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第128話 即位の儀式 魔界編

儀式当日。


クロエの髪を梳かし、ネイルとメイクをする王妃達。


「ママ?私、今日から魔王なの?」


緊張しているのか、実感が湧かないのか……時期に始まる即位の儀式、その場からクロエは新たな魔王として振る舞うのだが。


「そうよ。私達は、新たな魔王が何を話すのか楽しみにしているわ//」

「そうそう!新しい魔王として、魔界の住人と異世界の住人にガツンと言ってやれ!//」

「クロエが、どんな考えを持っているのかをママは早く聞きたい!//」


とても楽しみな王妃達。

ガツンと言う必要はないと思うが、最初が肝心でもある。

クロエは、新たな魔界の王として一体どんなメッセージを贈るのだろうか。


地上世界と同様、魔界の創造神アンラ・マンユも王冠を用意していた。

黒い謎の希少金属に、紫の宝石が妖しく光る王冠は王権神授の証。

即位の儀式は戴冠式となり、その幕を開けたのだ。


現魔王グルナが入場し、アンラ・マンユと共に祭壇の上で新たな支配者を待つ。

扉が開き、ベレト率いる近衛兵に警護され新たな魔王の入場だ。


美しい刺繍の施された黒のマーメイドドレス姿、大人っぽいアップスタイルが良く似合う。

元気いっぱいな穉いクロエは鳴りを潜め、凛とした表情で祭壇へ向かう様は、新たな支配者そのものだ。


祭壇へ登り、現魔王と創造神アンラ・マンユの前で跪くクロエ。

会場は、無音音に支配され物音一つ許されない。


「創造神アンラ・マンユの名において、魔王グルナの娘”クロエ”を新たな支配者として認めよう。

その証として”王権の象徴(レガリア)”を授与する」


クロエの頭に王冠が被せられる。

それは、魔界に新たな魔王が誕生した瞬間であった。

跪いたままのクロエに、先代魔王からも”王権の象徴”が贈られる。


「クロエ、魔界を頼むぞ」


一言。

ただ一言だけを、新たな支配者に伝えたグルナ。

しかし、その一言に込められた想いをクロエは汲み取る。


「この昂る気持ちを忘れる事無く、新たな支配者として、その責を全うします」


王冠を被り、授けられた王笏を手にしたクロエは立ち上がり、各世界の支配者達に深々と最上級の一礼した。

そして、いよいよ所信表明である。


「まずは、先人達に敬意を表したい。

我が父と母。サタナス国の幹部達や各国の王族達、そして全ての民に。

私が生まれる前、この世界は暗黒が支配する不毛の大地が広がっていたと聞いている。

初代魔王 サタン亡き後、新たな支配者として魔界に降臨した父と共に、不毛の大地を開拓した者達に尊敬の念を禁じえない。

そんな者達の幸せを、先代の魔王グルナと同じく私も願って止まない。

統治者が変わろうが、これまでの営みは変わることは無いのだ。魂を傷付ける事無く生き、魔界の一員として”何らかの徳”を希求してもらいたい。

そして、もう1つ。

魔王とは、絶対的な支配者ではあるが、臆する事無く身近に感じて欲しい。

魔王は、ルールも摂理も運命さえも捩じ伏せ、この目に映る全ての者を救える神なのだから」


城の外では、大歓声が上がっていた。

ムックは各地に散らばり、この様子を大スクリーンでリアルタイムに映し出していたのだ。

その後、話は異世界に向けての内容に移っていく。


「悪魔の世界である魔界、ひいては魔王の存在について……

嘗て、地上世界では魔王の存在は災禍であった。

人々は、魔王とは悪であり決して分かり合える者ではなかったのだ。

初代魔王 サタンの侵攻によって、悪魔の世界である魔界の存在が明るみになり、悪魔の王である魔王に対するイメージは地に堕ちた。

現在、オリオンが統治を代行している御伽の世界。

そこでは、そのイメージがより顕著だ。

確かに、初代魔王 サタンは欲望のままに行動した。

利益や土地、新たな支配圏を獲得すべく侵略をしたのだ。

だが、サタンは討たれ新たな統治者として父が魔界に渡った。

嘗ては脅威だったが、永き時を経て……

今や地上世界と魔界は、安全保障、経済共に良きパートナーとなった。

異世界の人と物が行き来し、互いを高め合っている。

これは、統治者が変わろうが変わることは無い。

御伽の世界とは、まだ交流は無いが地上世界同様に良きパートナーとして、手を取り合っていけると信じている。

新たな魔界の支配者として、このメッセージを各世界に贈ろう」


会場からは拍手が贈られ、訪れた国賓は新たな展開を大いに期待したのだ。


儀式が終わり、一同は祝賀の晩餐に出席する為、自室に着替えに戻る。

開催まで1時間程だ。


元魔王となったグルナも自室に戻り、着替えを済ます。

暫く待っていると、3人の妻達が着替えを済ませ部屋にやって来た。


「大切な話だったな。早速聞かせてくれ」

「旦那様。私達は旦那様に死んでいただきたいと思っている」

「……え?」


真剣な表情の妻達の言葉に、グルナの思考は停止してしまうのであった。

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