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第4話 手土産

魔界から戻った俺はドワーフの国に来ていた。


「ハハハッ!入浴券か!そりゃいい!」

「…いや、良くないだろ」


爆笑しているのはパーシス。

ドワーフの国の国王にして魔王の1人、俺と同じ日本からの転生者である。

魔界では、報酬として入浴券が与えられる、それは温泉の効果に関係がありそうだ。

信じられないほど一気に魔力が回復するのだ。恐らくだが、精神生命体の悪魔なら死にかけてる者でも復活するだろう。その温泉を利用する権利を国が牛耳っているという事だ。

悪魔達が、その報酬で満足しているなら別に良い様な気もするが、使い切れない程、入浴券を持っている悪魔は当分無職となりロングバケーションだ。これは本人だけの問題では無いのだが、最も問題なのはイノベーションの必要性を感じないという部分ではなかろうか。


「という訳で、魔界用に3貨幣の製造をお願い出来るかの確認に来たんだ。柄はこの世界と共通でいい」

「魔界からの発注を受けるのはいいが、原料の手配と手数料は貰うぞ?」

「あぁ、勿論だ。城が完成したら俺の国に周辺国の王が挨拶に来る予定だ。その時に説明する予定だから、正式な依頼はまだ後だけどな」

「せいぜい頑張れ!ハハハッ」


この世界で流通している貨幣の製造はドワーフの国のみで行われているのだ。


その後、森の国の工房に行き魔導器(うつわ)を大量発注したのであった。



……………………………………



魔界に帰り、配下のみんなと会議だ。


「この国の住民にも魔導器(うつわ)を与えようと思うんだが、どうだ?」

「おー!皆、喜ぶと思いますよ!」

「何人居るんだ?」

「6000万人以上です!」

「………!?…」


俺の支配する国は大国であった。

森の国に発注したが、とても足りない…

技術指導として森の国の亜人達を呼ぼう。自分達で作らせた方が良さそうだ。

そもそも、目の前に居るサタンの元家臣達は日々何をしていたのだろうか…


「サタンが支配してた時は、お前達はどんな仕事してたんだ?」

「雑務です!隣国との連絡がメインでした!戦闘にも参加します」


薄々気が付いていたのだが、コイツら働いていないのだ。

俺は、魔導器(うつわ)に受肉している10名の悪魔達に指令を出す事にした。

”森の国の亜人達と協力し、魔導器(うつわ)を1日に最低2000体用意せよ!”

である。


受肉用なので雑な作りでいいのだ。

森の国から亜人達を呼び寄せ、工房を建てる。

早速作業を開始させたのだ。

ある程度慣れてきたら、亜人達には工房作りに着手してもらう。

この国だけで6000万人以上居るのだ。工房というか、大規模な工場を建設する必要があるだろう。

出来上がった魔導器(うつわ)に受肉した住民達も順次作業に加わってもらい、徐々に生産性を上げていく。


働かざる者食うべからずだ。


……………………………………



悪魔達に仕事を与え、2ヶ月が過ぎたある日、ディーテが魔界に行くと言い出した。


「明日?」

「用意とかあるから、3日後でいいぞ!」

「……用意?」


3日後


森の国に行くと広場に大量の荷物が積まれ、住民達が集まっていた。

その荷物は調理済みのカレーであった。


「ゴハン食べれるヤツらも居るんだろ?

特製カレーだ!みんな喜ぶぞー!//」


カレーなんて作った事有ったっけ?と思ったが、どうやらパーシスが再現してくれた様だ。良い仲間に恵まれているとつくづく思う。

魔界に戻り、早速振る舞ったのだが大好評過ぎた。

即完売してしまったのだ。

カラとアザゼルはチーズをトッピングしてアレンジを楽しんでいた。


「グルナ様、今日いらっしゃった皆さんが住んでいる世界には、他にも様々な”食事”が有るのですか?」

「勿論色々あるぞ!それを魔界のみんなにも楽しんでもらう為に魔導器(うつわ)を用意してるんだ。魔界オリジナルの料理も作りたいしな!

