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第54話 国を守る優秀な兵士を見付けよう!

神は完璧なのだろうか……


”例えば”


神が不完全だったとしたら。


人間の様に、欲と残虐性に満ち溢れていたら。


民は傷付き、世界は振り回されるだろう。


だが……


…………。

夢?


思考する夢を最近よく見るのだ。

今日も、そんな夢を見てしまった。

……だが……だが、何なんだよ。

この思考の結末は、まだ見ていない。

見ていないが、俺は神の所業は完璧だと思っている。世界が存在しているのが、その証拠だ。

全てが調和し完全に機能している。

ただ、神は、自分の事に関しては不完全な気がする。


起きた直後は気にしているが、暫くすれば忘れている。

今は、それ所ではないのだ。


森の街は、店舗の建設が終わり徐々に移住が始まっている。

エレニ達も移住し、着々と開店準備を進めているのだ。


ある日、街に森の悪魔達がやって来た。


「我々も面倒見てもらいたいのですが……」


図々しい悪魔だ。

まぁ、バルバトスを始末してしまった事で、ヤツの領地は俺のものとなった。

つまり、ヤツの領地に住んでいた住民もサタナス国の住民となった訳だ。

放っておく訳にもいかない。


「お前達にも受肉用の魔導器(うつわ)をやろう。ただ、他人に迷惑を掛けたら追放するぞ?」

「迷惑?」

「自分がされて嫌な事は、したらダメって事だ」


軍の訓練施設とはいえ、一個師団10,000名が駐留するので、洞窟跡地の警備と街の治安維持にも十分人数を割ける。

森の国で研修を修了した者達が教官となり、ビシバシ訓練を行う。

期間は6ヶ月だ。


その6ヶ月間で様々な訓練を実施するのだが、鍛える事は勿論、真の目的は才能の発掘である。

森の国から派遣してもらっている部隊は、徐々に削減していっている。

なるべく早くに、100%自国の兵士で有事に対応出来る体制を作りたいのだ。

ベレトは俺が直接鍛えているので、かなりいい感じに育っているが、その補佐が居ない状態が続いている。

早い話が、特殊能力を持った突き抜けた存在が居ないのだ。

サタナス国の兵士は、600万名。

その中で評価の高い1万名が、今回森の街へ送り込まれている。

悪魔は元々魔力量が凄いので、後はセンスなのか、使い方なのか……

限られた期間だが、逸材を見付けたいものだ。


……………………………………



その日の夜、アザゼルは森の国へ行ってしまった。

明日は店の定休日、そして明後日はシフトの都合で2連休なのだが、地上世界で商談らしい。


夕食を済ませ、部屋に行くと洗い物を終えたリリアがやって来た。

今日はリリアと過ごす日なので、寝る時も一緒なのである。


今日の流れで説明すると。


朝食をみんなで食べる。

↓↓↓

リリアと日中一緒に過ごす。

↓↓↓

夕食をみんなで食べる。

↓↓↓

リリア、アザゼルと一緒に寝る。

↓↓↓

朝食をみんなで食べる。

↓↓↓

アリスと日中一緒に過ごす。


朝食を境に、アリスとリリアが交代するのだ。

夜、1人で過ごす王妃は自分の部屋で寝てるのだが……何故か、俺は王妃の個室には立ち入ってはいけない事になっていて、部屋でどんな風に過ごしているかは窺い知る事は出来ない。


「だんな様……」

「ん?どうした?」

「今日は初めて2人きりですね……//」


そう。

今日はアザゼルが居ないのだ。

そして刹那の懐妊が発覚し、俺の妻達は、かなり意識している。

地上世界にも魔界にも、俺の逃げ場は無いのだ。

どうすればいいんだ……


「だんな様?寝ないの?」


俺は何をしているんだ?

何故、こんなに考えてしまうのか。

ウサギを前にして、ビビるライオンは居ないだろう。

そう、俺はライオンなのだ。


「リリア……おいで」

「はい……//」


その後は、ご想像通りだ。言わせないで下さい。

そして、明日もアザゼルは居ないのだ。


「旦那様……//今夜は2人きりだね……//」

「…………」


ただ”綿のように疲れ果てた”とだけ言っておこう。


………………………………………



訓練が開始され、2ヶ月が過ぎた。

頭角を現して来た者が居れば報告する様、申し付けてはいるが一向に報告は無い。


教官達を集め、話を聞く。


「報告が無いが、それは報告する内容が無いと言うことか?」

「はい、魔力量が桁違いの者は居るのですが、日々観察を行っている限り、発動する魔法は威力・射程共に平凡であり、単に持久力に優れているとしか言えません。武器の扱いも並です」


