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第48話 地上世界の王妃の会話

翌日、アリスと日中過ごし夕方には城に戻った。

城に残った方が夕食を用意するルールらしいが、俺は毎日夕食が楽しみだ。


予定では、昨日仕込んだベーコンが使われている料理があるはずなのだが、見当たらない……

2人は、いつも通りニコニコしながら食事を楽しんでいる。

もう少し時間が掛かるのかも知れない。

そう思い、俺も美味しい食事を楽しむ。

食べ終わる頃には、ベーコンが使われていない事など忘れてしまっていた。


「だんな様、今日はオルフェ様からワインが届いてます♪」

「えっ!?そうなのか!」


たまに送られて来るのだ。

魔界で作ったウイスキーを気に入ったオルフェは、それが無くなるとワインを送って来る。

これは、ウイスキーを送れと言う合図だ。


「「……今夜は飲みます?」」


何故か2人の瞳はウルウルしている……

飲めという事だろうか。

(怪しくも、可愛らしいな……)


「う、うん…早速飲んじゃおうかな……」

「「用意して来ますね!」」ササッ!

「…………」


ワインが用意され、おつまみが出て来た。

ベーコンの登場である。

しかし、単体では無い。何かがベーコンに巻かれて焼かれているのだ。

不安そうに見つめる2人……

一体何なのだろうか。


食べてみると、ベーコンで巻かれていたのはカマンベールの様なチーズだった。

しかし、俺は気付いた。

トロ~リとろける一口大の大きさで作られたチーズはアリスのお手製であり、ブランデーに漬け込まれている事に。

そして、そのチーズはベーコンを巻くことを前提に、塩気が抑えられた特製である事。


「…………」


食べると、口いっぱいにブランデーの芳醇な香りが広がり、リリアオリジナルブレンドのスパイスが決め手のベーコンは絶妙な塩加減とスパイシーさを全開にする。

チーズとベーコンで出来た悪魔は、俺の満腹中枢をブチ壊した。


「何なんだコレは!?めちゃくちゃ美味しいよ!!」

「「やったー♪//」」


良妻万歳である。


聞くと、2人は俺が不在の時に作戦会議をしているらしい。

この2人は妻だが、俺は2人の愛情にちゃんと答える事が出来ているのだろうか……

少し心配になったのであった。


……………………………………



森の国。


城には地上世界の妻ディーテと、その姉アルトミアが居た。


「ディーテよ。以前、予定通りと申しておったが魔界の王妃が決まってから実際の所どうなのじゃ?」

「ん?予定通りだぞ?」


狂気の女王と呼ばれる魔王アルトミアだが、妹が寂しい思いをしていないか心配なのだ。

しかし、ディーテは変わった様子は無い。

今日は、アルトミアは森の国に宿泊するのだ。ベッドでゴロゴロしながら話を始める。


「何が予定通りなのか分からんのだが……」

「魔界の王妃が決まってから、グルナはちゃんと帰って来る様になった。その期間、絶対に帰って来るって分かってるから、私は公務を早く切り上げて夕食を作ったり、予定を入れない様にしてグルナの為に時間を取れる。以前も愛されてる感は凄く感じてたけど、最近はもっと大切にしてくれてるって感じるんだ//」

「そうなのか……」

「うん、こっちで過ごす期間は、毎晩ギュッと抱きしめてくれるんだ。朝まで//」

「妾もギュッと抱きしめてやってるではないか!姉の愛も感じるのじゃ!!//」

「キャー!!//」


魔界の王妃を認めるのに抵抗は無かったのかと聞かれると、勿論最初は有った。

でも、グルナが魔界に行った後、殆ど帰って来なくなったのだ。

別に浮気してるとかじゃないのは分かってる。忙しいと分かっているが、とても寂しくて死にそうだった。

ある日、グルナは秘書を連れて森の国へ来た。

凄く美人な悪魔の秘書だ。

しかし、嫌な感じはしなかった。

”私は魔王様の役に立ちたい”という気持ちが伝わって来たのだ……

この子の様に、誠実な者なら……

グルナの立場を理解し、支え、癒しを提供する女性ならば……


「ディーテよ…賭けたのか?」

「どうだろう……少し違うかも……」


グルナは魔界の支配者。

魔界が本拠地なのだ。

森の国と魔界を行き来するなんて、そんな暇無い。

その時、思った。


”魔界の王妃が存在したらどうなるのだろう”


私の存在を知りながらも、王妃の座を欲する女性が居たとしたら。

その女性が、支えとなり癒しとなる存在だったとしたら?

地上世界には帰って来なくなる?


その時は、私は身を引こうと思っていた。

重荷になんてなりたくなかったから……

私は、魔界の王妃を認めると言ってみた。

それから暫くすると、グルナから王妃争いが起きそうだと聞かされた。

時間の問題だと思った私は、直ぐに手を打った。

どうせなら、どうせ身を引くなら…安心して任せられる女性を選んで欲しい。

そうは思うものの、心の何処かで……まだ”愛して欲しい”と思う自分も居た。

だから……


最後に試してみた。


両方を愛せるのかを。

もし、愛せるのならば、私は魔界の王妃も、その子供も愛すると。

名乗りを挙げたのは納得の面子だった。

皆、素晴らしい女性達ばかりだったのだ

そして、グルナは魔界の王妃を2人選んだ。

だが、地上世界の王妃は私のみだった。

結果、グルナは約束を守り、月の半分は何があっても私の元に帰って来る様になり、王妃の中で、私が1番一緒に過ごす時間が長くなった。

恐らくだが、魔界の王妃を2人選んだのもグルナの意思表示なのだと思う。

だから、私は全てを愛すると決意したのだ。


「子供もか……」

「うん、小さいグルナがいっぱい居るんだぞ?可愛くないか?」

「…………」


最後はよく分からなかったが、アルトミアは思った。


コイツすげーな……と。


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