という訳で、今後、色々チャレンジするつもりだから”よろしく頼むぞ!”」

「必ずお役に立ってみせます!!」


悪魔は意外と約束を守る。

”魔王グルナの役に立つ”それは未来永劫破られる事はなかった。


片付けを終えたディーテは、次は魔界の料理を振る舞え!と言い残し帰って行った。嬉しい差し入れで作業のペースが更に上がったのは言うまでもない。

城の外観はほぼ完成し、内装の仕上げに取り掛かっている。

予定よりも、やや早い完成となりそうだ。

完成したら、周辺国の王が挨拶に来る訳だが…俺としては是非、いい関係を築きたいと思っている。

通貨の統一と流通…いきなり暗礁に乗り上げる訳にはいかないのだ。



……………………………………



遂に城が完成した。魔界にも関わらず幻想的な白亜の城なのだ。


いよいよ、隣国の王が挨拶にやって来る。

まぁ、俺の方が立場が上なので強制的に受肉させるつもりだ。

そのまま帰すのも可哀想なので何か食べ物を用意しようとしていたら、カラが名乗りを挙げた。

森の国で料理の修行をしたらしく自信があるそうだ。カラは慣れた手つきで玉葱を刻み始めたのだった。


その頃、城の入口に自称:大悪魔パズズとサキュバスが来ていた。


(おい!何としても取り入るのだぞ!徹底的に奉仕するのだ!)

(わ…わかりました…)


パズズ達が城へ入ろうとした時、城内から叫び声が聞こえたのだ。

只事ではない叫び声の直後、美しい女性が泣きながら飛び出してきた。


「もう…ホントに無理!!」


もしかしたら…もしかしたらだが、今日は生きて帰れないかも知れない…副王は、俺の亡き後しっかりやって行けるだろうか…


その頃、城内では。


「アザゼルは何で玉葱切っても目にシミないんだ?」

「結界張ってますのん♪」


流石だ。


「グルナ様。パズズ国の王、パズズ様がお見えです」

「すぐ行く!」


広間に行くと、胡散臭い顔した悪魔とサキュバスと思しき2人が居たのだが…恐らくパズズだと思われる悪魔の胡散臭さは半端ではなかった。ハッキリ言って無理なタイプだ。


「パズズ様、此方がグルナ陛下にあらせられます」

「お初お目にかかります!私がパズズでございます。何卒、よろしくお願い申し上げますぞ」

「よろしく頼むぞ!」

「グルナ様、本日は手土産を持ってまいりましたぞ!おい!こっちに来い!」


やっぱり無理なタイプだ。

どうやら、サキュバスを俺にくれるらしい。

いらねぇよ!と思ったが、このサキュバス…よく見ると整ったキレイな顔をした悪魔だ…

もらおう。


「お前は中々キレイな顔をしているな!!こっちに来るがいい!!」ガシッ

「キャッ!魔王様…優しくしてください…」


言われなくても優しく接するのだ。少なくともパズズよりはマシだろう。その証拠に可愛いアザゼルが、こんなに懐いているのだ。


「パズズ!有難く頂戴するぞ!!」


(苦労して上等なサキュバスを探した甲斐があったわい。魔王がサキュバスに興味を持ったところで儂は退散じゃ!!傍に居るのは、行方不明になってた大悪魔アザゼルではないか!?こんな所、危なくて居れんわ!)

「ではグルナ様、お楽しみの様なので私はこの辺で失礼しますぞ」


胡散臭い奴が帰ろうとしているが、コイツには受肉してもらわないといけないし通貨の件もあるのだ。ホントはさっさと帰ってもらいたいが、今日だけは帰す訳にはいかない。


「おい、パズズ…誰が帰っていいと言った?少し待っておれ!!」

「ヒッ!も、勿論ですとも!」


パズズを待たせ、俺はサキュバスと別室へ消えて行った。

サキュバスは色気ムンムンなのです(*´∇`)ノ

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