから魔王軍の精鋭と戦う事を忘れそうになっていた。


城に向かって歩き始めたディオニスの身体は、突如、宙を舞った。


何が起こったのか分からないディオニスであったが、肩に走る激痛と夥しい出血で、その場に留まってはいけないという事だけは分かった。

(すごいですね。全く気配を感じませんでしたよ)


岩場の影に身を潜め、目を閉じ魔力探知を行うディオニス。

その研ぎ澄まされた感覚は、遠くに微かな魔力を探知した。

(デアシア様……お会いした事は無いですが、魔力を昆虫並に抑えるなんて異常ですよ)


その時、眉間に何かが押し当てられ、女性の声が聞こえた。


「ディオニス様、お会いできて光栄です。

私は、サタナス国軍特殊部隊所属 デアシアと申します。

私の任務は、ディオニス様と戦う事……」


ディオニスの額を冷たい汗が伝った。


「それだけです。殺すなとは命令されておりません」


躊躇無く引き金を引いたデアシア。

発射された魔力弾は、ディオニスの耳を掠め背後の岩に着弾した。

ディオニスは丁寧な自己紹介の最中、死を直感していた。

銃口と眉間の間に魔力障壁を展開し、撃たれるかどうかなど分からなかったが、身体は無意識に驚く程俊敏に動いていた。


「先程探知した魔力の反応は、まだ遠くにありますね……どういう訳か、目の前に居る貴女から魔力を感じません」

「遠くの魔力は”撒き餌”。

私の各種潜状技術は最高峰、ディオニス様に探知は不可能です」

(困りましたね……目視で捉えるしかないとか反則ですよ)


「ディオニス様は防具は装備していますが、武器が見当たりません。

敬愛する我が主……魔王グルナ様と同じファイトスタイルなのですか?」

「いえ、僕の武器はコレです」


”緋き煉獄の鎌”


ディオニスは、オルフェと同じく専用武器を顕現させる。

覚醒し、神の血(イコル)を操れると言う事だ。


鋭い眼光で見つめていたデアシア。その目元が、少し緩んだ様に見えた。


「先程は遠距離から狙撃しましたが、私も近距離の戦闘が得意です」

(……近くても遠くて厄介なんですね)


「デアシア様、どんな状況になったら敗北を認めてくれますか?」

「生殺与奪。私の存在を、ディオニス様の思うままにする事が出来たなら敗北を認める所存です」


(デアシア様の武器は、魔力弾を撃ち出す筒の様な便利な武器。

近距離と言っていましたが、間合いは2~30mでしょうか?。

白兵戦の誘いには乗ってくれそうにもありませんし……魔法で間合いを潰すしかなさそうですね)


「始めましょう、デアシア様」

「ディオニス様。一兵士に過ぎない私に対して敬称は不要です」

「分かりました、デアシアさん」


”闇岩障壁”


デアシアの周囲を包み込む様に、厚さ1m程の壁が形成され、完全に覆い隠してしまった。

(閉じ込められたか……普通に破壊して外に出れば餌食……)

完全な暗闇の中、デアシアは背後に魔力を探知する。

本来、防御の為の魔法であり、閉じ込められたとばかり思っていたデアシアだが、ディオニスは同じ空間に居たのだ。

背後から迫る鋭い斬撃を躱し、貫通力を高めた魔力弾を容赦無く撃ち込む。


「ぐっ……」


脇腹を撃ち抜かれたディオニスは、追撃することも出来ずに、地に膝をついた。

裂傷とは違う痛み……しかし。

(我慢できない程ではないのに、身体が動きませんね……)


「ディオニス様。申し訳ありませんが、先程の魔力弾は麻痺の呪術が組み込まれております」

「…………」

「私は、自分だけが閉じ込められたと思いました。しかし、ディオニス様が御自分の間合いで戦う為に、敢えて閉鎖された空間を作った事に、正直驚いています。貴方はとても勇敢な方です」


デアシアは、ディオニスの武器が単なる戦鎌ではない事を知っていた。

邪神との戦いで、魔王オルフェの攻撃を見ていたのだ。

”空間を切り裂く能力”

刃の部分で薙ぎ払う様に切り裂くのではない。

恐らく防御無視の必殺の斬撃……迎撃できるのは、同等以上の武器か能力のみだろう。

しかも、極めれば数百mの範囲攻撃となるだろうと。

もし、閉じ込められた刹那、その斬撃を放たれていたら……


「これは実戦ではありません……でも、だからと言って負ける訳にはいかないんです」

「私の目には、ディオニス様は敗者にしか見えません。何度も言いますが、殺すなと命令されていませんので」


眉間に押し当てられた銃口から放たれた魔力弾は、ディオニスの頭部を撃ち抜いた。

(……殺せとも命令せれていませんでしたが)


壁を破壊しようとしているデアシア。背後に異様な気配を感じ振り返ると、そこには額から血を流すディオニスが立っていたのだ。

咄嗟に銃を構えようとしたデアシアの手首に閃光が走った。

(な!?健を絶たれた)


「デアシアさん。僕はヘルモス王国の王子であり、冥界の王子でもあるんですよ?」

「…………?」

「死の国の王子が殺されたぐらいで死ぬ訳ないと思いませんか?」

「くっ!!」


デアシアはダブルガンナー。

どちらの腕でも精密射撃や速射が可能なのだ。

しかし、それも阻止されてしまう。同じく健を絶たれたのだ。

特殊な能力で両手の健を絶たれ、回復には時間が掛かる。

最早銃を持つ事など出来よう筈もないデアシア。残された選択肢は回復まで時間を稼ぐのみ。

だが、その様な時間を与える筈もなく、ディオニスは更に追い詰める。


ドッ……


「キャッ!」

(アキレスを絶たれた……)


本気になったディオニスの斬撃、それはとても速く。しかも、正面だけではなく背後からも襲い来る。

起き上がる事さえ出来ないデアシアに、ゆっくりと詰め寄るディオニスは


”死神”


の様に見えた。


「デアシアさん?殺すも治療するも、僕の自由ですね」

「殺さないのですか?」

「僕は、女性を痛めつける趣味はありません

これで終わりですよ」

(”キャッ”って言いましたもんね……ギャップ萌えしましたよ//)

「……くっ……私の負けです」


デアシアは、動揺していた。

敗北した事もそうだが、女性として扱われた事に。

そして、ディオニスは回復魔法が究極に下手クソだった事に。


「難しいですね、城の医務室へ行きましょう!」

「…………」


ディオニス、課題2クリア。


3名が勝利し、残るはオリオンのみ。

相手はネモフィラ連邦国軍特殊作戦軍アレス。雑魚ではないが大して強くもないと思っていたオリオンだったが、その認識を改めさせられる事に……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