第66話 新たなる刺客
邪神達との死闘や愛人疑惑等が一段落し、半年が過ぎようよとしていた。
俺は、今週は地上世界で過ごす週なのだ。
朝一番に森の国に到着していた。
「ただいまー」
「グルナ、おかえり//」
(よーし、ディーテは今日も機嫌がいい!)
一家水入らずで朝食を食べながら、色々な話を聞く大事な時間だ。
ラクレスはゴハンに夢中。もりもり食べている。
「今日の夕方、カラがゴハンに行きたいらしいぞ。行ってやってくれ」
「え?俺はディーテと過ごしたいんだが」
「嬉しいな……//でも、たまには部下の我儘聞いてやらないと拗ねるぞ?」
「分かったよ。何時からだ?」
「17時に広場に集合だ」
既に許可していたのだろうか……
俺には、気掛かりな点があるのだ。
魔界を出る時、いつもは目をうるうるさせながら見送る王妃達が、何時に無く、非常に、にこやかだった。
何か企んでる可能性は高いだろう。
一体どんな茶番が待っているのだろうか。
…………………………………
16時40分
「じゃあ、行ってくる」
「楽しんでこい!」
グルナは出て行った……
今日は、魔界の王妃達と会う約束をしてるのだ。
魔界に着くと、子供達をアザゼルに預け、邪神の世界へ向かう。
そこで待つのは、勿論アンラ・マンユだ。
「アンラ・マンユ!元気か!」
「妃達よ、久しいな。まぁ座るがいい」
最初は腹立つ奴だと思っていたが、実は意外とフレンドリーだ。
私達が、アンラ・マンユの元を訪ねたのは、ある依頼をする為なのだ。
それは、悪い虫除けの製造依頼である。
「ふむ……しかし俺は、恋だの愛だのに関しては門外漢ぞ」
「何か便利な魔法とか、攻撃的な精霊とか無いのか?」
「使えそうな精霊は居なくはないが……役に立つか分からんぞ」
「とりあえず、その精霊くれ」
「ふむ、では誰か1人に授けるとしよう」
「リリア、まだ専属の精霊居ないな。リリアに憑けてくれ」
「魔王は知っているのか?」
「ん?知ってる訳ないだろ」
(魔王よ、今回は俺は悪くないぞ……マジで)
アンラ・マンユが言うには、その精霊は姿を消す事は出来ないらしい。
そして、契約主以外は会話が出来ないらしい。
だが、とても攻撃的な精霊との事なので楽しみだ。
早速、リリアは精霊を解き放ったのだ。
現れたのは、座敷童子の様な可愛い女の子の精霊。
リリアが指令を出すと、精霊はグルナの元に向かって行ったのであった。
アンラ・マンユが授けた精霊が、闇の精霊シェイドだとはリリアも含めて、誰も知らない。
…………………………………
16時55分
待ち合わせ場所の広場で待っていると、カラがやって来た。
意外な程普通だ。
「グルナ様ーー!!//」
普通なのは服装だけだった様だ。
当たり前の様に抱きついてくる。
今まで散々苦労したが、何とか王妃達との関係も回復したのだ。一からやり直しは御免だし、特にこの手の噂には尾ビレ背ビレが付きやすい……先ずは離れてもらおう。
「カラ、変な噂が王妃達の耳に入ったら(俺が)大変だ」
「その時は、私を第2夫人に……なんて冗談ですよ。ごめんなさい……」
「…………?」
聞き分けがいい……
違和感を感じつつも、カラが予約した店へ向かう。
お洒落なダイニングバー。
セレネとの食事を思い出すが、まぁいいだろう。
俺は、注意深く席に着いた。
「なぁ、もしかして”あの券”使ったのか?」
「使っちゃいました……//
本当は1日デート券が欲しかったんですけどね//」
「また、森の国でオリンピックが開催されたら頑張らないとな」
オリンピックで総合1位になると、開催国から(常識の範囲内で)望む褒美をもらえるのだ。
俺は総合1位になり、防具を希望したが却下された挙句
”褒美は私だ!!”
とディーテに大声で言われ、外堀を埋められた過去がある。
「グルナ様……」
「ん?」
「私、グルナ様が好きです」
「……!?」
直球過ぎるだろっ!!
何て答えたらいいか分かんねぇよ!!
部下としては大好きだ。しかし、地上世界に第2夫人は……絶対に不要だ。
それは、ちゃんと伝えなくてはなるまい。
俺が口を開こうとした時、カラの目線は俺の横に向いていた。
気になり横を見ると、座敷童子が居たのだ。
「かわいいですね♪グルナ様の精霊ですか?」
「いや……俺の精霊じゃないぞ」
「ヒトノオットニ イロメツカッテンジャネェヨ ファッキンビッチ」
ん?何なんだコイツは
「めっちゃ見てきますよ!かわいいですね♪
」
「ミテネェヨ シカイニハインナ メスブタ」
「かわいいー!お名前は?」
「オマエヨリ カワイイナンテアタリマエダロ クソブタ オウ コラ」
カラには聞こえてないのだろうか……
謎が1つ増えたが、解決した謎もある。
この精霊は、黒ムックGPSを上回る監視装置だと。
「何て名前か知らんが、お前は王妃達の指令で動いてるな?」
「ナニイッテンダ?ガッテム ボーイ」
「…………」
何て態度の悪い精霊なんだ!!
野良の精霊か!?
真相を確かめるべく、俺は行動を起こした。
「カラ、今夜お前の部屋に行っていいか?」
「えっ……」
「今夜は、お前と過ごしたい」
「……はい//グルナがお望みなら……//」
遂に、闇の精霊シェイドが動き出す。
黒ムックを越える監視装置。
その実力とは!