第25話 膝枕
泣き疲れたのだろう。アリスは眠ってしまった。
そっと寝かしつけ王の間に向かう。
「グルナ様!!よくぞご無事で!!」
(生きてた…)
(…え…無傷?流石)
若干ザワついているが、止むを得ないだろう。
怒った竜王バハムートと密室で過ごす。
普通に考えれば生きて帰ってくるのは奇跡だ。
「バハムートは怒り疲れて眠ってしまった。本当に悪い事をしてしまったよ」
「グルナ様!…無礼な態度を取ってしまい申し訳ありませんでした…私があの様な態度を取ってしまったばかりに」
やはりセレネは気にしている様だ。
しかし、それは原因の1つにすぎない。セレネだけが悪い訳ではないのだ。
俺も反省すべきなのであって謝りたいと思っている。
「セレネが悪い訳ではないんだ。俺自身の問題なんだと思う。心配掛けてすまなかった、許してくれ」
「グルナ様が謝る事など…」
「みんな、申し訳なかった。こんな事は、これが最後だ」
「まだまだ頼りない我々ですが引き続き仕えさせて下さい。グルナ様を負担を減らす事が出来る様、精一杯努力する所存です」
「みんな、ありがとな…今後もよろしく頼むぞ!」
「グルナ様、ディーテ様がネモフィラ連邦国に来る様にと…」
「お、おう。行ってくるよ」
森の国へ行く前にアザゼルの所にも行かねば。
俺は、カラを連れて魔界コンビニ«アザリコ»に向かった。
カラはアザゼルの店に行くのは初めてだろう。
「いらっしゃいましぇー♪」
相変わらず元気だ。
アザゼルは俺に気付き駆け寄って来る。
「グルナしゃま!おかえりなしゃい//」
「いきなり居なくなってごめんな」
大喜びで飛び付いてくるアザゼル。最早、いきなり居なくなった事など、どうでもいい様だ。
なんと可愛い奴なのだろうか。
「グルナ様!おかえりなさい//」
「…おい!?」
カラがアザゼルに便乗して抱きついて来た…
「何でアザゼルちゃんは良くて私はダメなんですか!怒りますよ!?」
「………」
既に怒ってる気がするが…
完全に忘れていたが、カラも魔界の王妃として名乗りを挙げる気満々だったのだ。
困った…セレネもカラも連邦国軍の幹部なのだ。無理矢理、魔界に居座られても困る。
今の所、魔界の王妃として誰一人認めてはいない訳だが、このままの状況は良くない。
ディーテに相談しよう。
アザゼルは夜勤らしいので、終わってからゴハンを一緒に食べる約束をし、城に戻った。
アリスは俺のベッドで横になったままだったが、起きていた。
良からぬ事を考えていたのだろうか、俺と目が合うなり頬を赤く染めた。
「旦那様…夜には戻る?」
「うん、戻ったらアザゼルとゴハン食べる約束してるんだ」
「そうか…一緒に行きたいけど、私は用事があるから…」
「用事?」
今更だが、アリスは幻獣界の王なのだ。
用事ぐらいあるだろう。
しかし、アリスの顔は残念そうな感じではない…頬が少し赤くなり、デートを翌日に控えた乙女の様な雰囲気だ。
非常に気になる…
俺は若干モヤモヤしたまま森の国へ向かった。
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森の国。
「グルナ、おかえり//」
「ごめんな。ディーテにまで心配掛けてしまって…」
「うん、その事は気にするな!そんな事より、いい部屋を作ったんだ//」
ディーテは王の間で待っていた。
すぐに、新しく作ったという部屋へ案内されたのだが、その部屋には特に物は無く、床には柔らかなカーペットが敷かれていた。
「ん?この部屋は何なんだ?」
「フフッ//この部屋はな、グルナを癒す部屋だ。おいで…」
そう言うと、ディーテはカーペットに座り、俺をそっと横にさせる。
「フフッ//懐かしいだろ?膝枕だ//」ナデナデ
「放浪して、ちゃんとスッキリしたか?」ナデナデ
「放浪もいいけど、嫌な事があったら私の元に帰って来るのだ//」ナデナデ
「な?癒されるだろ?こんな癒し空間があるんだから放浪してる場合じゃないぞ?//」ナデナデ
温かい…
ディーテの膝枕…何年ぶりだろうか。
俺が軍を辞めると言った時以来だ。
みるみる修復される心の傷。その不思議な感覚は、己の心の弱さを自覚させる…
「結婚する前に言っただろ?私は、どんなグルナも受け入れるって…」
「………うん」
「仕上げだ!こっち向け!//」
「えっ?」
仰向けになると、甘く心地良いディーテの髪の匂い。そして、俺の唇に触れるディーテの柔らかな唇。
されるがまま…。
俺の顔に添えられたディーテの優しい掌は、俺の思考を空の彼方へ追いやるのだ。
何時間経っただろうか。膝枕を堪能し復活した俺は、争いに発展しそうな魔界の王妃の座についてディーテに相談したのだが…
「うーん、埒があかんな…女子だけで会議をするとしよう!!男子禁制だぞ!!」
どうやら、女子会を開催する様だ。
何とか問題解決の糸口を見出してもらいたいが、任せっぱなしではいけないのだ。
俺も良い案を考えなくてはならない。
「じゃ日程は後日連絡する。グルナは吉報を待て♪」
「……はい」
俺は魔界に帰り、久しぶりにアザゼルと食事を楽しんだのだが、色々と気になって仕方無い。
何か起こりそうな気がするのだ…
数日後、見事に悪い予感は的中する。
メインの皆さんは基本的に不老です。不老ですが、死なないわけではありません( ˙꒳˙ )