第30話 男は犬と一緒!2
迫り来る 竜王バハムート。
「もー!何でダメなの!?//」
※駄々を捏ねているアリスことバハムートは幻獣界の王である。
「変な事しないからお願いっ!//一生のお願い!//」
※アリスは第三者が居るとクールビューチィだが、2人になると可愛さが爆発する多重人格に近いギャップを秘めているのだ。
「ダメだ。俺達は知り合って間もないだろ?」
(一生のお願いとか久しぶりに聞いたな……)
「……分かった」
拗ねてしまったが、アリスは諦めてくれた様だ。安眠妨害はお断りなのである。
「どうやら勘違いしていた様だ。私は旦那様の事が大好きだけど、旦那様はそうじゃなかったみたい……」
「ん?」
「暫く会うのは止めようと思う。さらばだ」
「え?」
部屋を出ていくアリス。
やがて、城から気配は消えてしまった。追いかけるべきだったのだろうか…
その日、俺は追いかけることはしなかった。そのまま、1人で眠りに着いたのである。
アリスは幻獣界の王。王が嫁ぐなど聞いたこともない。
これで良かったのだ。
それから数日。
アリスは、完全に姿をくらませてしまった。
…………………………………
アリスが居なくなって1ヶ月。俺は気になりつつも街の開発を進めていた。
今日は朝からスナックの面接である。
初めは国営となるが、その内、独立して店を構える美人ママが誕生するだろ。
サタナス国の住人には営業許可を出すが、国外からの参入は認めないつもりだ。
4名募集だが、今日の応募は3名。
時間は19時から深夜2時まで。
アフターは禁止。
時給は銅貨23枚、日本円で2300円程である。バックもあるのでそれなりに稼げるだろう。
ただ、どんな動きになるかは分からない。
曜日によっては暇な日が有ると思うので、早上がりをしてもらう可能性もある。なので最低保証は提示しているのだ。
定員割れなのと、3名とも接客向きな子達だったので全員採用し、後日、店で研修を行う事になった。
問題の服装だが、困った。
客層が謎なのだ。まぁ勝手に店の雰囲気というかイメージを決めてしまってもいいのだが、初出店という事もあり暫くは、上司と食事に行ける様な格好で出勤させる。
立ち飲み屋の方は、店長候補と一般社員を募集しているが定員割れはなさそうだ。
また、軍神アレスに研修をお願いしようと思う。
そんな事をしていた、ある日の午前中。
アルトミアの伝言をムックが伝えて来た。
アルトミアから伝言が届くのは珍しいのだ。有事の時ぐらいではなかろうか…
《おい!グルナ!!お前の嫁が妾の城に住み着いておる!!大至急何とかせよ!繰り返す!大至……》プチッ
「…………」
俺の嫁?ディーテか?
スナックの備品など仕入れもあったので、俺は直ぐにマカリオス王国へ向かった。
勿論、アルトミアの元に居たのはディーテではなくアリスであった。
「ムックに伝えた通りじゃ。お前の嫁が城に住み着いておるのじゃ」
「待て待て、嫁って言うなよ。結婚してないだろ」
「ん?細かい事はどうでもよい!夕方には戻って来る!何とかするのじゃ!」
城にアリスは居なかった。
住み着くなら家賃払えと言われ、今はチーズ工房で働いているらしいのだ。
見に行くと、アリスはチーズをカットしたり包装したりとテキパキ働いていた。
目が合うも、第三者が居るので反応は薄い…
休憩時間になったので、アリスを呼び話をする事に。
「アリス、何してんだよ」
「働いてるの……」
「…………」
見たら分かるわ!!と思ったが、冷静に話をしようと思う。
人様に迷惑を掛けてはいけない。
俺は、アリスに魔界へ戻る様に言うのだが…
「私は戻らない。チーズ作りを覚えたら幻獣界に帰る」
「…………」
(……幻獣界に帰るのにチーズの技術要るか?)
何と素っ気ない……
駄々を捏ねて可愛さ全開だったアリスは鳴りを潜め、クールなチーズ職人と化していた。
「でも……添い寝を許可してくれるなら、今日中に魔界へ帰る」
「グルナよ、添い寝ぐらいよいではないか!結婚前に相性を確かめておくチャンスじゃぞ!つまらん女だったら困るだろ?」
「それは何の相性なんだよ!?もー!!分かったよ!!添い寝するから魔界に帰って来てくれ!!」
俺は思うのだ。
男とは、バカな生き物なのかも知れないと。
逃げれば追い掛けて来る者が、ある日そっぽ向いてしまうと、気になって仕方無い。
そして、何時しか立場が逆転している事に気付きもしないのだ。
アルトミアは、ふと思った。
ん?幻獣界の王 竜王バハムートと添い寝……
「グルナよ!どんなプレイをしたか必ず報告するのじゃ//」
「はぁ!?」
「……プレイだなんて//」
顔が真っ赤になったアリスは、大急ぎで退職届を出し、その日の夕方には魔界に帰って来た。
その日から、俺はアリスとアザゼルにサンドされ眠る事になったのは言うまでもない。
(男は犬と一緒……ディーテ様は、この状況を言っていたのか//)
添い寝をしながらアリスは納得し微笑む。
だが、彼女は素晴らしかった。
今回の様に、他人を巻き込み俺を困らす事は二度としなかったのだ。