表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
73/132

第73話 単独クエスト クロエVS魔王アルトミア

クロエが城の前に行くと、家臣達が出迎えてくれた。


「クロエ様、ようこそお越し下さいました。邪悪な……ゴホンッ!女王がお待ちです。どうぞ此方へ」

「…………」

(この人達、今、邪悪なナントカって言いかけてたわ……)


王の間に通されたクロエの目に、玉座に腰掛ける美しい女性が映った。

狂気の女王 魔王アルトミアである。


「クロエよ、待っておったぞ」


王の間に充満する圧倒的な魔力。

その魔力に解放された魔王アルトミアの覇気が上乗せされ、クロエを襲っていた。


「アルトミア様、2人きりでお会いするのは初めてですわね」

(なんなの!?この魔力は……押し潰されそう)


「そう、初めてじゃ。妾はな、クロエと2人きりになれる日を夢見ておったのじゃ!//」


”えっ?なんで?……やだ怖い!”


「よいか?お前の母リリアは妾のものじゃ」

「……?」

「リリアが妾のものと言う事は、クロエ!お前も妾のものと言う事じゃ!!//」

「……!?」

(すごく嬉しそう……怖い……)


「魔界では箱入り娘だったのだろう?」

「……そうかも知れません」

「安心するがいい。今日から妾の城で箱入り娘じゃ!!故に試練などという馬鹿げたイベントも終了じゃ!!//」

「……!!?」

(いやぁぁぁぁぁ!!)


クロエは、ディーテやリリアから聞いていた話を思い出した。

アルトミアは極上のドSであり、自分達は”餌”なのだと。

決して1人で城に行ってはいけない。そう言い聞かせられていたのだ。

クロエは、その話を聞いた時、正直意味が分からなかった。

だが、今なら分かる。

まるでデーブルいっぱいのスイーツを前にする乙女の様な……いや、違う。意中の男性に、目が飛び出る程高価な宝石をプレゼントされた女性の様な……いや、違う。

そう、私は”餌”だ……。


武装している私を見ても尚、無邪気で心の底から溢れ出す様な輝く笑顔のアルトミア。その笑顔は、自分が”スイーツ”でもなく”高価なジュエリー”でもなく”極上の餌”なのだと強烈に自覚させ、心を蝕む。


「親は美しいのに子は”芋”だったというのは、よくある話だが……お前は大丈夫じゃ!誇るがいい!!//」

(この人、サラッと結構失礼な事言ってない?)


「……まぁ馬鹿な話はこのぐらいにして。クロエよ。何故、その様な物々しい形なのじゃ?」

「これは……」

「まさか、妾に戦いを挑むつもりではないだろうな?妾は最強魔王ぞ?」


上昇する魔力に正比例する様に強まる威圧感。

クロエは分かっていた。

まず勝ち目が無い事を。


「アルトミア様、私は戦いに来たのです」

「ほぅ……」


部屋の張り詰めた空気は消え失せ、アルトミアの表情は曇った。


「クロエよ、妾は恐れておるのじゃ。

お前を傷つけてしまう事を……何より、お前に恐れられ、距離を感じてしまう事を」

「アルトミア様……」

「だが、馬鹿な義弟との約束とはいえ反故にする訳にはいかぬ。

お前の覚悟に対して、応えてやるのも礼儀というもの……。

来るがいいっ!!」


何故か、アルトミアは涙していた。

どうやらアルトミアは本気で嫌われたくないらしい。

それをネタに陽動する事も出来ただろうが、クロエは正面から本気でブチ当たる覚悟を決めたのだった。


「アルトミア様、少しだけ準備の時間をください」

「よかろう!しかし、城から出る事は許さん!!」


クロエが部屋を出た後、アルトミアは考えていた。

クロエを手中に納めれば、ディーテ、リリア、アザゼル、クロエと週に4日は楽しめると。

夢心地で、その4日間の妄想に耽っている時、脳内にカオスが発生する。

発生した一点のカオスは、嫉妬や嫉みをばら撒き一気に膨張を始め、ある結論を導き出し安定する事となる。

それは……


”グルナを殺す!!”


であった。


自分が週に4日間しか楽しめない時間を、グルナは独り占めしている!!

(妾が成り代わってくれるわっ!!)

更に思考は加速し、何としてもクロエを手に入れる=嫌われない様に接する。に至った。


クロエが部屋を出てから、1時間半が過ぎようとしていた。


「アルトミア様、大変お待たせしました。

私のような仔猫ちゃんでは、アルトミア様に戦闘で勝つ事は出来ません。

ならば、私の土俵で勝負させて頂きたく……」

「ほぅ……クロエの土俵とな」

(そう、お前は妾の仔猫ちゃんじゃ//)


「はい……私の土俵とは料理でございます!!

私は料理でアルトミア様から敗北宣言を頂戴致しますわ!!」

「なるほど、妾が胃袋をガッチリ掴まれてしまった時、それが即ち敗北という事……だな?」

「仰る通りでございます」


王の間にテーブルと椅子が運び込まれ、クロエの作った最高の料理が配膳される。

それは、バターチキンカレーであった。


「クロエ、この料理は?」

「この料理は、アルトミア様の想いに応えるために、私の愛情の全てを注ぎ込んで作り上げた”対アルトミア・バターチキンカレー”という料理ですわっ!!」

「愛情100%じゃと!!?」


小刻みに震える手でバターチキンカレーを口に運ぶアルトミア。


パクっ。


我が国、マカリオス王国の愛する民が作ったバターの濃厚な風味。クロエが研究の末に辿り着いたであろう黄金比率のスパイス……

そして手間を惜しまずキャラメルの如く炒められた玉葱の甘みが口いっぱいに広がり、後を追うように魔界の肥沃な大地が育んだトマトと呼ばれる野菜の爽やかな酸味が鼻を抜けていく……

具材として投入された鶏肉は、紛れもなく国内で妾が贔屓にしている養鶏場の物。

臭みなど微塵も無い”それ”は、可能な限り筋を取り除き、皮面はパリッと仕上げられ食感も抜群……


”美味い……”


マカリオス王国と魔界のコラボではないかっ!!

妾のために、この様な素晴らしい料理を拵えて来るとは……

食材を厳選する目も確か、文句の付けようもない。


完敗じゃ……

冗談でも、不味いなどと言う事は出来ぬ……


「クロエよ。妾の負けじゃ……」

「ありがとうございます!!」

「敗北宣言など、建国から2000年以上経つが初めてじゃぞ……

週に1度、最悪でも2週間に1度は此処に来て、妾の心の傷を癒すのじゃ!!//」


そう、何も戦闘で勝利せよとは記されていない。

クロエは、料理という武器を駆使し勝利を掴んだのだ。


「クロエよ、今日はゆっくりしていくがいい」

「では、お言葉に甘えて」


その日の夜、アルトミアの寝室に無理矢理連れて行かれたクロエは、王妃達同様、アルトミアの抱き枕にされる事となる。

逃げようと藻掻くも、信じられない程の怪力で拘束され脱出は不可能。

あまりの息苦しさに抵抗を続けるが、結局アルトミアが起きるまで逃れる事は出来なかった。

結果、クロエは重度の筋肉痛を引き起こし、ボロボロになった。



ラクレスとクロエの勝利を聞いたディオニスは、自分も続くべく魔王城へと急いだ。

”夜の都”サタナス国の明かりが見えた時、魔王軍デアシアの魔力弾がディオニスを襲う。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