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第59話 終末戦争当日 魔王VSノーデンス

神は完璧なのだろうか……


”例えば”


神が不完全だったとしたら。


人間の様に、欲と残虐性に満ち溢れていたとしたら。


克己心に彩られた、その輝かしい存在が。

深い慈悲で包み込む存在が。


実は心の奥深くに、ありとあらゆる感情を押し込めて蓋をしていたとしたら。


全知全能全善。


完全無欠、何より全てに慈悲深いはずの、その心の奥底に、怨み、嫉み、僻み……


そんな言葉では表現出来ない”何か”が有ったとしたら。


怖いよ。

要は、普段怒らない人が突然怒るんだろ?

絶対に近寄りたくない。


「だんな様」


リリアの声で、夢から醒めた。

何時もの様に、優しい声。夢から醒めずにはいられない。


「リリア……おはよう」

「だんな様おはようございます//……キャッ//」

「リリア!捕まえたぞ!」

「……捕まりました//」


愛おしい妻の1人。

俺は、起こしに来たリリアをベッドに引きずり込み、少し横になっていた。

じゃれてしまったが、朝食の準備が出来ているのだ。

食堂に向かうと、アリスが朝食を準備しディーテがコーヒーを淹れてくれる。

果物は、栽培に成功していないレアな果実。

リリアが採ってきたそうだ。

魔界では普段は2人が居るのだが、今日は3人も妻が居る……新鮮だ。

今日まで1度もモメていないが、今後も仲良くやってもらいたいもんだ。


「今日は観に行くぞ!いいな?」

「旦那様!私も観たい!」

「だんな様、私達は見届けなくてはならないと思うの!」

「…………」


俺は肩を落とした。

これがボクシングの試合とかなら、是非観に来てもらいたい……

勝って、ドヤ顔の勝ち名乗りをしたり。

ボッコボコにのされて無様を晒してガッカリさせたり。

どちらにしても、いい思い出で終わるから。

だが、今日これから行われるのは、神様相手に命以上のものを賭けた死闘な訳で……



もっと……



”もっと、強くなりてぇ……”




「分かったよ……でも条件がある!」

「「条件って何!?」」

「黒ムックの本体返して」

((バレてたのか!//))


開始は、正午。

今、朝の8時だ。

王妃達は、俺の義手や防具に時間が許す限り魔力を込め続けた。



…………………………………



平原には巨大な闘技場。

円形の会場は、高い塀に囲まれ場外負けは無さそうだ。


「時間通りだね」

「あぁ、遅刻して因縁付けられたくないからな」


何だかんだで大勢付いて来てしまった。

3人の妻と子供達、魔王夫婦、それに巨神族と竜神族のオッサン……

国にはアザゼルと600万の兵士。

それにセレネとカラ。


「確認だ。反則は無い。

全ての能力を使い、生き残った方が勝者だ。

我々が勝てば、魔界は元に戻るよ?

君達が勝てば、魔界は好きにしていい」



邪神軍

先鋒 ノーデンス

次鋒 ナイアーラトテップ

中堅 ヨグ=ソトース

副将 アジ・ダハーカ

大将 アンラ・マンユ


魔王軍

先鋒 グルナ

次鋒 スキア

中堅 テイト

副将 デアシア

大将 ベレト


死合は直ぐに行われる。


魔王VSノーデンス!!


「「行ってこい!!」」


笑顔で袖から送り出してくれる王妃達。

自分達の命が懸かっているのに、いい根性だ。

その笑顔の裏で流れる涙を隠して余りある、絶対的な信頼。

死ぬ時さえも、一緒に居てやるという深い”愛”。


「進行は、私アポフィスが務めさせて頂きます!両者、会場にお入り下さい!!」


控え室に設置してあるゲートを潜ると、闘技場の真ん中に出た。

対するノーデンスは、白髪の痩せこけた老人だ。


「儂は強いよ?」

「知っている。俺は見た目で判断しない」


始めッ!!


対する魔王と邪神。

闘技場は結界に覆われている。外に被害が出ない様にではない。

明らかに、逃がさない為だ。


ノーデンスの周囲に霧が漂い始める。

次第に広がる霧は、やがて闘技場を覆い尽くした。


「グルナは構えないな……」


霧の密度は更に濃くなり、闘技場内部を目視する事は不可能。

ノーデンスの姿は、その濃霧と一体化し牙を剥くのだ。

霧自体がノーデンスという脅威。

気配を探ろうにも、周囲全てがノーデンスなのだ。魔力探知など意味を成さない。

(若造よ、すぐには殺さんぞ……たっぷり苦しむのだ)


移動するコアを発見し、破壊しない限り勝利は不可能。

濃霧に包まれた半径5km、高さ1kmの闘技場内を縦横無尽に移動するノーデンスのコア。

しかし、グルナは不敵な笑みを浮かべていた。


グルナに纏わり付く霧は超高速で運動し、その身を切り刻む!

(苦しみの中で死ぬがいい!!)


はずだった。


霧が動き出す前にノーデンスの動きは封じられ、グルナの手には、コアが握られていた。

握り締められるコア。

まさに、心臓を握り潰されようとしているノーデンスは、余りの苦しみにのたうち回るしかなかった。


「ジジィの姿に戻んな……」

「貴様!どうやってコアの位置を!?」


闘技場内に広がっていたのは、ノーデンスの霧だけでは無かった。

もう1つは、ノーデンスの霧と対をなす電荷と磁界である。

これは、場のエネルギーの変化を探知する。

探知された、恐らくはコアであろうと思しき物体は、強制的に電気抵抗と磁力線が排除された常温超伝導体と化し、魔王が作り出した磁力線を埋め込まれる。

それにより、魔王は任意の場にノーデンスのコアを固定していたのである。


「貴様!儂を作り変えたと言うのか!?」

「いいからジジィの姿に戻んな……」


霧が晴れ、姿を現すノーデンス。

グルナの手にはノーデンスのコアが握られたままだ。


「儂の負けじゃ……」


敗北を認めるノーデンスの顔面に、神速の掌打が炸裂し、その頭を掴んだまま地面に叩き付けるグルナ。

蜘蛛の巣状に罅割れる床……

受け身を取る事も出来ず、超高速で床に叩き付けられたノーデンスの足の裏は天を向いていた。


「殺る気だ……」


魔王オルフェが呟いた瞬間、グルナの足は膝まで地面にめり込み、白目を剥くノーデンスの顔を、そのコア諸共地面深くに追いやり……その命を絶った。

闘技場には、返り血に染まりながらも眉一つ動かすことなく佇む魔王。

周囲には、雷霆によって焼かれた”何か”の臭いが漂っていた。


()の勝利を心の底から祈っていた王妃達だが……今、彼女達の心の底から湧き上がっていたのも、それは”恐怖”だった。


我が子を、国を、そして自分達を護ろうとする王の正義は、余りにも恐ろし過ぎたのだ。



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