ベレトは困り果ててしまっている。

本来は任せるべきなのだろうが、直接見てみる事にしよう。


「その者達を広場に集めろ」


集まったのは、男女合わせて50名程。

皆、確かに魔力量は相当なものだ。

その中の数名は、森の国の幹部達と比べても、そこまで見劣りしないレベルなのだが……


「お前達の得意な武器は何だ?」


集まった中の1人が口を開いた。


「魔王様……自分は、どの武器も得意ではありません……」

「他の者は?」


皆、口々に得意な武器は無いと言うのだ。

扱いに長けた武器も無く、各種魔法も並程度。

唯一、徒手空拳は…ややマシだろうか……


「魔王様……申し訳ございません……」

「謝ることはないぞ!お前達は優秀な戦士なのは間違いない!」


すっかり表情が曇ってしまっているが、必ず膨大な魔力を活かせる方法があるはずだ。

集まった悪魔達の共通点は、膨大な魔力量を持ち、武器の扱いが下手くそで、魔法も平均的だが……


動体視力と静止視力が、突き抜けていた。


目がいいのだ。


剣、槍、弓、槌、暗器……どれもダメ。

そこで、俺は最後の1つを試して見る事にした。


サタナス国の工房で指導している狐の亜人に、純度の低いビトラスで銃を作ってもらった。

サイズはサブマシンガン程で、銃とは言ってもマガジンは無く、弾を撃ち出す機能もトリガーも無い。

銃の様な形をしているだけなのだ。


勿論、コレに文句を付ける者もいる。

ミダスである。

ミダスは、魔導レールガンやガチのサブマシンガンで世界征服しようとした男なのだ。


「おいおい!何なんだ?これは!!」

「銃だ!」

「何を撃ち出すんでちゅか?ん?ん?」

「…………」


しばいてやろうか……

いや、しばくのは悪魔に持たせてからにしよう。

銃の様な物を悪魔達に渡すも、非常に戸惑っている。

どうしたものだろうか……


「ちょっと待っとけ」


そう言うと、ミダスは即席のハンドガンを拵えて来た。


「いいか?これを魔力で再現してみろ」


このハンドガン、仕組みは火薬ではなく、レールガンの様に魔力で弾を加速させて撃ち出すので音は小さい。

しかし、標的の岩は跡形もなく吹き飛ぶ。


「お前がさせたいのはコレだろ?この玩具は、弾丸じゃなくて魔力そのものを撃ち出す筒って事なんだろ?」

「う、うん!それだよ!それ!!」


しかし、悪魔達は戸惑ったまま……


「魔王様、1度取り込んでもみてもいいですか?」

「え?取り込む?」


悪魔の1人が、手に持っていた銃の様な物を取り込み初めた。

黒い靄に包まれ、銃の様な物は手の中へ消えていく。

まるで、受肉する時の様だ。

(なんでも有りかよ……)

次に銃の様な物が現れた時、完全に形が変わっていた。

ハンドガンになっていたのだ。


標的は、周囲10m程の岩。

ハンドガンに変化した”それ”から打ち出された魔力の弾は、容易く岩を吹き飛ばした。


「!!!?」


マジか……そんな顔で呆然と立ち尽くすミダス。

悪魔曰く、かなり加減したらしいので出力を上げてもらう事に。

ちょっと危なそうなので見渡す限りの荒野へ移動し、遠くに小さい的を置いて実験だ。


今度はハンドガンではなく、対物ライフルの様な形状になった”それ”が現れる。


標的までの距離1km。

ミダスの指導が入り、正しい姿勢で狙撃を行った結果、見事命中したのだが……

問題は命中後に起こった。

爆発したのだ。

威力は推定1kt。

万能結果を張っていたから良かったが、俺達が居た距離には、家屋が全壊する程の爆風と、生身の人間ならば全身火傷を負う熱線が届いていた。


「……マジかよ、あれを連射出来るのか?」

「グルナ……コイツらを俺に預けてくれ……」


今思えば、この時がミダス教官が誕生した瞬間だった。

この後、ミダスは悪魔達と宿舎に籠り、森の中へ消えて行くを繰り返した。

そして、1ヶ月後。

我が魔王軍に、近距離銃撃戦もこなす狙撃部隊が誕生した。


それは、正にガンナーの誕生であった。


「グルナ、どうだ?コイツらの射程内に近寄るヤツは即死だぜ」

「…………」


悪魔達はミダスの指導の元、偵察能力・潜伏能力・高い長距離観察監視能力を持つ特殊部隊へと育っている。

とくに優秀な者が2名居るらしいので、その2人には名前を付けた。

デアシアとテイトだ。


デアシアは銀髪のダークエルフの様な女性の悪魔、テイトは赤髪に黒い瞳のシュッとしたイケメンだ。

どちらも寡黙な感じで、プロの雰囲気が漂っている。

今後、彼等はベレトの指揮下で活躍してもらう予定だ。


「ミダス、お前は今日から開発局局長と兼務で狙撃部隊教官な」

「任せろ。俺の元では一流しか育たねぇよ」


こうして、サタナス国の攻撃力、防御力共に一気に跳ね上がったのであった。

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